育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
第四章 彼の悲しき過去
24.もっと知りたい
この辺境にフィオと共に引っ越してきて、ひと月が経った。
最初はどうなるかと思ったが、フィオを抱っこして街に買い出しに行く日課も、足腰が鍛えられたのか楽になったし、火を起こすのも井戸水を汲むのも、慣れたら自分でできるようになった。
「ううー!」
フィオは寝返りが出来るようになり、ますます可愛いが、目が離せない。
そして、薪割りや狩りなどの力仕事を手伝ってくれて、私やフィオが熱でダウンした時に看病し、スキルや魔力にやけに詳しい、謎の「お隣さん」にも、いつも助けられている。
「おはよう、エレナ」
「おはようございますアーサーさん! いい天気ですね」
「ああ」
フィオをおんぶした状態で洗濯物を干していたら、背中に弓と矢筒を背負ったアーサーさんに挨拶をされた。
「二人とも、体調は大丈夫か」
「おかげさまで、すっかりよくなりました。ね、フィオ」
「ばーぶ」
私の言葉に相槌を打つようにフィオが喋ったので、アーサーさんも優しく微笑む。
「そうか、また魔力が暴走したら俺を呼んでくれ。君も、無理するなよ」
「はい!」
私が返事をすると、軽々とフィオの両脇を持ち抱っこし、その背の高さを生かしてアーサーさんは高い高いをしてくれた。
「キャハハっ!」
フィオも随分アーサーさんには懐いているのか、大きな笑い声をあげている。
(子供好きで優しくて、真面目でクールで、かっこよくて……それに、独身。なんか、ずるいな……)
フィオを抱っこしている彼の銀髪が、朝の風に揺れる姿を、ずっと見ていたい。
「どうした? 今日は無口だが、まだ体調が悪いのか?」
「い、いえ!」
いつもおしゃべりな私が黙っているものだから、アーサーさんは心配したのか、話しかけてきた。
(あなたに見惚れていたなんて、口が裂けても言えないっ!)
私は視線を逸らして、アーサーさんからフィオを受け取る。
「今日は天気がいいから鳥もよく飛ぶと思う。
狩りが上手くいったら、今夜はチキンでも焼こう」
「やったー! スープにも入れましょうね」
「ああ、ではまた」
フィオの髪を撫でながら、後ろ手を振り颯爽と森の中へ去っていくアーサーさんの姿を見つめながら、思う。
(ーーなんだか、本当の家族みたい)
もちろん、私とフィオは血が繋がった親子ではないし、私とアーサーさんは夫婦どころか恋人ですらない。
でも、朝起きて、仕事をしに行く夫を送り出す、妻と幼い子供のようだと一瞬思ってしまったのだ。
そして、私もそれを望んでいる、なんて。
(……アーサーさんのこと、もっと知りたい)
生まれも、育ちも、今までどういう人生を送ってきたのか、なにも知らない。
仕事で子供を育てていたという、優しい彼を、もっと知りたいと心から思ったのだ。
最初はどうなるかと思ったが、フィオを抱っこして街に買い出しに行く日課も、足腰が鍛えられたのか楽になったし、火を起こすのも井戸水を汲むのも、慣れたら自分でできるようになった。
「ううー!」
フィオは寝返りが出来るようになり、ますます可愛いが、目が離せない。
そして、薪割りや狩りなどの力仕事を手伝ってくれて、私やフィオが熱でダウンした時に看病し、スキルや魔力にやけに詳しい、謎の「お隣さん」にも、いつも助けられている。
「おはよう、エレナ」
「おはようございますアーサーさん! いい天気ですね」
「ああ」
フィオをおんぶした状態で洗濯物を干していたら、背中に弓と矢筒を背負ったアーサーさんに挨拶をされた。
「二人とも、体調は大丈夫か」
「おかげさまで、すっかりよくなりました。ね、フィオ」
「ばーぶ」
私の言葉に相槌を打つようにフィオが喋ったので、アーサーさんも優しく微笑む。
「そうか、また魔力が暴走したら俺を呼んでくれ。君も、無理するなよ」
「はい!」
私が返事をすると、軽々とフィオの両脇を持ち抱っこし、その背の高さを生かしてアーサーさんは高い高いをしてくれた。
「キャハハっ!」
フィオも随分アーサーさんには懐いているのか、大きな笑い声をあげている。
(子供好きで優しくて、真面目でクールで、かっこよくて……それに、独身。なんか、ずるいな……)
フィオを抱っこしている彼の銀髪が、朝の風に揺れる姿を、ずっと見ていたい。
「どうした? 今日は無口だが、まだ体調が悪いのか?」
「い、いえ!」
いつもおしゃべりな私が黙っているものだから、アーサーさんは心配したのか、話しかけてきた。
(あなたに見惚れていたなんて、口が裂けても言えないっ!)
私は視線を逸らして、アーサーさんからフィオを受け取る。
「今日は天気がいいから鳥もよく飛ぶと思う。
狩りが上手くいったら、今夜はチキンでも焼こう」
「やったー! スープにも入れましょうね」
「ああ、ではまた」
フィオの髪を撫でながら、後ろ手を振り颯爽と森の中へ去っていくアーサーさんの姿を見つめながら、思う。
(ーーなんだか、本当の家族みたい)
もちろん、私とフィオは血が繋がった親子ではないし、私とアーサーさんは夫婦どころか恋人ですらない。
でも、朝起きて、仕事をしに行く夫を送り出す、妻と幼い子供のようだと一瞬思ってしまったのだ。
そして、私もそれを望んでいる、なんて。
(……アーサーさんのこと、もっと知りたい)
生まれも、育ちも、今までどういう人生を送ってきたのか、なにも知らない。
仕事で子供を育てていたという、優しい彼を、もっと知りたいと心から思ったのだ。