育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
27.拾った日記
お昼寝から起きたフィオをおんぶし、私は諸々の家事をこなしていた。
(この前熱が出た時に飲んだあの薬草、味は不味かったけどすごく効いたな。また体調を崩した時用に予備で少し持っといたほうがいいかも)
アーサーさんが家の裏手の方にたくさん生えていると言っていたので、摘んでみようと外へと出る。
「うーうーん」
目を擦って気持ちよさそうに外気をあびるフィオを背中で感じながら、私はしゃがみ込んで野草を眺めていく。
「あ、あったあった、これね」
香りも形も同じものがあったので、手に持っていたカゴにぽいぽいと入れていく。
しばらくそうやって薬草を採っていたら、陽が傾いてきたので、そろそろ終わりにしようと立ち上がった。
「収穫完了! これで安心ね」
カゴいっぱいの薬草を眺め、大きく頷く。
(アーサーさんはまだ狩りから戻ってないのかしら。夕方になりそうだけれど)
夜遅くは野生の動物が出て危険だから、いつも朝出て昼過ぎには帰るといっていたのに、今日は少し戻りが遅いようだ。
先にスープでも作っておこうと、薬草をたくさん入れたカゴを持って屋敷に戻ろうと歩き出す。
(ん? ここは……?)
アーサーさんの家の前を横切ろうとした時、小さな納屋があることに気がつく。
視線を向けると、納屋の入り口が少し開いていて不用心だ。
風で開いてしまったのかもしれないが、雨が降ったり動物が紛れ込んだら部屋が荒れて大変だろう。
大きなお世話かもしれないが、ドアを閉めてあげようと、私は納屋の方へと一歩歩み寄る。
「あれ、これは……?」
すると、ドアの前に一冊の本が落ちていることに気がついた。
赤い背表紙で、手のひらよりも少し大きいその本は、風に吹かれてパラパラとページがめくれている。
入り口にはテーブルが置いてあり、ドアが開いていたせいで風で本が落ちてしまったのだろう。
せっかくだし、放置するのも気が引けるので拾おうと手に取り、折れたページを直してあげようとすると、
『今日はミルクに浸したパンを食べてくれた』
『王宮は子供を育てるには少々不便だ』
という文が目に飛び込んできた。
「えっ……?」
私は反射的に、拾った本の文章に目を向けてしまう。
「これって、アーサーさんの書いた日記……?」
筆圧が強く整った字は、アーサーさんの書いたものなのだとすぐにわかった。
パラパラとページをめくると、最初は、
『全く、王族のわがままに振り回される身にもなってほしい』
『数時間ごとに起こされて寝不足だ』
と不満がたくさん書かれているが、
『今日、高い高いをしたら初めて笑ってくれた』
『俺の人差し指を握ったまま昼寝してしまった。寝顔を見つめる時間も、悪くない』
と、子供に関して少しずつ心を開いていく様子が書かれている。
(アーサーさんが、頼まれて世話をしていたっていう子供との日記かしら……)
しかし、途中からその文章が変わっていく。
インクで滲んでおり、ところどころ読めなくなっていたが、
『裏切り者がいたとは』
『聖女を逃すために俺ができることは』
『この子だけは必ず守らねば』
という、断片的な単語だけが読めた。
そして、最後のページにたった一文。
『もう、俺に命を守る資格などない』
という殴り書きだけが書かれていて、その日記は終わっていた。
(この前熱が出た時に飲んだあの薬草、味は不味かったけどすごく効いたな。また体調を崩した時用に予備で少し持っといたほうがいいかも)
アーサーさんが家の裏手の方にたくさん生えていると言っていたので、摘んでみようと外へと出る。
「うーうーん」
目を擦って気持ちよさそうに外気をあびるフィオを背中で感じながら、私はしゃがみ込んで野草を眺めていく。
「あ、あったあった、これね」
香りも形も同じものがあったので、手に持っていたカゴにぽいぽいと入れていく。
しばらくそうやって薬草を採っていたら、陽が傾いてきたので、そろそろ終わりにしようと立ち上がった。
「収穫完了! これで安心ね」
カゴいっぱいの薬草を眺め、大きく頷く。
(アーサーさんはまだ狩りから戻ってないのかしら。夕方になりそうだけれど)
夜遅くは野生の動物が出て危険だから、いつも朝出て昼過ぎには帰るといっていたのに、今日は少し戻りが遅いようだ。
先にスープでも作っておこうと、薬草をたくさん入れたカゴを持って屋敷に戻ろうと歩き出す。
(ん? ここは……?)
アーサーさんの家の前を横切ろうとした時、小さな納屋があることに気がつく。
視線を向けると、納屋の入り口が少し開いていて不用心だ。
風で開いてしまったのかもしれないが、雨が降ったり動物が紛れ込んだら部屋が荒れて大変だろう。
大きなお世話かもしれないが、ドアを閉めてあげようと、私は納屋の方へと一歩歩み寄る。
「あれ、これは……?」
すると、ドアの前に一冊の本が落ちていることに気がついた。
赤い背表紙で、手のひらよりも少し大きいその本は、風に吹かれてパラパラとページがめくれている。
入り口にはテーブルが置いてあり、ドアが開いていたせいで風で本が落ちてしまったのだろう。
せっかくだし、放置するのも気が引けるので拾おうと手に取り、折れたページを直してあげようとすると、
『今日はミルクに浸したパンを食べてくれた』
『王宮は子供を育てるには少々不便だ』
という文が目に飛び込んできた。
「えっ……?」
私は反射的に、拾った本の文章に目を向けてしまう。
「これって、アーサーさんの書いた日記……?」
筆圧が強く整った字は、アーサーさんの書いたものなのだとすぐにわかった。
パラパラとページをめくると、最初は、
『全く、王族のわがままに振り回される身にもなってほしい』
『数時間ごとに起こされて寝不足だ』
と不満がたくさん書かれているが、
『今日、高い高いをしたら初めて笑ってくれた』
『俺の人差し指を握ったまま昼寝してしまった。寝顔を見つめる時間も、悪くない』
と、子供に関して少しずつ心を開いていく様子が書かれている。
(アーサーさんが、頼まれて世話をしていたっていう子供との日記かしら……)
しかし、途中からその文章が変わっていく。
インクで滲んでおり、ところどころ読めなくなっていたが、
『裏切り者がいたとは』
『聖女を逃すために俺ができることは』
『この子だけは必ず守らねば』
という、断片的な単語だけが読めた。
そして、最後のページにたった一文。
『もう、俺に命を守る資格などない』
という殴り書きだけが書かれていて、その日記は終わっていた。