育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜

30.聖女様の子

そして夜が明け、部屋の中に朝日が差し込む。

「ふわぁ……おはようございます、レオ」
「あーう」

目をこすりながら、聖女ルイズ様はベッドから起き上がり伸びをしている。

「お乳あげましょうね……って、きゃ!」

二人を起こさないように、ベッドに座ったままの体勢で仮眠をとっていた俺を見て、驚き聖女ルイズ様が叫び声を上げる。

「失礼いたしました。カルヴァン皇帝の勅命で参りました、騎士団長のアーサー・グレイフォードと申します」

俺が規律正しく敬礼をすると、聖女ルイズ様は驚いた顔をすぐに緩めた。

「あら、騎士団長様でしたか。お話はカルヴァン様から聞いております」

驚いた顔をすぐに笑顔に変え、優しく対応してくれる。

「皇帝から、お子様の世話をするように命じられました」

俺がそう言うと、すやすやと眠る子供をベッドから抱き上げ、ルイズ様はその胸に優しく抱えた。

「助かります。懐妊してからつわりが重く、体調不良で半年近くお休みをいただいていたんですが、聖女としてのお勤めをこれ以上休むわけにはいきませんの」

比較的平和な王都とはいえ、怪我人は絶えない。

聖女ルイズ様は、確かに少し前から体調不良で休まれていると耳に入ってきていた。

膨大な魔力を持つ聖女様が、自分の体調不良も治せないのかと揶揄されていたが、懐妊し、出産が終わるまで身を隠すための方便だったのだろう。

「可愛くて可愛くてしょうがないので、お仕事とはいえ離れるのは忍びないのですが」

そう言って、ルイズ様は赤子の柔らかい頬に自分の頬を寄せて笑っていた。

「わかりました、お任せください聖女様」

俺が胸に手を当て敬礼をすると、そっと一歩近づき、抱っこしていた赤子を俺へと渡してきた。

「この子、名前はレオって言います。
 まだ生後三ヶ月です。……よろしくお願いしますね」

うっすらと生えた髪の毛は、母親譲りの美しい金髪。

俺はレオと呼ばれたその子供を抱き、ずしりと、両腕に命の重みを感じていた。
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