育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
31.運命を背負った子
そうして、皇帝からの勅命「私生児を秘密裏に世話しろ」という最重要使命が始まった。
急に姿を消した俺は怪しまれやしないかと思ったが、表向きには、『騎士団長のアーサーは、隣国の視察のために長期間王都を離れる』という話になっているらしい。
普段も潜伏や視察をすることもあるため、部下の騎士団員たちもそれ以上深く探ってはこないだろう。
「子供が手が離れる程度に育ったら、聖女ルイズを王都ではなくもっと小国の聖堂に異動させ、そこで静かに暮らさせる」という計画のようだ。
王妃以外の女性との間に生まれた、皇帝の私生児。
しかもその相手は、神々しき誉れ高き王宮聖女様。
(すごい運命を背負っているな、この子は)
正直、簡単な話ではない。
同盟国と政略結婚をしたのは、資源の豊富な我が国と、貿易が得意な同盟国との、いわば莫大な金銭や陰謀が絡む政略結婚だ。
特に、王妃カミラ様の実兄であるランティス宰相は、非常に頭が切れ、悪くいえば画策の上手い方なので、妹の王妃を利用し、さらなる地位を得ようとしているに違いない。
(だというのに、王妃以外の女性の子供なんてーー命の保証はないな)
カルヴァン皇帝は、自分の子供と愛しの聖女を守るために、必死に手を打っているのだろう。
懐妊がわからぬよう、お腹が目立たぬうちに聖女を休ませ、その間に出産し、聖女が復帰したあとは子供は秘密裏に騎士団長に育てさせる、と。
(全く、とんでもないことに巻き込まれたものだ)
俺の『五感強化』は確かに護衛にはぴったりで、追っ手や監視の目があっても、スキルで増強させた視力や聴力で鋭く感知ができる。
その能力を買われて騎士団長の地位まで来たのだが、その結果が子守とはな。
「ふ、ふぇぇ……ふぇええ」
腕の中に抱き抱えているレオが、眉を顰めて唇を震わせ出した。
「ふ……ふぇええええええええん!!」
その泣き声に合わせて、机はガタガタと揺れ、本棚から本が乱雑に落ち始めた。
「な、なんだ……!?」
俺は急なことに焦ったが、魔力の暴走だと気がついた俺は必死に子供をあやし、『五感強化』に使っていた自分の魔力を、『共鳴』に使用する。
青い魔力でレオを包み込み、俺は乱れた呼吸を整える。
「よし、いい子だ。大丈夫、大丈夫だ……」
「ふぇ…ふぅ……」
窓が揺れ、コップが倒れてしまったが、しばらくしたらレオは落ち着いたのか、すぐに眠り始めた。
王都一の魔力を持つ聖女の血を引く子供だ。
魔力は親から遺伝するというので、この子がこの小さい体にたくさんの魔力を備えていることはすぐにわかった。
感情の制御ができない子供は、魔力の制御にも骨が折れそうだ。
「……うわ」
自分の手が濡れたと思ったら、どうやらレオが泣いた拍子におしっこを漏らしたらしい。
せっかく眠ったのを起こさないようにと肌着を新しいものに替え、汚れた肌着と、同じく濡れた俺のシャツを洗う。
まだ始まったばかりだが、子育てというもの大変さが身に染みた瞬間だった。
急に姿を消した俺は怪しまれやしないかと思ったが、表向きには、『騎士団長のアーサーは、隣国の視察のために長期間王都を離れる』という話になっているらしい。
普段も潜伏や視察をすることもあるため、部下の騎士団員たちもそれ以上深く探ってはこないだろう。
「子供が手が離れる程度に育ったら、聖女ルイズを王都ではなくもっと小国の聖堂に異動させ、そこで静かに暮らさせる」という計画のようだ。
王妃以外の女性との間に生まれた、皇帝の私生児。
しかもその相手は、神々しき誉れ高き王宮聖女様。
(すごい運命を背負っているな、この子は)
正直、簡単な話ではない。
同盟国と政略結婚をしたのは、資源の豊富な我が国と、貿易が得意な同盟国との、いわば莫大な金銭や陰謀が絡む政略結婚だ。
特に、王妃カミラ様の実兄であるランティス宰相は、非常に頭が切れ、悪くいえば画策の上手い方なので、妹の王妃を利用し、さらなる地位を得ようとしているに違いない。
(だというのに、王妃以外の女性の子供なんてーー命の保証はないな)
カルヴァン皇帝は、自分の子供と愛しの聖女を守るために、必死に手を打っているのだろう。
懐妊がわからぬよう、お腹が目立たぬうちに聖女を休ませ、その間に出産し、聖女が復帰したあとは子供は秘密裏に騎士団長に育てさせる、と。
(全く、とんでもないことに巻き込まれたものだ)
俺の『五感強化』は確かに護衛にはぴったりで、追っ手や監視の目があっても、スキルで増強させた視力や聴力で鋭く感知ができる。
その能力を買われて騎士団長の地位まで来たのだが、その結果が子守とはな。
「ふ、ふぇぇ……ふぇええ」
腕の中に抱き抱えているレオが、眉を顰めて唇を震わせ出した。
「ふ……ふぇええええええええん!!」
その泣き声に合わせて、机はガタガタと揺れ、本棚から本が乱雑に落ち始めた。
「な、なんだ……!?」
俺は急なことに焦ったが、魔力の暴走だと気がついた俺は必死に子供をあやし、『五感強化』に使っていた自分の魔力を、『共鳴』に使用する。
青い魔力でレオを包み込み、俺は乱れた呼吸を整える。
「よし、いい子だ。大丈夫、大丈夫だ……」
「ふぇ…ふぅ……」
窓が揺れ、コップが倒れてしまったが、しばらくしたらレオは落ち着いたのか、すぐに眠り始めた。
王都一の魔力を持つ聖女の血を引く子供だ。
魔力は親から遺伝するというので、この子がこの小さい体にたくさんの魔力を備えていることはすぐにわかった。
感情の制御ができない子供は、魔力の制御にも骨が折れそうだ。
「……うわ」
自分の手が濡れたと思ったら、どうやらレオが泣いた拍子におしっこを漏らしたらしい。
せっかく眠ったのを起こさないようにと肌着を新しいものに替え、汚れた肌着と、同じく濡れた俺のシャツを洗う。
まだ始まったばかりだが、子育てというもの大変さが身に染みた瞬間だった。