育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
33.感謝祭当日
それからは毎日、子育てに追われる日々だ。
俺には育児チートなんて能力はなかったから、濡れて汚れたレオの肌着は全て手洗いだし、母乳は出ないので、皇帝から信頼されている部下が毎朝物資として運んでくれるミルクを、毎回人肌に温め、飲ませなくてはいけない。
なんで泣いているのかなんてわからないので、暑くないか寒くないか、眠いのか、お腹が減っているのか、悪戦苦闘するばかりだった。
しかし、
「ほら、高い高い」
「きゃはは!」
高い高いをしてあげれば、楽しそうに声を上げて笑う姿。
「こら、俺の指をしゃぶるな、くすぐったいぞ」
「ぶうぅー」
小さな手のひらで、俺の人差し指を握って舐めようとする好奇心旺盛な姿。
「きらめく星の下ー、木々も皆眠りー、朝日はまた昇る、輝く陽が昇るー……♪」
「ぅぅん………」
夜泣きがひどい夜も、優しく抱っこをし、俺の故郷の子守唄を歌いながら背中を撫でると、気持ちよさそうに眠ってくれる姿。
その全てが、尊くて、愛おしいと思った。
必死に泣き、必死に食べ、毎日少しずつ成長する小さな命を、いつしかずっとそばで見ていたいと思ったのだ。
「ふう、今日もようやく寝たか……」
ただ世話をしているだけなのに、寝顔を見ては、くたくたの自分も寝落ちする。
王宮を守るために騎士団に入り、毎日厳しい体術・剣術訓練を乗り越え、戦や討伐ばかりをしていた荒んだ生活とは、全く違う、ゆっくり進む時間。
俺が父親代わりーーなど、おこがましいが、秘密裏の子守りも悪くないと、レオの笑顔を見ていたらそう思った。
しかし、事態はそう甘くはなかった。
宮廷聖女を一年近く匿い、極秘で出産させ、離宮で育てる。
考えられる範囲で、皇帝が愛しの女性と子を守ろうと画策しているのはわかったが。
血の繋がった妹を政略結婚させ、我が国の地位も権力も全て奪おうとしている、ランティス宰相の執念を甘く見てはいけなかった。
* * *
レオを秘密裏で育てることになってから数ヶ月が経った。
「ほら、げっぷができるか」
「ふう……げふっ」
「いい子だ」
背中を優しく叩いてゲップを促す。
俺は、おんぶ紐でレオを背負ったまま汚れた衣服を洗ったり、そろそろお腹が減っただろうから、お腹いっぱいになった後の昼寝の準備としてシーツを整えようとか。
よく舐めるおもちゃはバイ菌を貰わないようによく洗っておこうとか、効率よく子守りができるようになっていた。
習うより慣れろということだな。
その日は、年に一度王都全域がお祭り騒ぎになる、感謝祭の日だった。
初代皇帝の誕生日というこの日は、重要な祭礼で、宮廷で戴冠式が行われた後はパレードが開かれる。
そのため城下町ではたくさんの出店が立ち並び、花吹雪が舞い上がり、人々は笑顔で包まれる日だ。
騎士団長の俺は、毎年王宮の警備や城下町の治安の整備に奔走し、あまり楽しめた覚えはないが、漂ってくる焼いた肉の香りや、鼓笛隊の演奏の音、何より行き交う町人たちの、楽しそうな笑顔を見るのが好きだった。
俺には育児チートなんて能力はなかったから、濡れて汚れたレオの肌着は全て手洗いだし、母乳は出ないので、皇帝から信頼されている部下が毎朝物資として運んでくれるミルクを、毎回人肌に温め、飲ませなくてはいけない。
なんで泣いているのかなんてわからないので、暑くないか寒くないか、眠いのか、お腹が減っているのか、悪戦苦闘するばかりだった。
しかし、
「ほら、高い高い」
「きゃはは!」
高い高いをしてあげれば、楽しそうに声を上げて笑う姿。
「こら、俺の指をしゃぶるな、くすぐったいぞ」
「ぶうぅー」
小さな手のひらで、俺の人差し指を握って舐めようとする好奇心旺盛な姿。
「きらめく星の下ー、木々も皆眠りー、朝日はまた昇る、輝く陽が昇るー……♪」
「ぅぅん………」
夜泣きがひどい夜も、優しく抱っこをし、俺の故郷の子守唄を歌いながら背中を撫でると、気持ちよさそうに眠ってくれる姿。
その全てが、尊くて、愛おしいと思った。
必死に泣き、必死に食べ、毎日少しずつ成長する小さな命を、いつしかずっとそばで見ていたいと思ったのだ。
「ふう、今日もようやく寝たか……」
ただ世話をしているだけなのに、寝顔を見ては、くたくたの自分も寝落ちする。
王宮を守るために騎士団に入り、毎日厳しい体術・剣術訓練を乗り越え、戦や討伐ばかりをしていた荒んだ生活とは、全く違う、ゆっくり進む時間。
俺が父親代わりーーなど、おこがましいが、秘密裏の子守りも悪くないと、レオの笑顔を見ていたらそう思った。
しかし、事態はそう甘くはなかった。
宮廷聖女を一年近く匿い、極秘で出産させ、離宮で育てる。
考えられる範囲で、皇帝が愛しの女性と子を守ろうと画策しているのはわかったが。
血の繋がった妹を政略結婚させ、我が国の地位も権力も全て奪おうとしている、ランティス宰相の執念を甘く見てはいけなかった。
* * *
レオを秘密裏で育てることになってから数ヶ月が経った。
「ほら、げっぷができるか」
「ふう……げふっ」
「いい子だ」
背中を優しく叩いてゲップを促す。
俺は、おんぶ紐でレオを背負ったまま汚れた衣服を洗ったり、そろそろお腹が減っただろうから、お腹いっぱいになった後の昼寝の準備としてシーツを整えようとか。
よく舐めるおもちゃはバイ菌を貰わないようによく洗っておこうとか、効率よく子守りができるようになっていた。
習うより慣れろということだな。
その日は、年に一度王都全域がお祭り騒ぎになる、感謝祭の日だった。
初代皇帝の誕生日というこの日は、重要な祭礼で、宮廷で戴冠式が行われた後はパレードが開かれる。
そのため城下町ではたくさんの出店が立ち並び、花吹雪が舞い上がり、人々は笑顔で包まれる日だ。
騎士団長の俺は、毎年王宮の警備や城下町の治安の整備に奔走し、あまり楽しめた覚えはないが、漂ってくる焼いた肉の香りや、鼓笛隊の演奏の音、何より行き交う町人たちの、楽しそうな笑顔を見るのが好きだった。