育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
42.伝書鳩の行方
* * *
日の傾いた夕暮れ、森の奥で一人の男が立っていた。
胸の内側に剣の形を模した刺繍の入った上着を着た老紳士だ。
「『神託の巫女』を召喚するなど、皇帝もどうやら必死なようだ」
白い顎髭を撫でながら、その男ーーグレンは低い声で呟く。
「赤子を討つのは容易いが……行方不明の騎士団長がそばにいるのは、計算外だったな」
グレンは手元の便箋に、
「アーサー・グレイフォード騎士団長存命を確認。
奴の『五感強化』は非常に厄介で、排除は困難」
と書き連ねる。
まさか、冷静沈着で皇帝の命令ならばどんな危険な任務も冷血に遂行をしていた騎士団長のアーサーが、こんな安穏な田舎に身を潜めていたとは思わなかった。
ーー馬鹿な男だ。
聖女と禁忌の子を逃したのだから、もう金輪際面倒ごとには関わらねば良かったものを。
第二子まで守ろうとしているなんて、とんだお人よしだ。
グレンは銀髪の騎士団長の冷徹な横顔を思い出しながら、口元を苦々しく歪める。
「聖女の罪もろとも、赤子を確実に葬るため、援軍を要請する」
大木の影に身を隠しながらも、文末に最後の一行を書き足した。
そして手紙を細く折り、白い鳩の細い足へとくくりつける。
そっと両手で包み、足に手紙をつけた二羽の伝書鳩を夕暮れの空に放つと、王都に向かってまっすぐに羽ばたいていった。
その伝書鳩の姿を、目を細めて見送り、
「ーー今度こそ、全て終わらせねば」
そう低く呟き、不敵に微笑んでいた。
日の傾いた夕暮れ、森の奥で一人の男が立っていた。
胸の内側に剣の形を模した刺繍の入った上着を着た老紳士だ。
「『神託の巫女』を召喚するなど、皇帝もどうやら必死なようだ」
白い顎髭を撫でながら、その男ーーグレンは低い声で呟く。
「赤子を討つのは容易いが……行方不明の騎士団長がそばにいるのは、計算外だったな」
グレンは手元の便箋に、
「アーサー・グレイフォード騎士団長存命を確認。
奴の『五感強化』は非常に厄介で、排除は困難」
と書き連ねる。
まさか、冷静沈着で皇帝の命令ならばどんな危険な任務も冷血に遂行をしていた騎士団長のアーサーが、こんな安穏な田舎に身を潜めていたとは思わなかった。
ーー馬鹿な男だ。
聖女と禁忌の子を逃したのだから、もう金輪際面倒ごとには関わらねば良かったものを。
第二子まで守ろうとしているなんて、とんだお人よしだ。
グレンは銀髪の騎士団長の冷徹な横顔を思い出しながら、口元を苦々しく歪める。
「聖女の罪もろとも、赤子を確実に葬るため、援軍を要請する」
大木の影に身を隠しながらも、文末に最後の一行を書き足した。
そして手紙を細く折り、白い鳩の細い足へとくくりつける。
そっと両手で包み、足に手紙をつけた二羽の伝書鳩を夕暮れの空に放つと、王都に向かってまっすぐに羽ばたいていった。
その伝書鳩の姿を、目を細めて見送り、
「ーー今度こそ、全て終わらせねば」
そう低く呟き、不敵に微笑んでいた。