育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
46.ママと呼んで
一人で勝手に舞い上がって、赤面していたのが恥ずかしく、抱っこしているフィオに視線を向けると、眠っていたフィオがゆっくり目を開けたところだった。
「んー……ふぇ…」
唇をぱくぱくと動かしているフィオの額には、「空腹」という文字が浮かんでいた。
バタバタして、前回のミルクからだいぶ時間が空いてしまっていたかもしれないと、私は慌てて育児チートスキルを発動する。
「≪慈しみの抱擁≫発動、≪自動ミルク整調≫オン」
私の右手の中に、自動的に哺乳瓶に入った人肌のミルクが現れる。
フィオの口元に持っていくと、待ってましたと言わんばかりに元気よく吸い始める。
「何度見ても凄い能力だな。その入れ物も、便利そうだ」
アーサーさんは私の育児チートを見て、まだ新鮮に驚くようだ。
片手にフィオ、片手に哺乳瓶を持っている私は、笑顔で返事をする。
「これはえーと、私の故郷でよく使う、哺乳瓶というものです」
中世ヨーロッパ風のこの世界には哺乳瓶はないのだろう。アーサーさんはスプーンであげていたと言っていたので、さぞ時間がかかるだろうし、冷めては温めなければいけないのが大変そうだ。
「俺がレオを育てていた時も、欲しかったな」
アーサーさんはそう言い、そっと目を細めた。
フィオの顔を見つめる先に、過去自分と共に過ごした、フィオの兄、レオの姿を重ねているようだった。
大切に守って、そばにいて、それでも守りきれなかったという彼の辛さは、計り知れない。
ミルクを飲み終わったので手の中から哺乳瓶を消し、縦抱っこしてフィオをトントンすると、元気にゲップをした。
「はい、よくできました」
「まー」
縦抱っこから横抱っこに戻し、ゆらゆらと揺らすと、フィオの額に浮かんだ空腹の文字も消え、上機嫌に笑っていた。
「ま、まー」
その言葉に、私はハッとする。
「今、ママって言いましたよね?」
フィオは、「あうー」とか「ふぇぇ」といった喃語はよく話すが、はっきりと「ま」の発音をしたのは初めてのような気がする。
「どうだろう、俺もそう聞こえたが」
アーサーさんも少し驚いたようで目を丸くしていたが、私は一気に嬉しくなった。
「ママって呼んでくれたの、フィオ? 嬉しい―! ありがとう!」
「ま、ま、ま、ままー」
「ママだよーよく言えたねー!」
嬉しさが爆発して、思わず椅子から立ち、フィオを抱っこしたママくるくるとその場で回り踊ってしまった。
フィオも喜ばれたのがわかったのか、何度もまま、ままと言っている。
「んー……ふぇ…」
唇をぱくぱくと動かしているフィオの額には、「空腹」という文字が浮かんでいた。
バタバタして、前回のミルクからだいぶ時間が空いてしまっていたかもしれないと、私は慌てて育児チートスキルを発動する。
「≪慈しみの抱擁≫発動、≪自動ミルク整調≫オン」
私の右手の中に、自動的に哺乳瓶に入った人肌のミルクが現れる。
フィオの口元に持っていくと、待ってましたと言わんばかりに元気よく吸い始める。
「何度見ても凄い能力だな。その入れ物も、便利そうだ」
アーサーさんは私の育児チートを見て、まだ新鮮に驚くようだ。
片手にフィオ、片手に哺乳瓶を持っている私は、笑顔で返事をする。
「これはえーと、私の故郷でよく使う、哺乳瓶というものです」
中世ヨーロッパ風のこの世界には哺乳瓶はないのだろう。アーサーさんはスプーンであげていたと言っていたので、さぞ時間がかかるだろうし、冷めては温めなければいけないのが大変そうだ。
「俺がレオを育てていた時も、欲しかったな」
アーサーさんはそう言い、そっと目を細めた。
フィオの顔を見つめる先に、過去自分と共に過ごした、フィオの兄、レオの姿を重ねているようだった。
大切に守って、そばにいて、それでも守りきれなかったという彼の辛さは、計り知れない。
ミルクを飲み終わったので手の中から哺乳瓶を消し、縦抱っこしてフィオをトントンすると、元気にゲップをした。
「はい、よくできました」
「まー」
縦抱っこから横抱っこに戻し、ゆらゆらと揺らすと、フィオの額に浮かんだ空腹の文字も消え、上機嫌に笑っていた。
「ま、まー」
その言葉に、私はハッとする。
「今、ママって言いましたよね?」
フィオは、「あうー」とか「ふぇぇ」といった喃語はよく話すが、はっきりと「ま」の発音をしたのは初めてのような気がする。
「どうだろう、俺もそう聞こえたが」
アーサーさんも少し驚いたようで目を丸くしていたが、私は一気に嬉しくなった。
「ママって呼んでくれたの、フィオ? 嬉しい―! ありがとう!」
「ま、ま、ま、ままー」
「ママだよーよく言えたねー!」
嬉しさが爆発して、思わず椅子から立ち、フィオを抱っこしたママくるくるとその場で回り踊ってしまった。
フィオも喜ばれたのがわかったのか、何度もまま、ままと言っている。