育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
47.この人とならきっと
「ははっ」
笑い声が聞こえたので踊るのをやめて振り返ると、いつもクールなアーサーさんが、口元を押さえておかしそうに笑っていた。
「ふふ、ごめんなさい、浮かれて……。
血の繋がっていない私がママなんて、おこがましいですよね」
今は山小屋に避難している最中だとか、そもそも私は本当の母親じゃないのに浮かれすぎだとか、急に恥ずかしくなり、私は静かに椅子にまた座る。
「ああいや、誤解だ。馬鹿にしたんじゃない。微笑ましいと思ったんだ」
しょんぼりした私をなだめるように、アーサーさんは焦って弁解をする。
「そうなんですか?」
「ああ」
私からの視線を受け止め、彼は少し思案して指で唇を撫でていたが、ゆっくり話し出した。
「俺の母親は体が弱く、幼い頃に病死したんだ。
六歳の時に、父が再婚して新しい母親ができた」
「えっ……」
さらっと、口にしにくい出自を語るアーサーさんに、私は驚く。
しかし彼は気にしていないというように、すらすらと話してくれる。
「死んだ母さんは今でも思い出すし、もちろん大切だけど、二人目の育ての親の母さんも、俺に優しくいつも笑顔で、子供の俺は大好きだった。
作ってくれたシチューは、今でも一番の好物だよ」
アーサーさんの低い声は、私の心の弱い部分にいつも響く。
現代日本よりも医療が発達していなさそうな、この転生先の世界では、身内が死んでしまうことも珍しいことではないのかもしれない。
生みの親と、育ての親。そのどちらも、変わらず大切だと彼は言う。
「俺は、血の繋がりだけでなく、どれだけ愛情をもって育てたかで親子の絆は生まれると思う。
だから君も、フィオにとっては立派な『ママ』だよ」
アーサーさんは、私とフィオに穏やかに笑いかけてくれた。
「そう……ですかね」
優しい言葉に、私は思わず涙が浮かんでしまった。
(そっか、聖女ルイズ様だけじゃない。
私も、フィオの『ママ』に、なれてるのかな)
腕の中の、天使のように可愛らしい男の子。大好きで、もはや私にとって、かけがえのない存在になっている。
「ま、ま、まー」
一生懸命唇を動かして、何かを伝えようとしているフィオ。その青く、宝石のように煌めく瞳は、真っ直ぐに私を映している。
「ふふ、なぁに、フィオ」
唇を一生懸命動かす、小さな赤ちゃんを愛おしく思うこの気持ちに、理由はいらないのかもしれない。
「ままー」
フィオが、右腕を挙げて、何かを掴もうと手を開いた。
私は咄嗟にそのフィオの手を握ろうと手を出した。
しかし、向かいにいたアーサーさんも、全く同じタイミングで、フィオの手に自分の手を差し出した。
自然と伸ばした私とアーサーさんの手のひらが重なる。
私は驚き、アーサーさんの方を見るが、彼は少しだけこちらを見たあと微笑み、私の手ごと、フィオの小さい手を包み込んだ。
三人の手が重なり、じんわりと温かさが伝わってくる。
(ああ、この人となら)
自然と、心も温かくなっていく。
(この人となら、ずっと家族でいられるかもしれない)
三人きりの小屋の中で、重ね合った手の温度を感じながら、私は柔らかな表情を浮かべる、アーサーさんを見つめていた。
笑い声が聞こえたので踊るのをやめて振り返ると、いつもクールなアーサーさんが、口元を押さえておかしそうに笑っていた。
「ふふ、ごめんなさい、浮かれて……。
血の繋がっていない私がママなんて、おこがましいですよね」
今は山小屋に避難している最中だとか、そもそも私は本当の母親じゃないのに浮かれすぎだとか、急に恥ずかしくなり、私は静かに椅子にまた座る。
「ああいや、誤解だ。馬鹿にしたんじゃない。微笑ましいと思ったんだ」
しょんぼりした私をなだめるように、アーサーさんは焦って弁解をする。
「そうなんですか?」
「ああ」
私からの視線を受け止め、彼は少し思案して指で唇を撫でていたが、ゆっくり話し出した。
「俺の母親は体が弱く、幼い頃に病死したんだ。
六歳の時に、父が再婚して新しい母親ができた」
「えっ……」
さらっと、口にしにくい出自を語るアーサーさんに、私は驚く。
しかし彼は気にしていないというように、すらすらと話してくれる。
「死んだ母さんは今でも思い出すし、もちろん大切だけど、二人目の育ての親の母さんも、俺に優しくいつも笑顔で、子供の俺は大好きだった。
作ってくれたシチューは、今でも一番の好物だよ」
アーサーさんの低い声は、私の心の弱い部分にいつも響く。
現代日本よりも医療が発達していなさそうな、この転生先の世界では、身内が死んでしまうことも珍しいことではないのかもしれない。
生みの親と、育ての親。そのどちらも、変わらず大切だと彼は言う。
「俺は、血の繋がりだけでなく、どれだけ愛情をもって育てたかで親子の絆は生まれると思う。
だから君も、フィオにとっては立派な『ママ』だよ」
アーサーさんは、私とフィオに穏やかに笑いかけてくれた。
「そう……ですかね」
優しい言葉に、私は思わず涙が浮かんでしまった。
(そっか、聖女ルイズ様だけじゃない。
私も、フィオの『ママ』に、なれてるのかな)
腕の中の、天使のように可愛らしい男の子。大好きで、もはや私にとって、かけがえのない存在になっている。
「ま、ま、まー」
一生懸命唇を動かして、何かを伝えようとしているフィオ。その青く、宝石のように煌めく瞳は、真っ直ぐに私を映している。
「ふふ、なぁに、フィオ」
唇を一生懸命動かす、小さな赤ちゃんを愛おしく思うこの気持ちに、理由はいらないのかもしれない。
「ままー」
フィオが、右腕を挙げて、何かを掴もうと手を開いた。
私は咄嗟にそのフィオの手を握ろうと手を出した。
しかし、向かいにいたアーサーさんも、全く同じタイミングで、フィオの手に自分の手を差し出した。
自然と伸ばした私とアーサーさんの手のひらが重なる。
私は驚き、アーサーさんの方を見るが、彼は少しだけこちらを見たあと微笑み、私の手ごと、フィオの小さい手を包み込んだ。
三人の手が重なり、じんわりと温かさが伝わってくる。
(ああ、この人となら)
自然と、心も温かくなっていく。
(この人となら、ずっと家族でいられるかもしれない)
三人きりの小屋の中で、重ね合った手の温度を感じながら、私は柔らかな表情を浮かべる、アーサーさんを見つめていた。