育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜

68.本物の家族になれたね

これは、保育士の私が絵本の中に転生し、
「神託の巫女」として便利な育児チート能力を使って、
 命を狙われていた皇太子たちの世話を辺境でする。
 そんなお話。


 カルヴァン皇帝は、義実家の親族が金目当ての難ありだったので、円満離婚したバツイチ子持ちのシングルファザー。

 ハイスペで多忙のため、シッター雇って遠方にホームステイさせる、と。

 スローライフが子供の教育にはいいと思っていたら、元騎士団長の強くてかっこいい男の人がお隣に住んでいて、私が困ったときに皇太子の世話を手伝ってくれる。

(そして、私はそんな彼が好きで、この生活をとても嬉しいと思っている)



* * *



「パカラッパカラッ!」

 私が洗濯物を干していると、屋敷の中から元気な声が聞こえる。

 レオが、手に馬の形のおもちゃを持って、元気に走り回っているのだ。

「ずいぶん気に入ったみたいだな」

 それはアーサーさんが、薪の切れ端をナイフで削って馬の形を作ったもので、レオは大層気に入っているようだ。

 屋敷に来るために乗った馬車が、楽しかったとのこと。

「ねえ、もうひとつつくってよ! そしたら、きょうそうさせるんだ!」

 レオはもう一つ作ってほしいとアーサーさんにねだっている。

 いつの世も、男の子は動物や車が好きなようだ。

「ねえ、パパー、つくってよー」

「……パパ?」

 薪の準備をしていたアーサーさんが、驚いたようにレオに聞き返す。

「君のパパは、この前修道院の前にいた、黒髪の人だよ。カルヴァン皇帝っていうんだ」

 今は一緒に過ごしているとはいえ、未来の皇太子に間違った知識を与えてはいけないと訂正するが、

「ぼくにはパパはふたり! 黒いパパと、白いパパ!」

白いパパ、と言いながらアーサーさんを指差すレオ。

 黒髪のカルヴァン皇帝と、銀髪のアーサーさんをそう呼んでいるのかもしれない。

「ふふっ、いいね、白いパパ」

 私がレオの髪を撫でると、誇らしげに私の足に抱きついてきた。

「うん! エレナママ!」

 レオは私にとても懐いてくれて、可愛くてしょうがない。

「ふぇぇ……」

 フィオの声がしたのでそっちの方を見ると、寝返りを打ったのか、うつ伏せになっているフィオが、腕の力で体を持ち上げていた。

 プルプルと震える腕を一歩、また一歩と動かし、力強く前に進んでいるのだ。

「アーサーさん! レオ! フィオがハイハイしてます!」

「おお!」

 振り向いたアーサーさんが声をあげ、レオは興味津々で弟を見ている。

「フィオ〜こっちだよぉー」

「あーうー!」

 手を叩くお兄ちゃんの声に向かって、プルプルと震えながらフィオが頑張って向かってくる。

「がんばれがんばれ!」

「フィオ、その調子よ!」

 レオと私が一生懸命応援すると、フィオはこちらに辿りつき、私はフィオを抱き上げた。

「すごいよフィオ! 今日はご褒美にシチューね!」

「ううー!」

「ぼくもシチューだいすき!」

 甘いミルクで作ったシチューが好きだと、レオはくるくる回って踊っている。

 フィオも、少しずつ離乳食が始まったので、にんじんやじゃがいもを細かく切り刻んだフィオ用のシチューを、最近は喜んで食べている。

「じゃあ、美味しいお肉が食べられるように俺も狩りに行ってくるか」

「やったー!おにくー!」

 育ち盛りのレオはお肉が好物で、いつもおかわりしている。

「エレナ、王都から手紙だ。今度舞踏会があるから出席してほしいだと」

 手紙には、宰相の手下は全て王宮から排除したこと。
 少しずつだが教会の保守派への考えを改革していっている旨が書かれていた。

 いつか二人が皇太子として王宮に行っても大丈夫なように、皇帝は進めてくれているようだ。

「たのしみだね、ママ、パパ!」

「ままー、ぱぱー」

「えっ、フィオ今、パパって呼んだ?」

 私が聞き返すと、初めてフィオにパパと呼ばれたアーサーさんが、嬉しそうに笑っていた。


「って、フィオ、ハイハイ頑張りすぎておしっこ漏れてるよ!
≪慈しみの抱擁≫発動、≪自動洗浄≫オン!」


 大切な子供達と、大好きなパートナーと共に。
 辺境での幸せなスローライフが、これからもずっと続いていきますように。
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