育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜
8,隣人のアーサーさん
振り返ると、 涙が滲んでぼやけた視界に、背の高い銀髪の男性が立っていた。
新緑の高原の中に、銀色の髪が靡いていて、幻想的だ。
「ええと、そうです。あなたは……?」
「隣の家の者だ。余っているから、よかったら持ってこよう」
後ろ手で、近くに立つ丸太小屋を指差した青年は、すぐに自分の家へと向かった。
徒歩1分程度、目と鼻の先にこじんまりとした小屋があるのは気がついていたが、人が住んでいるとは思わなかった。
ゆらゆらと抱っこし揺らしていると、フィオはようやく目を閉じ、小さく寝息を立てだした。
額の上の「眠い」という表示も自然と消え、私は安心してほっと息を吐く。
すると、丸太小屋から出てきた銀髪の青年が、こちらへ戻ってきた。
「火を起こしたいんだろう? この程度で足りると思う」
両手に斧で切った薪を数本ずつ抱えている。
細身だが腕にはしっかりと筋肉がついており、軽々と薪を運ぶと、私の前に薪を置いた。
「ご親切にありがとうございます。本当に助かります」
涙が滲んだ目を擦り、お礼を言うと、青年はじっと私が抱くフィオを見つめていきた。
「最近ここに越してきたんだろう」
「ええ、そうなんです。ご挨拶が遅れました。
私はエレナと言います。この子はフィオ。
この屋敷のご主人様に頼まれて、この子のお世話をさせていただいてます」
前からこの場所に住んでいるお隣さんに挨拶をしてなかったと、私は慌てて頭を下げる。
(引っ越した際のご近所付き合いも、こんな辺境だからこそ大事よね)
「よろしく。俺はアーサーだ」
「よろしくお願いします!」
アーサーと名乗った青年は、二十代後半ぐらいで、切れ長の目で紅い瞳が特徴的だ。
(うう、かっこいい人……恥ずかしくて直視できない……)
女子高から保育の専門学校に行き、女性が多い職場だったため、美形な男性の前に免疫がない私は、もじもじとうつむいてしまった。
しかし、自分の腕に視線を落とすと、薪を割ったせいで起こしてしまった、幼きフィオの姿。
ここでの生活に慣れていそうな、男手が今必要なのではないか。
「あの……申し訳ないのですが、火の付け方を教えてくれませんか……?
この子をお風呂に入れてあげたくて……」
スローライフ生活、もといサバイバル生活にも慣れていかねばならない。
お願いをすると、アーサーは嫌な顔もせずに頷いた。
「ああ、もちろん。少し待っていてくれ」
すると、あたりに落ちている落ち葉を両手でかき集めるアーサー。
そしてズボンのポケットから火打ち石を取り出すと、両手でカチカチと打ち付け、摩擦で飛んだ小さな火が、落ち葉に燃え広がる。
唇を尖らせ小さく息を送ると、徐々に火は大きくなり、薪を入れると立派な焚き火になった。
「す、すごい……!」
私が感嘆の声をあげても動じることなく、リュックの中から銅の桶を取り出し、そこに水筒に入れていた水を入れ、火にかけ出した。
数分待ち、彼が水の中に指を入れると頷いた。
「少しぬるめだが、赤子にはこのくらいの温度がちょうどいいと思う。沐浴させてあげてくれ。水場に入れてもらえるか?」
布をかませた手で桶を持ちあげたアーサーがそういうので、すぐに屋敷の中へと案内する。
水場に桶を置いたところで、フィオが目を覚ます。
「では早速沐浴させますね!」
「ああ。俺は外で火の番をしている」
最も簡単に火を炊き、沐浴用のお湯を作ってしまったアーサーは、火事にならないよう見張るため表へと出ていった。
新緑の高原の中に、銀色の髪が靡いていて、幻想的だ。
「ええと、そうです。あなたは……?」
「隣の家の者だ。余っているから、よかったら持ってこよう」
後ろ手で、近くに立つ丸太小屋を指差した青年は、すぐに自分の家へと向かった。
徒歩1分程度、目と鼻の先にこじんまりとした小屋があるのは気がついていたが、人が住んでいるとは思わなかった。
ゆらゆらと抱っこし揺らしていると、フィオはようやく目を閉じ、小さく寝息を立てだした。
額の上の「眠い」という表示も自然と消え、私は安心してほっと息を吐く。
すると、丸太小屋から出てきた銀髪の青年が、こちらへ戻ってきた。
「火を起こしたいんだろう? この程度で足りると思う」
両手に斧で切った薪を数本ずつ抱えている。
細身だが腕にはしっかりと筋肉がついており、軽々と薪を運ぶと、私の前に薪を置いた。
「ご親切にありがとうございます。本当に助かります」
涙が滲んだ目を擦り、お礼を言うと、青年はじっと私が抱くフィオを見つめていきた。
「最近ここに越してきたんだろう」
「ええ、そうなんです。ご挨拶が遅れました。
私はエレナと言います。この子はフィオ。
この屋敷のご主人様に頼まれて、この子のお世話をさせていただいてます」
前からこの場所に住んでいるお隣さんに挨拶をしてなかったと、私は慌てて頭を下げる。
(引っ越した際のご近所付き合いも、こんな辺境だからこそ大事よね)
「よろしく。俺はアーサーだ」
「よろしくお願いします!」
アーサーと名乗った青年は、二十代後半ぐらいで、切れ長の目で紅い瞳が特徴的だ。
(うう、かっこいい人……恥ずかしくて直視できない……)
女子高から保育の専門学校に行き、女性が多い職場だったため、美形な男性の前に免疫がない私は、もじもじとうつむいてしまった。
しかし、自分の腕に視線を落とすと、薪を割ったせいで起こしてしまった、幼きフィオの姿。
ここでの生活に慣れていそうな、男手が今必要なのではないか。
「あの……申し訳ないのですが、火の付け方を教えてくれませんか……?
この子をお風呂に入れてあげたくて……」
スローライフ生活、もといサバイバル生活にも慣れていかねばならない。
お願いをすると、アーサーは嫌な顔もせずに頷いた。
「ああ、もちろん。少し待っていてくれ」
すると、あたりに落ちている落ち葉を両手でかき集めるアーサー。
そしてズボンのポケットから火打ち石を取り出すと、両手でカチカチと打ち付け、摩擦で飛んだ小さな火が、落ち葉に燃え広がる。
唇を尖らせ小さく息を送ると、徐々に火は大きくなり、薪を入れると立派な焚き火になった。
「す、すごい……!」
私が感嘆の声をあげても動じることなく、リュックの中から銅の桶を取り出し、そこに水筒に入れていた水を入れ、火にかけ出した。
数分待ち、彼が水の中に指を入れると頷いた。
「少しぬるめだが、赤子にはこのくらいの温度がちょうどいいと思う。沐浴させてあげてくれ。水場に入れてもらえるか?」
布をかませた手で桶を持ちあげたアーサーがそういうので、すぐに屋敷の中へと案内する。
水場に桶を置いたところで、フィオが目を覚ます。
「では早速沐浴させますね!」
「ああ。俺は外で火の番をしている」
最も簡単に火を炊き、沐浴用のお湯を作ってしまったアーサーは、火事にならないよう見張るため表へと出ていった。