育児チート令嬢、辺境で王族の赤子と元騎士団長様と家族はじめました〜子守り上手な彼に溺愛される異世界スローライフ〜

9.沐浴気持ちいいね

フィオの服を脱がせ、首の後ろと腰を両手で支えながら、ゆっくりと桶の中に入れていく。

お腹を優しく洗ってあげると、

「ふうぅぅ……」

気持ちよさそうに、うっとりとした顔をしているフィオ。

「ふふ、気持ちよさそう」

石鹸を泡立て、足の先から髪の毛までしっかりと洗い流し、生活なタオルで拭き、フィオに肌着と服を着せる。

金髪の髪の毛がより一層ふわふわになって、いい香りがする。

沐浴をさせてあげられたので、フィオを抱っこしたまま屋敷の外へ出ると、丸太の上に座ったアーサーは静かに火の番をしていた。

「おかげさまでサッパリしたようです、ありがとうございました!」

「それはよかった」

銀髪のアーサーさんは凛々しい顔立ちのせいか、表情の変化が少ない。言葉も、最低限をハキハキと話すタイプのようだ。

私も彼の隣に腰掛ける。

「はっ……くしゅ! ふぇぇ……」

沐浴を済ませた後のフィオが、ムズムズと顔を歪めると小さくくしゃみをした。

「……大丈夫か?」

「あらら。お風呂上がりで、風が寒かったみたいですね」

私はフィオを包む布を巻き直し、育児チート能力の呪文を唱える。

「≪慈しみの抱擁»発動、≪適温管理»オン」

するとフィオの体の周りに光が集まり、彼を包む布がぽかぽかと温かくなる。
寒そうに縮こまっていたフィオも安心したのか、ふう、と息を吐いていた。

「……なるほど、君は神託の巫女というわけか。子供を預けられたのも頷ける」

アーサーは目を丸くしていて私の一連の行動を見ていたが、どこか納得したように頷いた。

「最近使えるようになった能力なんですが、育児に関してはすごく便利なんです」

握った手をグーパーしながら見つめる私を、アーサーさんは顎に手を置き分析する。

「生まれながら元々スキルを持ってる人もいれば、大人になり経験を積み、成長した上で開花する人もいる。君は後者なんだろうな」

この世界ではスキルを持っている人はそこまで珍しくないのかもしれない。

「なるほど。私が保育士だからかしら」

この世界に転生した時、頭の中に流れた声を思い出す。『汝にしかできない育児があるーー』と。

「その、保育士というのはなんだ?」

この世界では聞き馴染みのない単語なのだろう。
 アーサーさんが不思議そうに首を傾げた。

「お仕事でお忙しい父親や母親の代わりに、食事をあげたり寝かしつけをしたり、一緒に遊んだりと子供のお世話をする仕事です」

「へえ……母親代わりというと、乳母のようなものか」

 アーサーさんの銀髪が、焚き火の光を受け赤く染まる。
パチパチという木が燃える音も、暖かな空気も、心が落ち着く気がする。

ぐううぅ。

こんな状況で、情けなくもお腹が鳴る。
私は恥ずかしくて、自分のお腹を押さえて腹肉をつねった。
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