妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています
8.赤くきらめく婚約パーティー
ルフェーヌはディエゴの執務室から慌てて部屋へ帰り、ジョゼやメイドにパーティーの準備を手伝ってもらった。
陽が暮れてパーティー客が舞踏場へ集まり出す。夜だというのにまだ昼の暑さを残している。
ルフェーヌはドレスルームの姿見に映った自分を眺めている。ジョゼは難しそうな表情でルフェーヌへ確認する。
「本当にそのドレスでいいの?」
ジョゼは何度も「地味……」という言葉を飲み込んだ。ルフェーヌはジョゼへ何度も確認されたが、その度に「これでいい」と返ってきた。ルフェーヌは自分に合いそうなドレスを選んだつもりだ。
ジョゼはそのドレスを否定する事はできず、ディエゴが待つ舞踏場入り口へルフェーヌを案内する。
ルフェーヌはジョゼと共にディエゴが待つ舞踏場の扉の前へやってきた。
ルフェーヌは執事のオレリアンと共にルフェーヌを待つディエゴの姿を見つける。ディエゴはルフェーヌを婚約者として出迎えた時と同じ正装姿をしている。
ルフェーヌはディエゴにドレスを褒めてもらえたら嬉しいと思い、淡い期待を寄せて浮き立つ気持ちでやってきた。
「ディエゴ様、お待たせしました」
ルフェーヌは期待をしながらディエゴの顔を見上げていると、ディエゴはルフェーヌのドレス姿を一瞥して低く呟く。
「は? なんだそのドレスは」
ルフェーヌ本人は気に入っているが、ルフェーヌはアデルと一緒にいた時と同じように目立たない落ち着いた色のドレスを着ている。髪にはいつものシニヨンヘアに髪飾りが一つだけ控えめに付いている。
「お前は俺の婚約者という自覚はあるのか?」
ルフェーヌはディエゴの言葉に怒られた子犬のように眉を下げて下を向く。それを見たディエゴは初夜を逃げ出して謝罪をするルフェーヌの姿と重なる。
ディエゴはいきなりルフェーヌの手を引っ張り歩き出す。
「来い」
「あ、あのっ!」
ルフェーヌはディエゴに引っ張られて舞踏場から離れていく。
「殿下、お時間が迫っております」
「お前に任せる」
開始時間が迫っているためオレリアンが制止するのも構わず、ディエゴは一言だけ言うとルフェーヌを引っ張り舞踏場を離れていく。ジョゼは慌ててルフェーヌの後ろをついて行く。
ドレスルームではメイドたちがルフェーヌのドレスの準備が終わり、片付けをしている。
ディエゴは扉をノックをせずに勢いよく開け、ドレスを物色しだす。メイドたちは何が起こっているのか分からず驚いている。
ディエゴに連れて行かれるルフェーヌについてきたジョゼは驚いているメイドたちに事情を話す。
ルフェーヌはどうしていいか分からず、この光景を見ている事しかできない。
「これでいいだろ」
ディエゴは赤いドレスをルフェーヌへ投げ渡す。
「さっさとそれに着替えろ。メイドはルフェーヌの着替えを手伝え。侍女はこのドレスの色に合う靴と豪華なアクセサリーを選べ。先に舞踏場へ行っている。俺を待たせるな」
侍女とメイドは頭を下げ、侍女は靴とアクセサリーを選び直し、メイドはルフェーヌの着替えを再び手伝うために動き出す。
ルフェーヌは投げ渡されたドレスを広げる。
(素敵なドレス……!)
鮮やかな赤をしたフィアンマレッドのドレスは炎のような赤を連想させる。ドレスの生地には宝石のパイロープガーネットが細かく散りばめられている。
ルフェーヌはこのように華やかなドレスを着た事がなかった。華やかな色はいつもアデルが着ていた。本当は華やかで綺麗なドレスを着たかった。しかしアデルに「あたくしの方が似合うのだから、ドレスの色やデザインがあたくしと似たものにするのはやめてね」といつも言われていた。
少しでも可愛らしい、綺麗な色のドレスを選ぶといろいろ言われてしまっていた。次第に選ばなくなっていき目立たない色や昔からあるデザインのドレスを選ぶのが当たり前になってしまった。
ルフェーヌはフィアンマレッドのドレスに着替え、再びドレッサーの前に座る。メイドたちが手際よく準備を進めていく。
ドレッサーの鏡を眺めていると化粧も変わった。ドレスの色に合わせるように艶のある橙色が入った赤い口紅が塗られる。
ルフェーヌはジョゼが選んでくれたガーネットが付いたティアラとそれに合わせたイヤリングとネックスを付ける。
靴は黒っぽいヒールの低い靴から靴の中央に大粒のガーネットがひとつと、細かいガーネットを靴全体にあしらったハイヒールに履き替える。
どのガーネットもパイロープガーネットを使用している。真紅の宝石はルフェーヌの魅力を引き立て、美しく光り輝いている。
「わたし、こんなに着飾っていいのかしら」
鏡に映るルフェーヌは今まで見たことがない自分が映っている。ジョゼはルフェーヌの問いに笑顔で返してくれる。
「この赤い宝石のガーネットはパイロープガーネットと言って、この国の特産なんだよ。石言葉は忘れたけど、良い言葉だったよ」
「そうなのね。こんな素敵な宝石でできたアクセサリーを付けられて幸せだわ」
「ルフェーヌ様は謙虚だね。髪の毛、サラサラにしてあげるよ」
ジョゼはシニヨンヘアを解き、ルフェーヌの髪を手ぐしで梳かしていく。ジョゼは炎属性のため、温かい手の熱で髪を梳かすだけで美しくまとまる。
ルフェーヌは立ち上がり、姿見に自身を映す。先程とは違い、自身の婚約パーティーにふさわしい華やかなドレスを着たルフェーヌが立っている。
ルフェーヌは感激して瞳を潤ませる。
「ジョゼさん、皆さん。本当にありがとう!」
ルフェーヌは先程よりも嬉しそうな表情でジョゼとメイドに感謝する。
「ルフェーヌちゃん、舞踏場へ行こう。王太子殿下が待ってる」
ルフェーヌはジョゼと一緒に再び舞踏場へ向かう。
先程と同じ場所で苛立ちを耐えるように待っているディエゴはドレスを着替えたルフェーヌを見つめ、表情を緩める。
「先程とは別人だな。似合っている」
ルフェーヌはディエゴに穏やかな声で褒められ、表情を明るくして嬉しそうに照れる。ディエゴは周りにダイヤが装飾された大粒ガーネットのイヤリングを揺らして恥じらうルフェーヌの姿に瞳を細めて微笑む。ルフェーヌはディエゴの優しげな表情に気づかずに照れている。
「ドレスを選んでくださり、ありがとうございます。ディエゴ様はセンスが良いのですね。……わたしが最初に着ていたドレスではいけませんでしたか?」
ルフェーヌなりに良いと思ったドレスを選んだつもりだった。ルフェーヌはディエゴに理由を聞いてみた。
「よく考えろ。俺との婚約パーティーだぞ。お前が一番着飾らなくてどうするんだ。地味なドレスは別の機会で着ろ」
ルフェーヌは普段着ているドレスよりは可愛らしいものを選んだが、ディエゴは地味な色が気に入らなかった。
ルフェーヌが「別の機会ですか?」と聞き返すと、ディエゴは「お前があのようなドレスを気に入っているならば」と返した。
ルフェーヌはドレスの裾を持ち上げる。少し動かすだけでドレスが赤く光り、美しく輝いている。
「わたし、今まで綺麗な色のドレスを着る機会がなくて……。こういうドレス、着てみたかったのです!」
ルフェーヌはフィアンマレッドのドレスの裾を何度も動かし、ディエゴへ嬉しそうに笑う。
「このドレスを気に入ったのか?」
ルフェーヌはディエゴの問いに「はい!」と満面の笑顔で答える。
「ならば次も俺が選んでやる」
ディエゴは嬉しそうに、満足した得意げな表情を見せる。
「殿下、お時間がーー」
オレリアンがタイミングを見計らい、ディエゴへ声をかける。
「ああ、そうだな。お手をどうぞ、王女様。いや、俺の婚約者」
ルフェーヌはディエゴの手を取り、エスコートされながら一緒に舞踏場へ入場した。
陽が暮れてパーティー客が舞踏場へ集まり出す。夜だというのにまだ昼の暑さを残している。
ルフェーヌはドレスルームの姿見に映った自分を眺めている。ジョゼは難しそうな表情でルフェーヌへ確認する。
「本当にそのドレスでいいの?」
ジョゼは何度も「地味……」という言葉を飲み込んだ。ルフェーヌはジョゼへ何度も確認されたが、その度に「これでいい」と返ってきた。ルフェーヌは自分に合いそうなドレスを選んだつもりだ。
ジョゼはそのドレスを否定する事はできず、ディエゴが待つ舞踏場入り口へルフェーヌを案内する。
ルフェーヌはジョゼと共にディエゴが待つ舞踏場の扉の前へやってきた。
ルフェーヌは執事のオレリアンと共にルフェーヌを待つディエゴの姿を見つける。ディエゴはルフェーヌを婚約者として出迎えた時と同じ正装姿をしている。
ルフェーヌはディエゴにドレスを褒めてもらえたら嬉しいと思い、淡い期待を寄せて浮き立つ気持ちでやってきた。
「ディエゴ様、お待たせしました」
ルフェーヌは期待をしながらディエゴの顔を見上げていると、ディエゴはルフェーヌのドレス姿を一瞥して低く呟く。
「は? なんだそのドレスは」
ルフェーヌ本人は気に入っているが、ルフェーヌはアデルと一緒にいた時と同じように目立たない落ち着いた色のドレスを着ている。髪にはいつものシニヨンヘアに髪飾りが一つだけ控えめに付いている。
「お前は俺の婚約者という自覚はあるのか?」
ルフェーヌはディエゴの言葉に怒られた子犬のように眉を下げて下を向く。それを見たディエゴは初夜を逃げ出して謝罪をするルフェーヌの姿と重なる。
ディエゴはいきなりルフェーヌの手を引っ張り歩き出す。
「来い」
「あ、あのっ!」
ルフェーヌはディエゴに引っ張られて舞踏場から離れていく。
「殿下、お時間が迫っております」
「お前に任せる」
開始時間が迫っているためオレリアンが制止するのも構わず、ディエゴは一言だけ言うとルフェーヌを引っ張り舞踏場を離れていく。ジョゼは慌ててルフェーヌの後ろをついて行く。
ドレスルームではメイドたちがルフェーヌのドレスの準備が終わり、片付けをしている。
ディエゴは扉をノックをせずに勢いよく開け、ドレスを物色しだす。メイドたちは何が起こっているのか分からず驚いている。
ディエゴに連れて行かれるルフェーヌについてきたジョゼは驚いているメイドたちに事情を話す。
ルフェーヌはどうしていいか分からず、この光景を見ている事しかできない。
「これでいいだろ」
ディエゴは赤いドレスをルフェーヌへ投げ渡す。
「さっさとそれに着替えろ。メイドはルフェーヌの着替えを手伝え。侍女はこのドレスの色に合う靴と豪華なアクセサリーを選べ。先に舞踏場へ行っている。俺を待たせるな」
侍女とメイドは頭を下げ、侍女は靴とアクセサリーを選び直し、メイドはルフェーヌの着替えを再び手伝うために動き出す。
ルフェーヌは投げ渡されたドレスを広げる。
(素敵なドレス……!)
鮮やかな赤をしたフィアンマレッドのドレスは炎のような赤を連想させる。ドレスの生地には宝石のパイロープガーネットが細かく散りばめられている。
ルフェーヌはこのように華やかなドレスを着た事がなかった。華やかな色はいつもアデルが着ていた。本当は華やかで綺麗なドレスを着たかった。しかしアデルに「あたくしの方が似合うのだから、ドレスの色やデザインがあたくしと似たものにするのはやめてね」といつも言われていた。
少しでも可愛らしい、綺麗な色のドレスを選ぶといろいろ言われてしまっていた。次第に選ばなくなっていき目立たない色や昔からあるデザインのドレスを選ぶのが当たり前になってしまった。
ルフェーヌはフィアンマレッドのドレスに着替え、再びドレッサーの前に座る。メイドたちが手際よく準備を進めていく。
ドレッサーの鏡を眺めていると化粧も変わった。ドレスの色に合わせるように艶のある橙色が入った赤い口紅が塗られる。
ルフェーヌはジョゼが選んでくれたガーネットが付いたティアラとそれに合わせたイヤリングとネックスを付ける。
靴は黒っぽいヒールの低い靴から靴の中央に大粒のガーネットがひとつと、細かいガーネットを靴全体にあしらったハイヒールに履き替える。
どのガーネットもパイロープガーネットを使用している。真紅の宝石はルフェーヌの魅力を引き立て、美しく光り輝いている。
「わたし、こんなに着飾っていいのかしら」
鏡に映るルフェーヌは今まで見たことがない自分が映っている。ジョゼはルフェーヌの問いに笑顔で返してくれる。
「この赤い宝石のガーネットはパイロープガーネットと言って、この国の特産なんだよ。石言葉は忘れたけど、良い言葉だったよ」
「そうなのね。こんな素敵な宝石でできたアクセサリーを付けられて幸せだわ」
「ルフェーヌ様は謙虚だね。髪の毛、サラサラにしてあげるよ」
ジョゼはシニヨンヘアを解き、ルフェーヌの髪を手ぐしで梳かしていく。ジョゼは炎属性のため、温かい手の熱で髪を梳かすだけで美しくまとまる。
ルフェーヌは立ち上がり、姿見に自身を映す。先程とは違い、自身の婚約パーティーにふさわしい華やかなドレスを着たルフェーヌが立っている。
ルフェーヌは感激して瞳を潤ませる。
「ジョゼさん、皆さん。本当にありがとう!」
ルフェーヌは先程よりも嬉しそうな表情でジョゼとメイドに感謝する。
「ルフェーヌちゃん、舞踏場へ行こう。王太子殿下が待ってる」
ルフェーヌはジョゼと一緒に再び舞踏場へ向かう。
先程と同じ場所で苛立ちを耐えるように待っているディエゴはドレスを着替えたルフェーヌを見つめ、表情を緩める。
「先程とは別人だな。似合っている」
ルフェーヌはディエゴに穏やかな声で褒められ、表情を明るくして嬉しそうに照れる。ディエゴは周りにダイヤが装飾された大粒ガーネットのイヤリングを揺らして恥じらうルフェーヌの姿に瞳を細めて微笑む。ルフェーヌはディエゴの優しげな表情に気づかずに照れている。
「ドレスを選んでくださり、ありがとうございます。ディエゴ様はセンスが良いのですね。……わたしが最初に着ていたドレスではいけませんでしたか?」
ルフェーヌなりに良いと思ったドレスを選んだつもりだった。ルフェーヌはディエゴに理由を聞いてみた。
「よく考えろ。俺との婚約パーティーだぞ。お前が一番着飾らなくてどうするんだ。地味なドレスは別の機会で着ろ」
ルフェーヌは普段着ているドレスよりは可愛らしいものを選んだが、ディエゴは地味な色が気に入らなかった。
ルフェーヌが「別の機会ですか?」と聞き返すと、ディエゴは「お前があのようなドレスを気に入っているならば」と返した。
ルフェーヌはドレスの裾を持ち上げる。少し動かすだけでドレスが赤く光り、美しく輝いている。
「わたし、今まで綺麗な色のドレスを着る機会がなくて……。こういうドレス、着てみたかったのです!」
ルフェーヌはフィアンマレッドのドレスの裾を何度も動かし、ディエゴへ嬉しそうに笑う。
「このドレスを気に入ったのか?」
ルフェーヌはディエゴの問いに「はい!」と満面の笑顔で答える。
「ならば次も俺が選んでやる」
ディエゴは嬉しそうに、満足した得意げな表情を見せる。
「殿下、お時間がーー」
オレリアンがタイミングを見計らい、ディエゴへ声をかける。
「ああ、そうだな。お手をどうぞ、王女様。いや、俺の婚約者」
ルフェーヌはディエゴの手を取り、エスコートされながら一緒に舞踏場へ入場した。