妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています
9.魔法を使えないのに
 婚約パーティーが終わり、数日が経つ。今日も暑く、まだパイロープ国の気候に慣れないルフェーヌは連日続く夏のような暑さに参ってしまいそうだ。
 婚約パーティーで初日より打ち解けたルフェーヌとディエゴ。
 打ち解けたと思った二人だが、非日常な婚約パーティーから日常に戻り、パーティー前の距離感に戻ってしまった。
 ディエゴの執事、オレリアンの提案でルフェーヌとディエゴは毎食一緒に食事をとる事になった。
 パーティーが終わり、ルフェーヌとディエゴの何度目かの朝食。ルフェーヌとディエゴは一緒に食事をするが、会話がない。
 ルフェーヌはディエゴの様子をうかがいながら食事をしているが、ディエゴは何も気にせずに食事をしている。
 ルフェーヌはディエゴに話しかけようにも何と言って話しかけたら良いのか分からず、会話ができない。
 二人は無言のまま朝食をとっていると、ディエゴに高い音の耳鳴りが聞こえ始めて顔をしかめる。
 ディエゴは頭を押さえて「耳鳴りがする」と呟き、ルフェーヌはディエゴの呟きに過度に反応して食事の手を止める。
 ディエゴはルフェーヌと一緒に食事をとるようになってから毎回頭痛がするようになった。
 オレリアンが最近は特に多忙だからと言うが、ルフェーヌはディエゴが自分といて不快に思って無意識に苛立ってしまっていると思っている。
 ルフェーヌは自分のせいで相手を苛立たせてしまっている自分自身が嫌だった。
 次第にディエゴの耳鳴りが酷くなり、頭痛がしてくる。
 ディエゴは食事の手を止めて頭を押さえて、頭痛と耳鳴りに耐えている。オレリアンが声をかけるが、ディエゴは聞いていない。ルフェーヌはどうしたらよいか分からず、不安げにディエゴを見つめるしかできなかった。
 ディエゴの険しい表情が深くなり、苛立ちが激しくなる。ディエゴは勢いよく立ち上がり、その苛立ちをルフェーヌに向けてしまった。
 「俺に魔法を使うのはやめろ!」
 ディエゴは激しくなった頭痛と耳鳴りに苛立ってルフェーヌを怒鳴ってしまった。ディエゴは食事の途中で、そのまま出て行ってしまった。
 「……え? わたしが、魔法を?」
 ルフェーヌはディエゴに怒鳴られたのも驚いたが、魔法を使うのをやめろと言われてそれ以上に驚いて意味が分からなかった。
 魔法が使えないのに、何故そんな事を言われないといけないのだろう。
 ディエゴが何を言っているのか分からず、ルフェーヌは目を丸くして驚く事しかできなかった。
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