妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています
10.高い塔と日陰の石
数週間後、ディエゴの公務に同行する日がやってきた。今日は雲ひとつない青空で日差しが強く、朝から気温が高かった。
オレリアンはディエゴの蒸気車の運転をするため、一緒に向かう。ジョゼはルフェーヌの見送りに来ている。
ルフェーヌは紺色の装飾が少ない膝下のワンピースを着ている。靴は紺色のヒールの低いシンプルなものを履いている。
ディエゴは黒の膝上丈のテーラードジャケットとベストを着てネクタイをしている。ズボンもジャケットに合わせたテーラードパンツをはいている。どこにもシワがなく清潔感がある。
ルフェーヌとディエゴは蒸気車に乗って訪問先の孤児院へ向かおうとしているが、ディエゴは機嫌が悪い。
ディエゴはルフェーヌの三歩先を歩いている。ルフェーヌが早足で隣まで追いついてディエゴの顔を見上げると、機嫌が悪いというか拗ねている感じだ。
「ディエゴ様、どうして不機嫌なのですか?」
「いや、別に……」
ルフェーヌがたずねるが、ディエゴは言いたくなさそうにルフェーヌから視線を逸らして呟く。
「この公務が苦手なのですか?」
「そういう訳ではない」
ディエゴはルフェーヌに同行してほしいと言うくらいなので、この公務が苦手なのかと推測するが否定される。
ルフェーヌは理由が分からず不機嫌になっているディエゴが何を考えているのか分からないので困惑する。
「何故ーー」
ルフェーヌは話し始めるディエゴに耳を傾ける。
「なぜお前はいつも俺のそばにいないんだ」
なぜと言われても、ディエゴが何を言いたいのか真意が掴めない。
「さっき、石畳につまずいて執事に助けてもらっていただろ。お前が俺の横を歩いていたら俺が助けられたんだ」
ルフェーヌはつい先程の事を思い出す。
先を行くディエゴに追いつこうと足を速めたら石畳につまずいてしまった。そこをルフェーヌの後ろにいたオレリアンが助けてくれた。
(もしかして嫉妬しているのかな?)
「すみません。わたし、歩くのが遅いみたいで、ディエゴ様に追いつこうと思ったらつまずいてしまいました」
「ならば今後はお前の手を引いて歩くことにする」
ディエゴはルフェーヌへ手を差し出す。ルフェーヌはその手を取ると、ディエゴに引っ張られて蒸気車を背にしてディエゴに追い詰められていた。ディエゴに右腕で逃げ場を塞がれる。ディエゴとの距離が近くなり、ルフェーヌの鼓動が速くなる。ルフェーヌは突然の事で瞳をしばたきながら、ディエゴを見つめる。
「ええっ! 壁ドンならぬ車ドンじゃん! やばい……!」
見送りに来ているジョゼが興奮して自分の口を両手で塞ぐ。
「お前は俺の王太子妃、妻になるんだぞ自覚があるのか?」
ディエゴはルフェーヌへ顔を近づけながら問う。
「精一杯、お飾りを務めます」
ルフェーヌは頬を染めて声を落ち着かせて答える。
「そうではなくてーー。いや、いい。忘れてくれ」
ディエゴはルフェーヌから距離を空ける。本心を悟られるのはまだプライドが許さなくて忘れろと言ってごまかす。
そしてディエゴはルフェーヌに初夜を逃げられてしまった。どこまでならルフェーヌは許容してくれるのか分からず困惑する。
「ディエゴ様……」
ルフェーヌは荒い息を整えながら、ディエゴを見上げて頬を染め、上目遣いで言葉を紡ぐ。
「今のようにそばにいてください」
言い終えるとルフェーヌは顔を真っ赤にさせ、恥ずかしがって蒸気車へエスコートもなしに乗り込む。
なんて大胆な事を言ってしまったんだとルフェーヌは車内で恥ずかしがっている。
「か、かわいい……!」
ジョゼがルフェーヌの言動の可愛さに表情を緩める。ディエゴは緩みそうな表情を何とか引き締めている。
ディエゴが蒸気車に乗り込むと出発する。ディエゴはルフェーヌと二人きりの車内で距離を縮めるために隣に座り、戯れようと考える。
ディエゴは眉根を寄せ、顎に手を添えてルフェーヌを見下ろす。
「お前は結構大胆なんだな」
「ああっ! 言わないでください、恥ずかしい!」
ルフェーヌはディエゴの色香を含ませた声で指摘され、耳まで真っ赤になったリンゴのような顔を手で隠して慌てている。
「孤児院に到着するまで、こうしていてやろうか?」
ディエゴはルフェーヌの肩を抱き、身体を密着させてくる。
「ひゃあ! 恥ずかしいです……!」
車内は向かい合わせで計四人が乗れる作りになっている。向かい側の席に逃げないルフェーヌに気を良くしたディエゴはルフェーヌの耳元に唇を寄せる。
「ディエゴ様のそばにいられる事が幸せです。復唱しろ」
ディエゴはルフェーヌの耳元で囁くと、ルフェーヌは顔を真っ赤にして押し黙る。
「ほら、言わないと難易度が上がるぞ」
ルフェーヌの鼓動が速くなっていく。
「ディエゴ様に触れられる事が幸せです」
ディエゴはルフェーヌの肩をさらに抱き寄せる。ルフェーヌは激しい鼓動をディエゴに聞かれていたらと思うとさらに鼓動を速くする。
「ディエゴ様と夜のーー」
「ディエゴ様に触れられる事が幸せです!!」
ルフェーヌは耐えきれなくなり、ディエゴの言葉をかき消すようにハッキリと復唱する。ディエゴは自尊心が満たされた笑みを浮かべる。
「可愛いヤツだな」
ディエゴはルフェーヌの頭を撫でる。
「お前がそう言ったんだ、忘れるなよ」
ディエゴはもう一度ルフェーヌの耳元で囁く。
「はい」
ルフェーヌは疲労感を含ませたため息をはく。それを見てディエゴは面白そうに微笑みながらルフェーヌの頭を撫でている。
ルフェーヌはからかわれたのかと思い少し悔しくなるが、破裂しそうなほどの甘美な鼓動がかき消している。
復唱した手前、撫でられるのが恥ずかしいと言えないルフェーヌは優しくあたたかい手にしばらく頭を撫でられていた。
オレリアンはディエゴの蒸気車の運転をするため、一緒に向かう。ジョゼはルフェーヌの見送りに来ている。
ルフェーヌは紺色の装飾が少ない膝下のワンピースを着ている。靴は紺色のヒールの低いシンプルなものを履いている。
ディエゴは黒の膝上丈のテーラードジャケットとベストを着てネクタイをしている。ズボンもジャケットに合わせたテーラードパンツをはいている。どこにもシワがなく清潔感がある。
ルフェーヌとディエゴは蒸気車に乗って訪問先の孤児院へ向かおうとしているが、ディエゴは機嫌が悪い。
ディエゴはルフェーヌの三歩先を歩いている。ルフェーヌが早足で隣まで追いついてディエゴの顔を見上げると、機嫌が悪いというか拗ねている感じだ。
「ディエゴ様、どうして不機嫌なのですか?」
「いや、別に……」
ルフェーヌがたずねるが、ディエゴは言いたくなさそうにルフェーヌから視線を逸らして呟く。
「この公務が苦手なのですか?」
「そういう訳ではない」
ディエゴはルフェーヌに同行してほしいと言うくらいなので、この公務が苦手なのかと推測するが否定される。
ルフェーヌは理由が分からず不機嫌になっているディエゴが何を考えているのか分からないので困惑する。
「何故ーー」
ルフェーヌは話し始めるディエゴに耳を傾ける。
「なぜお前はいつも俺のそばにいないんだ」
なぜと言われても、ディエゴが何を言いたいのか真意が掴めない。
「さっき、石畳につまずいて執事に助けてもらっていただろ。お前が俺の横を歩いていたら俺が助けられたんだ」
ルフェーヌはつい先程の事を思い出す。
先を行くディエゴに追いつこうと足を速めたら石畳につまずいてしまった。そこをルフェーヌの後ろにいたオレリアンが助けてくれた。
(もしかして嫉妬しているのかな?)
「すみません。わたし、歩くのが遅いみたいで、ディエゴ様に追いつこうと思ったらつまずいてしまいました」
「ならば今後はお前の手を引いて歩くことにする」
ディエゴはルフェーヌへ手を差し出す。ルフェーヌはその手を取ると、ディエゴに引っ張られて蒸気車を背にしてディエゴに追い詰められていた。ディエゴに右腕で逃げ場を塞がれる。ディエゴとの距離が近くなり、ルフェーヌの鼓動が速くなる。ルフェーヌは突然の事で瞳をしばたきながら、ディエゴを見つめる。
「ええっ! 壁ドンならぬ車ドンじゃん! やばい……!」
見送りに来ているジョゼが興奮して自分の口を両手で塞ぐ。
「お前は俺の王太子妃、妻になるんだぞ自覚があるのか?」
ディエゴはルフェーヌへ顔を近づけながら問う。
「精一杯、お飾りを務めます」
ルフェーヌは頬を染めて声を落ち着かせて答える。
「そうではなくてーー。いや、いい。忘れてくれ」
ディエゴはルフェーヌから距離を空ける。本心を悟られるのはまだプライドが許さなくて忘れろと言ってごまかす。
そしてディエゴはルフェーヌに初夜を逃げられてしまった。どこまでならルフェーヌは許容してくれるのか分からず困惑する。
「ディエゴ様……」
ルフェーヌは荒い息を整えながら、ディエゴを見上げて頬を染め、上目遣いで言葉を紡ぐ。
「今のようにそばにいてください」
言い終えるとルフェーヌは顔を真っ赤にさせ、恥ずかしがって蒸気車へエスコートもなしに乗り込む。
なんて大胆な事を言ってしまったんだとルフェーヌは車内で恥ずかしがっている。
「か、かわいい……!」
ジョゼがルフェーヌの言動の可愛さに表情を緩める。ディエゴは緩みそうな表情を何とか引き締めている。
ディエゴが蒸気車に乗り込むと出発する。ディエゴはルフェーヌと二人きりの車内で距離を縮めるために隣に座り、戯れようと考える。
ディエゴは眉根を寄せ、顎に手を添えてルフェーヌを見下ろす。
「お前は結構大胆なんだな」
「ああっ! 言わないでください、恥ずかしい!」
ルフェーヌはディエゴの色香を含ませた声で指摘され、耳まで真っ赤になったリンゴのような顔を手で隠して慌てている。
「孤児院に到着するまで、こうしていてやろうか?」
ディエゴはルフェーヌの肩を抱き、身体を密着させてくる。
「ひゃあ! 恥ずかしいです……!」
車内は向かい合わせで計四人が乗れる作りになっている。向かい側の席に逃げないルフェーヌに気を良くしたディエゴはルフェーヌの耳元に唇を寄せる。
「ディエゴ様のそばにいられる事が幸せです。復唱しろ」
ディエゴはルフェーヌの耳元で囁くと、ルフェーヌは顔を真っ赤にして押し黙る。
「ほら、言わないと難易度が上がるぞ」
ルフェーヌの鼓動が速くなっていく。
「ディエゴ様に触れられる事が幸せです」
ディエゴはルフェーヌの肩をさらに抱き寄せる。ルフェーヌは激しい鼓動をディエゴに聞かれていたらと思うとさらに鼓動を速くする。
「ディエゴ様と夜のーー」
「ディエゴ様に触れられる事が幸せです!!」
ルフェーヌは耐えきれなくなり、ディエゴの言葉をかき消すようにハッキリと復唱する。ディエゴは自尊心が満たされた笑みを浮かべる。
「可愛いヤツだな」
ディエゴはルフェーヌの頭を撫でる。
「お前がそう言ったんだ、忘れるなよ」
ディエゴはもう一度ルフェーヌの耳元で囁く。
「はい」
ルフェーヌは疲労感を含ませたため息をはく。それを見てディエゴは面白そうに微笑みながらルフェーヌの頭を撫でている。
ルフェーヌはからかわれたのかと思い少し悔しくなるが、破裂しそうなほどの甘美な鼓動がかき消している。
復唱した手前、撫でられるのが恥ずかしいと言えないルフェーヌは優しくあたたかい手にしばらく頭を撫でられていた。