妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています
20.ファータを手に入れるために
ディエゴと舞踏場で過ごして数日が経った。
ルフェーヌは結婚式の準備の合間に舞踏場へ行ってディエゴから出された宿題を仕上げている。宿題とは先日ディエゴへ奏でた旋律を楽譜に起こす作業だ。ルフェーヌはピアノを弾きながら鉛筆で音符を楽譜に書き込んでいく。
「ふう……」
ルフェーヌは小さく息をはく。今日のディエゴの様子を思い出していた。ディエゴは舞踏場でルフェーヌのピアノと歌を聴いてから、ルフェーヌとの距離がさらに近くなった。
ディエゴはルフェーヌと歩く時はピッタリと横に並び、肩を抱き寄せている。
食事の時も一緒に魔法の練習をしている時もいつもより見られているように感じる。ルフェーヌはディエゴの視線が嫌ではないが見られすぎて照れてしまう。
二人きりの時は色香を含ませた甘い声でルフェーヌを可愛い妖精と呼び、甘い言葉を囁いている。
ディエゴに聞けばファータとはルフェーヌの事だった。何故たずねた時に教えてくれなったのかと思うが、可愛いと言われ頭を撫でられると追求できなくなる。
最初の頃に比べ、ディエゴは笑顔が多く機嫌が良い。ディエゴが言うにはルフェーヌ自身とルフェーヌの歌とピアノに癒されているようだ。
最近はルフェーヌといる時は苛立つ事がなくなり、苛立ちを対処するために服用していた魔法薬はもう飲んでいないという。
ディエゴが笑顔でいるとルフェーヌも嬉しい気持ちになる。
ルフェーヌの楽譜に書き込む手が進んでいく。ディエゴの事を考えていると勝手に手が動いていく。
「できたわ」
ルフェーヌは楽譜に書き起こす作業が終わった。書き上がった楽譜を手に取り、嬉しそうに眺める。ディエゴへの気持ちが詰まった、ルフェーヌの恋の楽譜。渡すのは照れて恥ずかしいが、受け取って欲しいと思い大切に抱える。
ディエゴは外出しているため、明日渡そうとルフェーヌは部屋へと歩き出す。
ルフェーヌはもう一度抱えている楽譜を見つめる。こんな恋文のような楽譜をディエゴへ渡していいのだろうか。楽譜に書き起こす事を宿題と言われたのだからディエゴに渡して良いはず、とルフェーヌは自分を勇気づける。
ルフェーヌはたまに自分がお飾りという事を忘れる。ルフェーヌの感情の蓋はもう少しで開きそうになっている。まだ開いていないため、自信のなさが顔を出してしまう。
ルフェーヌは舞踏場から移動して自分の部屋がある廊下を歩いていると、ディエゴの執事、オレリアンと出会う。
「ルフェーヌ様、失礼致します。こちらにいらっしゃいましたか」
オレリアンはルフェーヌの姿を見て表情を緩める。いつも表情に出ないオレリアンにしては珍しい。ルフェーヌはオレリアンの緩んだ表情を見て、気が緩む。
「オレリアンさん、ごきげんよう。わたしに何か用かしら?」
「僭越ながらルフェーヌ様はまだ殿下について何か気になる事がおありかと思いまして、こちらをお持ち致しました」
オレリアンは紙のファイルをルフェーヌへ渡す。ファイルには表題が書かれていない。ルフェーヌはこのファイルは何かとオレリアンに質問すると、意外な言葉が返ってきた。
「書院課から借りてきた極秘書類です。殿下がルフェーヌ様を自分の王太子妃にするためにした事が書かれています。自室でお一人の時にお読みください」
ルフェーヌは息を飲み、目を丸くしてオレリアンの言葉を繰り返す。
「ディエゴ様がわたしを王太子妃にするためにした事ーー」
ルフェーヌはファイルを見つめ、何も考えられなくなった。そんな事を考えたもしなかった。ルフェーヌはオレリアンからファイルを受け取り、見つめる。
「これを読めば殿下のお気持ちが伝わるはずです。私が言うことではありませんが、本気ではない女性にここまで致しません。というか、無理です」
「殿下のお気持ちがルフェーヌ様へ伝わると信じてこれを渡します。ルフェーヌ様を信じています」
オレリアンはルフェーヌにお辞儀をしてその場を離れた。
ルフェーヌはファイルを楽譜の上に重ねて持ち、自分の部屋へ入る。
陽が傾いて暗くなってきた。暗くなる前に読み終わろうとルフェーヌはデスクに向かい、ファイルを読み始める。
ルフェーヌは結婚式の準備の合間に舞踏場へ行ってディエゴから出された宿題を仕上げている。宿題とは先日ディエゴへ奏でた旋律を楽譜に起こす作業だ。ルフェーヌはピアノを弾きながら鉛筆で音符を楽譜に書き込んでいく。
「ふう……」
ルフェーヌは小さく息をはく。今日のディエゴの様子を思い出していた。ディエゴは舞踏場でルフェーヌのピアノと歌を聴いてから、ルフェーヌとの距離がさらに近くなった。
ディエゴはルフェーヌと歩く時はピッタリと横に並び、肩を抱き寄せている。
食事の時も一緒に魔法の練習をしている時もいつもより見られているように感じる。ルフェーヌはディエゴの視線が嫌ではないが見られすぎて照れてしまう。
二人きりの時は色香を含ませた甘い声でルフェーヌを可愛い妖精と呼び、甘い言葉を囁いている。
ディエゴに聞けばファータとはルフェーヌの事だった。何故たずねた時に教えてくれなったのかと思うが、可愛いと言われ頭を撫でられると追求できなくなる。
最初の頃に比べ、ディエゴは笑顔が多く機嫌が良い。ディエゴが言うにはルフェーヌ自身とルフェーヌの歌とピアノに癒されているようだ。
最近はルフェーヌといる時は苛立つ事がなくなり、苛立ちを対処するために服用していた魔法薬はもう飲んでいないという。
ディエゴが笑顔でいるとルフェーヌも嬉しい気持ちになる。
ルフェーヌの楽譜に書き込む手が進んでいく。ディエゴの事を考えていると勝手に手が動いていく。
「できたわ」
ルフェーヌは楽譜に書き起こす作業が終わった。書き上がった楽譜を手に取り、嬉しそうに眺める。ディエゴへの気持ちが詰まった、ルフェーヌの恋の楽譜。渡すのは照れて恥ずかしいが、受け取って欲しいと思い大切に抱える。
ディエゴは外出しているため、明日渡そうとルフェーヌは部屋へと歩き出す。
ルフェーヌはもう一度抱えている楽譜を見つめる。こんな恋文のような楽譜をディエゴへ渡していいのだろうか。楽譜に書き起こす事を宿題と言われたのだからディエゴに渡して良いはず、とルフェーヌは自分を勇気づける。
ルフェーヌはたまに自分がお飾りという事を忘れる。ルフェーヌの感情の蓋はもう少しで開きそうになっている。まだ開いていないため、自信のなさが顔を出してしまう。
ルフェーヌは舞踏場から移動して自分の部屋がある廊下を歩いていると、ディエゴの執事、オレリアンと出会う。
「ルフェーヌ様、失礼致します。こちらにいらっしゃいましたか」
オレリアンはルフェーヌの姿を見て表情を緩める。いつも表情に出ないオレリアンにしては珍しい。ルフェーヌはオレリアンの緩んだ表情を見て、気が緩む。
「オレリアンさん、ごきげんよう。わたしに何か用かしら?」
「僭越ながらルフェーヌ様はまだ殿下について何か気になる事がおありかと思いまして、こちらをお持ち致しました」
オレリアンは紙のファイルをルフェーヌへ渡す。ファイルには表題が書かれていない。ルフェーヌはこのファイルは何かとオレリアンに質問すると、意外な言葉が返ってきた。
「書院課から借りてきた極秘書類です。殿下がルフェーヌ様を自分の王太子妃にするためにした事が書かれています。自室でお一人の時にお読みください」
ルフェーヌは息を飲み、目を丸くしてオレリアンの言葉を繰り返す。
「ディエゴ様がわたしを王太子妃にするためにした事ーー」
ルフェーヌはファイルを見つめ、何も考えられなくなった。そんな事を考えたもしなかった。ルフェーヌはオレリアンからファイルを受け取り、見つめる。
「これを読めば殿下のお気持ちが伝わるはずです。私が言うことではありませんが、本気ではない女性にここまで致しません。というか、無理です」
「殿下のお気持ちがルフェーヌ様へ伝わると信じてこれを渡します。ルフェーヌ様を信じています」
オレリアンはルフェーヌにお辞儀をしてその場を離れた。
ルフェーヌはファイルを楽譜の上に重ねて持ち、自分の部屋へ入る。
陽が傾いて暗くなってきた。暗くなる前に読み終わろうとルフェーヌはデスクに向かい、ファイルを読み始める。