妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています
23.インフェルノに恋い焦がれ(後編)
ルフェーヌは山火事のことを全て思い出した。自分を炎の海から助けてくれたのはディエゴだった。
ルフェーヌはに山火事に遭ってからはしばらく火が怖かったが、年齢を重ねるごとに恐怖心は少しずつ消えていった。今ならルフェーヌの心の中に残る恐怖心をインフェルノが鎮火させてくれたと思える。
ルフェーヌは身体に残ったあたたかい残り火も忘れていってしまった。手に入れられないあたたかさを求めるのはルフェーヌにとって辛い事だった。
ルフェーヌは隣に身体を寄せているディエゴを見上げる。
「ディエゴ様がわたしを助けてくれたインフェルノ」
自分を炎の中から助けてくれた少年。自分をインフェルノと言っていた少年はディエゴだった。
「思い出したのか?」
ルフェーヌは静かに頷くと、たき火の炎に手の伸ばして触れる。ディエゴは目を見開いて驚くが、止めなかった。
ディエゴの炎はディエゴが燃やしたいものを燃やせる。ディエゴの炎でルフェーヌは燃えない。ディエゴは以前ルフェーヌへ伝えたのを覚えているが、炎に直接手を入れるとは思わなかった。
「あたたかいわ。このぬくもり知ってる。じんわりとあたたかく、何事からも守ってくれるような、抱きしめられているようなあたたかさ。これがディエゴ様なのね」
ルフェーヌは山火事でディエゴに助けられてお姫様抱っこされている時のあたたかさと繋がる。
ディエゴの炎は普段は全てのものを燃やしてしまいそうな強く勢いのある炎をしている。しかし穏やかな気持ちでいられるルフェーヌと一緒にいる今は炎も穏やかに燃えている。
「たき火としての熱を感じるのに、触るとディエゴ様のぬくもりを感じるなんて不思議ね」
ルフェーヌはたき火から手を離し、確認する。ルフェーヌの色白の美しい手は火傷も赤くもなっていない。
「ルフェーヌ……」
ディエゴは感嘆な声でルフェーヌを呼ぶ。
今まで誰もディエゴの炎に触れようとしなかった。山火事に遭い、怖い思いをしたルフェーヌがディエゴの炎を手で触れた。
ディエゴはルフェーヌのその行動に心を打たれる。炎属性の炎はその人自身だからだ。ディエゴはルフェーヌに全てを受け入れられたように感じる。
ディエゴはルフェーヌの事が愛おしくて堪らなくなった。
ルフェーヌはずっと気になっていた事をディエゴへ質問する。
「ディエゴ様に聞きたい事があるの。政略結婚の時の条件で”お飾り”とあったでしょう。それって、本当に何もしなくていい、お飾りの意味なの?」
ディエゴは国王である父と決闘をしてまで、どうしてルフェーヌを自分の王太子妃にしたかったのだろう。
「その事か。ルフェーヌと正式に婚約の約束をしている訳ではなかっただろう。俺がそのまま婚約者をルフェーヌに指名したらどうなるか分かるか?」
ルフェーヌは目線を上にして想像すると、一番にアデルが思い浮かぶ。ルフェーヌは「何であたくしじゃなくて、お姉様なのよ!」と暴れているアデルが容易に想像できた。
「アデルが……」
ルフェーヌは顔をしかめてアデルの名前を口にする。
「一番がそれが理由だ」
「他にも理由があるのですか?」
ルフェーヌに問われ、ディエゴは全てを話す事にした。
「お飾りという意味は俺の素直じゃない心の表れでもあった。俺は一人で国を治めようとしていた。しかしその考えはルフェーヌと過ごしていくうちに変わった。お前のような女は初めてだった。苛立っていたのもあったが接し方が分からず、はじめは周りと同じように接してしまった。それによってルフェーヌを困らせ傷つけていた事に気づいた」
ディエゴはルフェーヌが自分のせいで困り、傷ついている事に向き合うのをどうすればよいか分からなかった。そのように思えたのはルフェーヌが初めてだったからだ。
「お飾りの事やはじめの頃の態度を謝罪する」
ディエゴはルフェーヌに頭を下げる。ルフェーヌはディエゴの手に自身の手を重ねる。
「ディエゴ様のお気持ちが分かったので、もう大丈夫です。わたしこそ、何も覚えていなくて気づきもしなくて……。ごめんなさい」
ルフェーヌがこの国に来て初めてディエゴに感じた印象は気難しいを通り越して怖いだった。
ルフェーヌはディエゴと一緒に過ごすうちにどれだけ自分の事を想ってくれている事を知った。ディエゴの素直じゃない不器用な愛情はルフェーヌに伝わっていた。
ディエゴは「ありがとう」とルフェーヌへ伝え、ルフェーヌの手を包む。
「ルフェーヌはいま俺がどんな気持ちか分かるか?」
ディエゴはいろいろ話してくれたが、いまどんな気持ちと問われてルフェーヌは困惑する。
「ごめんなさい、分からないわ」
ルフェーヌは申し訳なさそうな表情をする。
「教えてやってもいいが、ルフェーヌの気持ちを教えてくれたら話してやる」
ディエゴはルフェーヌの頬に優しく触れて瞳を見つめる。頬からディエゴの体温が伝わってくる。
「わたしの気持ち?」
ルフェーヌはディエゴと視線を合わせ、見つめ合う。ディエゴのたき火の明かりでディエゴの瞳が揺らめいている。ルフェーヌはその炎をずっと見ていたいと思う。
「俺のこと、どう思う?」
「……言っていいの?」
本心を言う勇気を持てず、もう一度たずねる。
「早く言え」
ディエゴに至近距離で見つめられ、観念したルフェーヌは本心を言う決意をする。
「ディエゴ様のこと、す……。んっ……!」
ルフェーヌはディエゴの事が好きと言い終わる前にディエゴに唇で口を塞がれる。
初めての感触、初めての感情。ルフェーヌはディエゴを見つめている。
「俺はルフェーヌが好きだ」
「私もディエゴ様が好き」
もう一度、重なる唇は離れる事を知らず何度も重なる。
満点の星空と七色の火の粉が舞う幻想的な夜空の下、たき火の炎が二人を照らしている。
ルフェーヌはに山火事に遭ってからはしばらく火が怖かったが、年齢を重ねるごとに恐怖心は少しずつ消えていった。今ならルフェーヌの心の中に残る恐怖心をインフェルノが鎮火させてくれたと思える。
ルフェーヌは身体に残ったあたたかい残り火も忘れていってしまった。手に入れられないあたたかさを求めるのはルフェーヌにとって辛い事だった。
ルフェーヌは隣に身体を寄せているディエゴを見上げる。
「ディエゴ様がわたしを助けてくれたインフェルノ」
自分を炎の中から助けてくれた少年。自分をインフェルノと言っていた少年はディエゴだった。
「思い出したのか?」
ルフェーヌは静かに頷くと、たき火の炎に手の伸ばして触れる。ディエゴは目を見開いて驚くが、止めなかった。
ディエゴの炎はディエゴが燃やしたいものを燃やせる。ディエゴの炎でルフェーヌは燃えない。ディエゴは以前ルフェーヌへ伝えたのを覚えているが、炎に直接手を入れるとは思わなかった。
「あたたかいわ。このぬくもり知ってる。じんわりとあたたかく、何事からも守ってくれるような、抱きしめられているようなあたたかさ。これがディエゴ様なのね」
ルフェーヌは山火事でディエゴに助けられてお姫様抱っこされている時のあたたかさと繋がる。
ディエゴの炎は普段は全てのものを燃やしてしまいそうな強く勢いのある炎をしている。しかし穏やかな気持ちでいられるルフェーヌと一緒にいる今は炎も穏やかに燃えている。
「たき火としての熱を感じるのに、触るとディエゴ様のぬくもりを感じるなんて不思議ね」
ルフェーヌはたき火から手を離し、確認する。ルフェーヌの色白の美しい手は火傷も赤くもなっていない。
「ルフェーヌ……」
ディエゴは感嘆な声でルフェーヌを呼ぶ。
今まで誰もディエゴの炎に触れようとしなかった。山火事に遭い、怖い思いをしたルフェーヌがディエゴの炎を手で触れた。
ディエゴはルフェーヌのその行動に心を打たれる。炎属性の炎はその人自身だからだ。ディエゴはルフェーヌに全てを受け入れられたように感じる。
ディエゴはルフェーヌの事が愛おしくて堪らなくなった。
ルフェーヌはずっと気になっていた事をディエゴへ質問する。
「ディエゴ様に聞きたい事があるの。政略結婚の時の条件で”お飾り”とあったでしょう。それって、本当に何もしなくていい、お飾りの意味なの?」
ディエゴは国王である父と決闘をしてまで、どうしてルフェーヌを自分の王太子妃にしたかったのだろう。
「その事か。ルフェーヌと正式に婚約の約束をしている訳ではなかっただろう。俺がそのまま婚約者をルフェーヌに指名したらどうなるか分かるか?」
ルフェーヌは目線を上にして想像すると、一番にアデルが思い浮かぶ。ルフェーヌは「何であたくしじゃなくて、お姉様なのよ!」と暴れているアデルが容易に想像できた。
「アデルが……」
ルフェーヌは顔をしかめてアデルの名前を口にする。
「一番がそれが理由だ」
「他にも理由があるのですか?」
ルフェーヌに問われ、ディエゴは全てを話す事にした。
「お飾りという意味は俺の素直じゃない心の表れでもあった。俺は一人で国を治めようとしていた。しかしその考えはルフェーヌと過ごしていくうちに変わった。お前のような女は初めてだった。苛立っていたのもあったが接し方が分からず、はじめは周りと同じように接してしまった。それによってルフェーヌを困らせ傷つけていた事に気づいた」
ディエゴはルフェーヌが自分のせいで困り、傷ついている事に向き合うのをどうすればよいか分からなかった。そのように思えたのはルフェーヌが初めてだったからだ。
「お飾りの事やはじめの頃の態度を謝罪する」
ディエゴはルフェーヌに頭を下げる。ルフェーヌはディエゴの手に自身の手を重ねる。
「ディエゴ様のお気持ちが分かったので、もう大丈夫です。わたしこそ、何も覚えていなくて気づきもしなくて……。ごめんなさい」
ルフェーヌがこの国に来て初めてディエゴに感じた印象は気難しいを通り越して怖いだった。
ルフェーヌはディエゴと一緒に過ごすうちにどれだけ自分の事を想ってくれている事を知った。ディエゴの素直じゃない不器用な愛情はルフェーヌに伝わっていた。
ディエゴは「ありがとう」とルフェーヌへ伝え、ルフェーヌの手を包む。
「ルフェーヌはいま俺がどんな気持ちか分かるか?」
ディエゴはいろいろ話してくれたが、いまどんな気持ちと問われてルフェーヌは困惑する。
「ごめんなさい、分からないわ」
ルフェーヌは申し訳なさそうな表情をする。
「教えてやってもいいが、ルフェーヌの気持ちを教えてくれたら話してやる」
ディエゴはルフェーヌの頬に優しく触れて瞳を見つめる。頬からディエゴの体温が伝わってくる。
「わたしの気持ち?」
ルフェーヌはディエゴと視線を合わせ、見つめ合う。ディエゴのたき火の明かりでディエゴの瞳が揺らめいている。ルフェーヌはその炎をずっと見ていたいと思う。
「俺のこと、どう思う?」
「……言っていいの?」
本心を言う勇気を持てず、もう一度たずねる。
「早く言え」
ディエゴに至近距離で見つめられ、観念したルフェーヌは本心を言う決意をする。
「ディエゴ様のこと、す……。んっ……!」
ルフェーヌはディエゴの事が好きと言い終わる前にディエゴに唇で口を塞がれる。
初めての感触、初めての感情。ルフェーヌはディエゴを見つめている。
「俺はルフェーヌが好きだ」
「私もディエゴ様が好き」
もう一度、重なる唇は離れる事を知らず何度も重なる。
満点の星空と七色の火の粉が舞う幻想的な夜空の下、たき火の炎が二人を照らしている。