妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています

24.想定外の良縁

　残暑が落ち着いてきたスフェーン国だが、今日も風が吹いていない。アデルは部屋でスフェーン国の広報紙に書かれている自身の記事に目を通しながら優雅に午後の時間を楽しんでいる。
　アデルは紅茶を飲みながら自身が大きく取り上げられている記事に満足そうな笑みを浮かべる。
　そこへアデルの侍女が手紙を届けに来た。封筒はパイロープ国の王室で使用されているものだ。アデルは手紙を受け取り、差出人の名前を確認する。
　「あら、お姉様からだわ」
　先日出した手紙の返事だろうか。アデルは自分が送った手紙への泣き言でも書いてあると思い、一人で高笑いして読もうと侍女へデスクへ置くように伝えて午後のひとときを楽しんだ。

　＊＊＊

　アデルは一日を終えて部屋へ戻るとデスクに置かれた手紙に気づく。アデルは侍女が昼間に手紙を持ってきた事を思い出す。アデルは封を開けてルフェーヌからの手紙を読み始める。

　『アデルへ。手紙をくれてありがとう。パイロープ国は暑い日が多いけれど、少しだけ慣れてきました。まだ慣れない事ばかりで大変ですが、充実した日々を送っています』

　アデルにとって気に留めない事が書かれていたが、手紙を読み進めると表情を険していく。

　『ディエゴ王太子殿下はとても素敵な方です。ディエゴ王太子殿下はわたしの知らなかった景色をたくさん見せてくれます。アデルがディエゴ王太子殿下との結婚を勧めてくれたから、今とても幸せよ。アデルに感謝しています。ありがとう』

　アデルは表情を凍り付かせた。ルフェーヌが王太子妃として幸せそうに笑っている顔が目に浮かぶ。。アデルはルフェーヌの知らなかった景色を王太子妃として見ている景色として解釈した。
　「そんな幸せ、許さないわ」
　アデルは手紙を丸めて床に叩きつけると部屋を出て行った。