妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています
25.風の国の王女
 季節は秋になり、暑さが落ち落ち着いて陽が落ちるのが早くなってきた。しかしルフェーヌがいたスフェーン国と比べるとまだ夏のように暑い。
 ルフェーヌの元へアデルから再び手紙が届いた。ルフェーヌは先に一人で手紙を読んだが、どうしたら良いか分からずディエゴに手紙を見せる。
 その内容はスフェーン国で風が弱まっているため、アルカイオスをおとずれるようだ。アデルは精霊を信じていないので、風の精霊へ願う時に精霊を信じているルフェーヌにも手伝ってほしいと言う内容だ。
 手紙の最後には「王太子殿下に先日の式典での失礼をお詫びしたいので、お会いしたい」と綴られている。
 ディエゴは手紙を読み終え、それをルフェーヌへ返す。
 「行かなくていいだろ、こんなの。ルフェーヌはもうこの国の人間だ」
 ルフェーヌとディエゴの結婚式はあと一ヶ月ほどで行われる。ディエゴはそう言ってくれるが、ルフェーヌは迷う。
 「でも国民のみんなは困っているみたいだし……」
 国際新聞ではスフェーン国は深刻な風不足と取り上げられていた。
 「お前の国の事情だ。ルフェーヌが決めろ」
 ルフェーヌは考える。アデルに会うのが苦痛に思う気持ちと、アデルへ協力して国民を助けたい気持ちがある。
 ルフェーヌは悩み、結論を出す。
 「わたし、アデルに協力します。正直、アデルに会うのは気が進まないけれど、ディエゴ様に風魔法を教えてもらってできるようになったから少しでも国民のみんなの役に立ちたいわ」
 精霊に願う時、魔法の力を使って精霊を呼び出して願うとされている。ディエゴはルフェーヌの意見を尊重して頷く。
 「ルフェーヌが魔法を使えないと思っているあの女を驚かす良い機会かもな。俺も一緒に行く」
 ディエゴはアデルを信用しておらず、ルフェーヌに何かあったら困ると思い、一緒に行くことにする。
 「今度の十二日にアルカイオスを訪れると書いてあるの。それまでにもっと風魔法を使えるように練習するわ」
 「ならこれから一緒に練習に行くか」
 「ありがとう! ディエゴ様。わたし、風魔法で飛べるようになるかしら?」
 「俺が見ててやるから練習頑張れよ」
 「はい! ディエゴ様も青い炎(エージェオフォティア)を出せるようになれるといいですね」
 ルフェーヌは通常の風魔法と共に風魔法の高難易度魔法である浮遊風(メテオラアネモス)で空を飛びたくてずっと練習している。
 音魔法も練習を積み、多少精神面が乱れても相手へ頭痛や耳鳴りを起こさせないくらいに制御できるようになった。
 ルフェーヌはディエゴのように強くなれたらと思い、練習を積み重ねている。ルフェーヌは着替えを済ませ、魔法の練習のためにディエゴと一緒に闘技場へ向かった。
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