妹に虐げられて魔法が使えない無能王女は、政略結婚でお飾り王太子妃になるはずなのに俺様王太子に溺愛されています
4.政略結婚の申し出
式典から一ヶ月半ほどが経った。今日は爽やかな風が吹き、太陽は高い位置で輝いて雲ひとつない清々しい天気をしている。
その風が届けるように、ディエゴの風の便りが本当にやってきた。
ディエゴが婚約者を決めたという、スフェーン国、世界中にに広まっているその噂は真実となった。
婚約した、その相手はーー。
ディエゴが婚約したのはスフェーン国の王女だ。それを聞いたアデルははしゃいでいる。
その事で話があるため、ルフェーヌとアデルはジスランの執事に呼ばれ執務室へ向かう。
アデルは廊下を歩きながらはしゃいでいる。
「ついにあたくしが強国パイロープの王太子妃になるのね!」
アデルは自分が強国の王太子妃になった姿を想像している。想像の中のアデルは強国王太子妃として華々しく人々の前に立ち、羨望の眼差しで注目されている。
ジスランの執務室前に着くと、執事が扉をノックをしてルフェーヌとアデルを連れてきた事をジスランへ伝える。
ジスランはルフェーヌたちを執務室へ通すように言うと、アデルは入るなりジスランへ婚約の事をたずねる。
「お父様! パイロープ国から縁談の話が来たと言うのは本当ですの?」
「ああ、そうだよ。政略結婚なんだが、よく知っているねぇ。私も本当に嬉しいよ」
ジスランが頷き伝えると、アデルは嬉しそうにはしゃぐ。
「嬉しいわ! ディエゴ王太子殿下。あんなつれない態度でしたけれど、あたくしの事が忘れられなかったのね。強国、パイロープ国の王太子妃はあたくしが一番相応しいわよね、お父様! あたくしの名前が書かれていることを早く言って!」
アデルは自分の名前が書いてある事を信じて疑わない。
ルフェーヌの感情は悲しさだけを残し、どこかへ消えてしまった。式典でのディエゴとの会話は何だったのだろうか。からかわれただけなのだろうか。悲しさがこみ上げてくる。
「それなんだが……。アデル、条件が書かれているから、落ち着いて聞いてくれるかい?」
ジスランは気まずそうに政略結婚の条件を読み上げる。
政略結婚の条件として、王太子妃として夫になる王太子を立て、敬う事を徹底するようにと書類に記載されている。
いわゆる「お飾り王太子妃」としてスフェーン国の王女姉妹のどちらかにこの政略結婚を承諾してほしいとの事だ。
「お父様、いま何とおっしゃいましたの?」
はしゃいでいたアデルは疑念の声でジスランへ聞き返す。
「なんて言うか、そのーー。簡単に言えば”お飾り王太子妃”かなぁ」
ジスランは言いにくそうにアデルから視線を逸らして核心を伝える。
「お飾りですって?」
アデルは興奮して語尾と眉をつり上げる。
「いいじゃないか、難しい事は王太子殿下にお任せすればいい」
ジスランはなだめるように言うが、アデルの興奮はおさまらない。
「お父様、冗談はおよしになって。あたくしがお飾りで済むわけがないわ。あたくしはどこへ行っても話題の中心で注目の的よ」
「ああ、分かっているよ。アデルは王太子殿下の横に立っていても皆が注目するよ」
「それが嫌と言っているのよ。横で立っているだけだなんて、あたくしは王太子殿下の臣下じゃないわ!」
アデルは怒りに任せて自分で言った言葉を気にとめる。
「臣下、お飾りーー。良い言葉ね」
アデルは何かを思いついたように含みのある笑みを浮かべる。嫌な予感がする。ルフェーヌは次に言われる言葉を予感する。
アデルはルフェーヌへ視線を動かすと口角を上げる。
「お飾りだったらお姉様が適任だと思うわ」
ルフェーヌは息を飲んだ。言われると思っていたが、名指しをされて鼓動を大きく弾ませる。
お飾りーー。
何もしなくてよいという意味に納得し、悲観する。蓋をしていた感情が溢れてしまいそうだ。
「お姉様に来るお話でこんなに条件が良い縁談はきっと今後一切ありませんわよ。お決めになったら?」
アデルはルフェーヌへ婚約を勧める。
ジスランは兼ねてから強国であるパイロープ国と縁ができればと零していた。
経済強国であり、都会のパイロープ国との契約が増えれば穀物などの輸出が増え、国の利益がさらに上がる。その事も政略結婚の内容に含まれている。
「…………」
ルフェーヌは考え込み、黙って答えない。
ルフェーヌは微力ながら慈善活動に精を出していたが、王女として魔法を使えない事を後ろめたく思っている。
もしかしたら、この政略結婚を承諾することが王女として最大の貢献になるだろう。
ジスランはなかなか承諾しないルフェーヌに声をかける。
「ルフェーヌ、経済強国でもあるパイロープ国の縁談を断るわけにはいかないんだ。王女としてやれる事が少ないルフェーヌも誰かの役に立ちたいと言っていただろう? 何とか、了承してはもらえないだろうか?」
「そうよ。お姉様は何もできない無能なのだから、お父様や国のために役に立つ絶好の機会よ」
無能ーー。
ルフェーヌはずっと自分をそう思って生きてきた。周りから言われ続けた言葉を思い出す。
アデルにはハッキリと言われる事が多かったが、ジスランや王室の職員たちからは間接的に言葉へ含ませて言われる事が多かった。
ルフェーヌに悲しさがこみ上げてくる。ルフェーヌは固く握っている拳をさらに力を入れて、最良の選択である言葉をジスランへ伝える。
「わかりました。政略結婚のお話しをお受けします」
ルフェーヌは努めて冷静に感情が表れないように承諾する。気を抜くと言葉が震えてしまいそうだった。
「ルフェーヌ、ありがとう。本当にありがとう! ルフェーヌが嫁ぐ日は盛大に見送ろう」
ジスランは表情を明るくし、強国パイロープとの縁ができるのを喜んでいる。
「お相手が次期国王の王太子なのがお姉様には不釣り合いだけれど、お飾りという所がお姉様にピッタリね。ご婚約おめでとうございます、お姉様!」
アデルはジスランがいなかったら高笑いでもしていそうなくらい上機嫌な声色でルフェーヌを祝福する。
誰もうなだれるルフェーヌには気づかない。
その風が届けるように、ディエゴの風の便りが本当にやってきた。
ディエゴが婚約者を決めたという、スフェーン国、世界中にに広まっているその噂は真実となった。
婚約した、その相手はーー。
ディエゴが婚約したのはスフェーン国の王女だ。それを聞いたアデルははしゃいでいる。
その事で話があるため、ルフェーヌとアデルはジスランの執事に呼ばれ執務室へ向かう。
アデルは廊下を歩きながらはしゃいでいる。
「ついにあたくしが強国パイロープの王太子妃になるのね!」
アデルは自分が強国の王太子妃になった姿を想像している。想像の中のアデルは強国王太子妃として華々しく人々の前に立ち、羨望の眼差しで注目されている。
ジスランの執務室前に着くと、執事が扉をノックをしてルフェーヌとアデルを連れてきた事をジスランへ伝える。
ジスランはルフェーヌたちを執務室へ通すように言うと、アデルは入るなりジスランへ婚約の事をたずねる。
「お父様! パイロープ国から縁談の話が来たと言うのは本当ですの?」
「ああ、そうだよ。政略結婚なんだが、よく知っているねぇ。私も本当に嬉しいよ」
ジスランが頷き伝えると、アデルは嬉しそうにはしゃぐ。
「嬉しいわ! ディエゴ王太子殿下。あんなつれない態度でしたけれど、あたくしの事が忘れられなかったのね。強国、パイロープ国の王太子妃はあたくしが一番相応しいわよね、お父様! あたくしの名前が書かれていることを早く言って!」
アデルは自分の名前が書いてある事を信じて疑わない。
ルフェーヌの感情は悲しさだけを残し、どこかへ消えてしまった。式典でのディエゴとの会話は何だったのだろうか。からかわれただけなのだろうか。悲しさがこみ上げてくる。
「それなんだが……。アデル、条件が書かれているから、落ち着いて聞いてくれるかい?」
ジスランは気まずそうに政略結婚の条件を読み上げる。
政略結婚の条件として、王太子妃として夫になる王太子を立て、敬う事を徹底するようにと書類に記載されている。
いわゆる「お飾り王太子妃」としてスフェーン国の王女姉妹のどちらかにこの政略結婚を承諾してほしいとの事だ。
「お父様、いま何とおっしゃいましたの?」
はしゃいでいたアデルは疑念の声でジスランへ聞き返す。
「なんて言うか、そのーー。簡単に言えば”お飾り王太子妃”かなぁ」
ジスランは言いにくそうにアデルから視線を逸らして核心を伝える。
「お飾りですって?」
アデルは興奮して語尾と眉をつり上げる。
「いいじゃないか、難しい事は王太子殿下にお任せすればいい」
ジスランはなだめるように言うが、アデルの興奮はおさまらない。
「お父様、冗談はおよしになって。あたくしがお飾りで済むわけがないわ。あたくしはどこへ行っても話題の中心で注目の的よ」
「ああ、分かっているよ。アデルは王太子殿下の横に立っていても皆が注目するよ」
「それが嫌と言っているのよ。横で立っているだけだなんて、あたくしは王太子殿下の臣下じゃないわ!」
アデルは怒りに任せて自分で言った言葉を気にとめる。
「臣下、お飾りーー。良い言葉ね」
アデルは何かを思いついたように含みのある笑みを浮かべる。嫌な予感がする。ルフェーヌは次に言われる言葉を予感する。
アデルはルフェーヌへ視線を動かすと口角を上げる。
「お飾りだったらお姉様が適任だと思うわ」
ルフェーヌは息を飲んだ。言われると思っていたが、名指しをされて鼓動を大きく弾ませる。
お飾りーー。
何もしなくてよいという意味に納得し、悲観する。蓋をしていた感情が溢れてしまいそうだ。
「お姉様に来るお話でこんなに条件が良い縁談はきっと今後一切ありませんわよ。お決めになったら?」
アデルはルフェーヌへ婚約を勧める。
ジスランは兼ねてから強国であるパイロープ国と縁ができればと零していた。
経済強国であり、都会のパイロープ国との契約が増えれば穀物などの輸出が増え、国の利益がさらに上がる。その事も政略結婚の内容に含まれている。
「…………」
ルフェーヌは考え込み、黙って答えない。
ルフェーヌは微力ながら慈善活動に精を出していたが、王女として魔法を使えない事を後ろめたく思っている。
もしかしたら、この政略結婚を承諾することが王女として最大の貢献になるだろう。
ジスランはなかなか承諾しないルフェーヌに声をかける。
「ルフェーヌ、経済強国でもあるパイロープ国の縁談を断るわけにはいかないんだ。王女としてやれる事が少ないルフェーヌも誰かの役に立ちたいと言っていただろう? 何とか、了承してはもらえないだろうか?」
「そうよ。お姉様は何もできない無能なのだから、お父様や国のために役に立つ絶好の機会よ」
無能ーー。
ルフェーヌはずっと自分をそう思って生きてきた。周りから言われ続けた言葉を思い出す。
アデルにはハッキリと言われる事が多かったが、ジスランや王室の職員たちからは間接的に言葉へ含ませて言われる事が多かった。
ルフェーヌに悲しさがこみ上げてくる。ルフェーヌは固く握っている拳をさらに力を入れて、最良の選択である言葉をジスランへ伝える。
「わかりました。政略結婚のお話しをお受けします」
ルフェーヌは努めて冷静に感情が表れないように承諾する。気を抜くと言葉が震えてしまいそうだった。
「ルフェーヌ、ありがとう。本当にありがとう! ルフェーヌが嫁ぐ日は盛大に見送ろう」
ジスランは表情を明るくし、強国パイロープとの縁ができるのを喜んでいる。
「お相手が次期国王の王太子なのがお姉様には不釣り合いだけれど、お飾りという所がお姉様にピッタリね。ご婚約おめでとうございます、お姉様!」
アデルはジスランがいなかったら高笑いでもしていそうなくらい上機嫌な声色でルフェーヌを祝福する。
誰もうなだれるルフェーヌには気づかない。