光輝
貧乏神を喜ばせろ
「やあーーーーー!!!」
翌日、とんでもない雄叫びと共に、私は試衛館の道場で目を覚ました
「うわーー!!」
「おや!鈴!おはよう!」
驚いて飛び起きた私に、優しい笑顔を向けるのは、朝で全身ビチョビチョになった勝太である
どうやら、朝稽古をしようと道場に来たところ私が眠っていたため、起こすのが可哀想でそのまま稽古を始めたらしい
起こさないようにとは思えない雄叫びだったのは一旦置いておこう
「あ、おはようございます」
私が寝ぼけ眼で挨拶を返すと、道場の入り口の方で声がした
「勝太、また1人で…なにと話しているのですか…」
そこには、青い白い顔をした女性が心配そうに勝太を見つめている
おそらく勝太の母上だろうか
そんな母上の心配をよそに、勝太は元気に答えた
「母上!ご心配には及びません!ただの独り言でございます!」
そんな勝太の様子に、はぁ、とため息をつく
「朝餉がもう直ぐできるので、朝稽古はここまでにしなさい」
「はい!」
そう言うと、母上は台所に戻っていった
「今の方は勝太のお母上?」
勝太は、木刀を元の場所にもどし、私の隣にどかっと座った
「彼女は私の義理の母上、おふでさんだ!私はこの試衛館の主である、周作殿の養子となり今ここで剣術を習っている!」
「へぇ、そうなんだ」
さっきまで明るかった勝太の顔が少し暗くなる
「義母上は、元はとても朗らかな方なのだが、どうやら最近様子がおかしくてな…」
「どこがおかしいんですか?」
私の質問に、勝太はうーんと腕を組んで考え込む
「生気がないと言うか…顔も青白く受け答えも覇気がない。一度体調が優れないのかと聞いたのだが、特にそう言うわけではないらしい」
うーん、うーんと唸りながら考える勝太を見て、ひらめいた
「ならば、私がおふでさんを観察して、原因を探ってみましょうか?私なら姿が見えないのでずっと側で観察できます」
それを聞いて、なるほど!と顔をあげる勝太
「それでは、鈴にお願いしよう!」
「では早速今日から始めます。毎日夜に報告会をしましょう」
こうして、私のおふでさん観察日記が始まるのであった