この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜

あなたの名前





 家に戻ると、母さまが安堵の表情で出迎えて下さいました。



 「よかった!なかなか戻らないから、心配したのよ?」



 玄関に座り、私の手を取ってくれる……。



 「母さま……。申し訳ありませんでした」

 「無事ならそれでいいのよ。それで?会いたい人には会えたの?」

 「……はい」



 私がそう答えると、母さまは目を細める。



 「そう。よかった」



 それだけおっしゃって、母さまは兄さまを振り返った。



 「八十治さん、ありがとう。ゆきを連れ帰ってくれて」



 声をかけられた兄さまは、少し笑って頷くと、先に玄関をあがって行かれた。



 「疲れたでしょう?お茶でも飲んで休みましょうか」



 促され、私も玄関をあがる。



 「……あら?」



 と、私の足元を見て、母さまの視線が止まった。



 「あっ……!これは、歩いている途中で下駄の鼻緒が切れてしまって!
 ですが、親切な方に助けてもらったんです!
 変わりの履物も貸していただいて!」



 私が足の傷の理由をあわてて言うと、母さまは小さくため息を漏らす。



 「……とにかく 一服しましょう。お茶でも飲みながら、詳しく聞かせてちょうだい?」


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