灯えまさんのレビュー一覧
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「こっちは否応なく産み落とされたんだ。ただ漠然と、堂々と、ずうずうしく、息を吸って、吐いて、生きていけばいい」
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疎外感、寂寥感、それらごと存在を抱きしめてくれるのに、自分の血を恐れて、手を差し伸べながら逃げてゆくようなヒーローに、わたしは惹かれてどうしようもなかったです。
生きてゆくための覚悟とか栄養を他人に差し出すことはできても、自分に贈ることは難しい。だから、ひとはひとりでは生きていけなくて、差し出し合える相手と再会できてまた恋に落ちる、支え合える運命ってこういうことなのだろうなあ、と愛しくなりました。
個人的に幼少期の佳月ちゃんの呂律のまわらなさと、成長してもずっとティラちゃんをお守りにする彼女がめちゃくちゃ可愛いなと思ったのと、ウサギにハートをもたせて飾っている先輩に興奮しました。
愛のぎゅっとつまった優しい作品です。
ぜひ、御一読を。
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朝を遠ざけたがって、夜を誰かと過ごしたがる高平くんも、学校での無愛想で近寄り難い高平くんも、変わりなく好きだ。
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お決まりのメッセージではじまる、彼女と彼の夜のこと。共有する時間、夜の深度、恋をするこころのかたち、どれをとっても、本当に瑞々しく、美しく、可愛らしく、爽やかにうっとりとしてしまいました。作者様の言葉の選び方が、とても好きです。
ピュアで、本当に読んでいて優しい気持ちになれました。ときめきの透明度がすごい。学校の七不思議なんかもでてきたり、ヒロインの友達の言葉も響いたりなんかして、短編とは思えないほど満足しました。
素敵な作品をありがとうございました。
オススメです。ぜひ、御一読を。
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溶けた氷を、食べて。千代田の呼吸を、聞いて。
蝉の声を、聴いて。みぞれの味を覚えて、夏の匂いを覚えて、空の青を覚えて、まばたき。
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暇を凌ぐための散歩中に突然驚かされる。
クラスメイトの千代田から。
それで、なぜかふたりでかき氷をつくって食べることになる。
「……すきなひと、いるの?」
夏のワンシーン。
とけるみぞれのかき氷と、ふたりの可愛い恋模様。
やわらかい作者様の平仮名のつかいかたがとても好きです。読んでいて本当に気持ちがよかった。
熱くて暑い夏、君が隣にいるこの瞬間、
五感でぜんぶ感じ取って、吸い込んで、それから。
もっと素直にきっちりと伝えたその先で、
汗を垂らしながら、シャリ、とかき氷を頬張りながら
どうか、お幸せに。
本当に可愛くて、夏が終わるのが寂しくなるような作品でした。ぜひ、御一読を。
お互いがはじめて同士。手探りのお付き合い。
そこから生まれた二人だけの形と気持ち。
ただそれでよかったのに、ある話を聞いたことで
不安になる。
ーー本当に自分でいいのかな ?
ーー嫌になったらどうしよう?
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揺らぎなかったものが揺らぐとき、
それを乗り越えれば絆は強くなるのだと思います。
ふたりの可愛い勘違いとすれ違いに
ハラハラ、ドキドキ。
自分たちの赤い糸の結び方が他とは違って、そのことに不安になっても、解けないように結んであれば、大丈夫。
お互いがお互いしか知らなくても、それ以外知らなくていいと思っているならそれでいいし、長続きの秘訣は、ずっと大好きでいること。
空大君に教えてあげたいです。
きっと、好きすぎるのはあなただけじゃないよ、と。
ふたりの可愛い勘違いの行く末を、見届けてみてください。ぜひ、御一読を。
完全無欠の完璧人間な王子様と
恋愛初心者の負けず嫌いなトップモデル
いつだってイチバンでいたいし
イチバンじゃないと絶対嫌!な
ヒロイン・杏鈴ちゃんが可愛くて最強です。
ヒーロー・トシ先輩の分厚い理性も 優しさもその後ろにある、カッコ悪くてかわいい部分もぜんぶ杏ちゃんは欲しがる代わりに絶対に抱きしめてくれるので、安心です。
大好きな大好きなパイセンが、本当の意味で、こころ丸裸で幸せになれそうでよかったです。
また、あまいたまごやきの世界への愛が増しました。パイセン、人気ナンバーワンです。
ぜひ、御一読を。
P.S.
パイセンと杏ちゃんの、堂々としたハグ・チュウにあまいたまごやきのメンバーがどんな気持ちを抱くのか、想像するだけで、クスリと笑っちゃう。みんな本当に大好きです。
「誰かを救いたいんじゃなくて、いつだって言葉は誰かに救われたがってるんだよね」
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逃げた。探さないでください、よりも少し洒落たメモを残して。十九歳、二十歳未遂のひとつの選択。
自分を形成する価値観と、弱さと、それから信じようと手を伸ばすものへ、問いをぶつけ、お兄さんとわたしとそれから言葉との対話で、答えを手繰り寄せる。その過程で、零れ落ちたものに、読む者が救われる。ああ、この物語の言葉たちがそれを待ち望んでいたのでしょうか、そう思うのはエゴでしょうか。
結局は、他人ではなく、自分。自分と付き合っていくために、自分の涙を拭って時には抱きしめて、そうやって自分を自分として認めてあげることが大事なんだと教えてくださりありがとうございます。
勝手に、この物語をお守りにします。
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『ずっと、お前だけが欲しかった』
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トクベツ って違うかたちをしていても
ぴったり 合わさることもある
だけど、合わせるのには勇気と言葉が必要
すれ違いも 想いのぶつけあいもすべて
長くて愛おしいふたりの答え合わせの過程にある
たぶん、トクベツちがい だったんだ
なんて、手を繋いで 肩を寄せあって
困り顔で笑う近海と 不機嫌ぶった茶々の姿が
これからもずっとありますように
それで、新しいトクベツがまた生まれますように
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◐
『永遠の愛だとか、恋だとか、好きとか嫌いとか分からない。 でもあの日、この先も隣にいるのを悪くないと思ったんだ』
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今、ここにいるということ
願う、という未来の不確かさと
行為そのものの確かさ
空にのぼる無数の風船にたくす
世界平和を祈る それがエゴでも
愛おしい登場人物たちの 軽快な会話と
その胸に秘めた まっすぐで 透明な気持ち
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花はもう咲いている
誰かのために 自分のために 世界のために
何かをすること そのものが春ならば
彼らは 春の真ん中にいる
きみの笑顔や頑張りが、
私の存在理由になる。
つらいことや悲しいことを抱えたままでも
ゆっくりと進んでゆけばいい。
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手芸が得意な平凡少女、麻文。
彼女が憧れるバスケ少年、和泉。
多感な16歳の、よろこび、ときめき、
かなしみ、さみしさ、が、大切にこめられたお話。
まるで、サイダーのなかのビー玉のような。
あるいは、大切にしまわれたドロップ缶の中の飴のような。
瑞々しい、繊細で透き通った感情たちが
作者様の素敵な言葉たちによって伝わってきます。
震災、という重いテーマも、自然に、しかしくっきりと埋めこんで、その点でも心に残る物語となりました。まだ、終わっていない。たしかに跡があって、それを抱えてたくさんの人が生きているんだな、と。
本当に素敵な物語でした。温かかった。
16歳の彼らの未来にありったけの希望を。