「ねえ、凛子さん。こういう仕事って、怖くないの？」 そう聞かれたのは、三人目の女の子を紹介したあとだった。 私は紹介人。 都内のとあるリストを管理している。 毎日、ホテルの部屋番号を受け取って、それに応じた“子”を案内する。 私自身は会わない。ただ、その間に立つだけ。 それだけのようで、実はものすごく繊細な仕事だ。 　 紹介するのは、どこにでもいそうな普通の女の子たち。 学生、OL、主婦、彼氏持ち……。 でも、誰にも見せない“裏の顔”を持っている。 最初は、彼女たち自身がこの仕事に緊張していた。 だけど、慣れてくると——いや、“相手の反応”を見たとき、 彼女たちの中にある何かが変わる。 「すごく優しくしてくれて、よかった」 「終わったあと、あの人が涙目で“ありがとう”って言ったの」 「自分が必要とされてるって、こういうことなんだって思った」 そんなメッセージを読むたびに、 私は“ああ、この子に紹介してよかった”と思う。 　 もちろん、この仕事は完璧じゃない。 ドタキャンする人、マナーが悪い人もいる。 でも、本当に“何かを満たしたい”と思って連絡してくる人もいる。 「清楚な子がいい」 「初々しい反応が見たい」 「人妻の秘密を覗きたい」 ——そんな希望を、私はただ受け止めるだけ。 　 会った瞬間、目をそらすほど可愛い子。 脱いだらびっくりするほどスタイルが良い子。 最初は緊張してても、途中から豹変するM体質の子。 写真じゃ伝わらない、体温と、吐息と、素直さ。 　 この世界を知ると、もう戻れなくなる人もいる。 でも、ただの消費じゃなくて、 「必要とされたい」っていう気持ちが交差する場所。 私は、そのつなぎ役だ。 　 この仕事が好きかって聞かれたら、 ——正直、好きだと思う。 誰かの欲望も、 誰かの寂しさも、 全部受け止める夜があるから。 　 必要なときは、連絡してくれればいい。 無理にとは言わない。 でも、知ってるだけで選択肢は増えるから。 　 これは“裏”の話じゃない。 ただ、表に出せないだけ。 紹介人・凛子