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愚者
悠幸/著

総文字数/184,970

ミステリー・サスペンス374ページ

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 過ちを薄める為に逃亡する。罪から逃げる事が正しい選択肢か如何か以前に、心の弱さが選ばせた選択肢。  折戸時雨は殺人罪から逃げる為に本名を捨て、日本全国を渡り歩き一つの街に腰を落ち着ける。  時が過ぎるのは果てしないが、振り返る事は一瞬で出来る。自分と云う核を捨てる事で気配を消し、時効を迎えた今も世間に一線を引いてしまう。  過去を問わないオーナーの下で喫茶店のマスターとして世間に溶け込むが、何処かで浮いてしまう。そんな逃げの人生だが、一人だけ友人がいる。互いに脛に瑕がある者同士だ。付かず離れずの距離感で付き合い、その友人である関がTVを眺めて嘯く。 「イジメ自体を無くすのは、略不可能と考えんとあかんのや」  イジメの特番が組まれた番組に対し呟いた一言が切欠に成り、錆付いた歯車が徐々に動き出す。  イジメを否定する事は容易だが、無くす事は不可能だ。理不尽な言葉が理不尽で無いと思い知らされる事件が次々と起こり、逃げる事が人生だと思っていた時雨の中にある何かが動き出した。
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