孤高の黒皇帝は、幼児化した愛しの聖女に気づかない ~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダもれです~
第七章 大聖女に永遠の祝福を
『愛しあう心で結ばれた我がいとし子に、祝福をさずけましょう』
とてつもなく長い夢を見ていた気がする。
気がついたとき、私はベッドの上だった。体は鉛のように重く、まぶたを開けるのすら億劫だ。
駆けつけた陛下に抱きしめられながら、むしろこちらが夢なのだわ、とさえ思った。
エルマに刺された陛下を癒すため、幼児化したまま神聖力を使った私は、オディリアに戻ってすぐに最期を迎えた――はずだった。
それなのにこうして目を覚ますことができたのは、女神様のおぼしめしがあったのかもしれない。
後から聞いたことには、私が意識を失った直後、近衛騎士団が聖女隊を連れてやってきたそうだ。
聖女の癒しで私はどうにか一命は取りとめたものの、なかなか意識は戻らなかった。王宮に運ばれてからも、聖女達の癒しは昼夜問わず続いた。
教皇様によると、大聖女を回復させるためには甚大な神聖力が必要で、何人もの聖女達が交代で神聖力を注ぎ続けなければならない。聖女達は皆自ら率先して私のために治癒に当たってくれたという。
私が目覚めたという報告に、安堵の涙を流した聖女も少なくなかったと聞き、改めて聖女宮の皆への感謝の気持ちでいっぱいになった。
捕らえられたエルマは、裁判により身分はく奪の上流刑地への島流しが決まった。
本来なら皇帝や皇后の命を狙った罪は処刑が相当だが、私が目覚めたことと元皇太子の被害者のひとりということが考慮されたようだ。
病気に倒れる以前の元皇太子は、とんだ放蕩ぶりだった。次々に王宮内外の女性に手をつけ、それも相手女性の同意の上とは限らなかったらしい。被害を訴える女性も少なくなかった。
重臣たちは前皇帝に皇太子をいさめるように苦言を呈していたそうだ。けれど前皇帝は、いずれ重責を担うので今くらいは好きにさせてやれと、ずっと放置していたという。
エルマも元皇太子に弄ばれた女性のひとりだったが、彼女は元皇太子の言葉を自分のいいように解釈し、皇后の座すら自分のものになると妄信しただけでなく、陛下にまで逆恨みを抱いたのは自分勝手としか言いようがない。同情の余地はなく、死刑よりも過酷だとまで言われた最北の罪人島行きとなった。