孤高の黒皇帝は、幼児化した愛しの聖女に気づかない ~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダもれです~
第三章 黒皇帝は眠る大聖女に心揺れる sideルナルド
「おい! どうした!」
腕の中の幼女に呼びかけた。
「たす……け……て」
切れ切れにつぶやいた直後、ぐったりと動かなくなった。
「おい! ……誰か! 誰か来てくれ!」
慌てて駆けつけたメイドに医者を呼ぶよう指示し、俺は幼女を抱え上げて部屋へ戻った。奥にある扉を開けて私室へ入り、ベッドに寝かせた。
やってきた宮廷医いわく、特に大きな病気やケガはないがかなり衰弱しているため、しばらくは安静が必要だとのことだった。
いくら幼児であろうと、身元不明の者を皇帝の寝所に置いておくわけにはいかない。そう言って侍従らが幼女を連れていこうとしたのをとっさに止めた。とある可能性が頭をよぎったのだ。
ひとまず目を覚ますまでここに置いておくと伝えて、使用人たちは下がらせた。
ベッドサイドに立ち、青白い顔で昏々と眠る幼女を見おろす。
枕の上に広がる髪は、ローズクオーツのように透きとおったピンク色のブロンドだ。気を失う直前に見た瞳の色と合わせて、思いあたる人物がいる。
腹違いの兄である元皇太子は、今でこそ普通のブロンドヘアだが、幼少のころはこの幼女と同じようなストロベリーブロンドだった。瞳の色もヘイゼルで同じ。
まさか兄の子なんてことは……。
昔から女とみれば手あたり次第手を出してきたあの男なら、どこから子どもが現れてもおかしくない。