恋ひわずらふ帝~御簾の奥、ただ君を想う~
第1章 御簾の向こうの人
私の名前は春野。
宮中で、雑務をこなす侍女のひとりだ。
母上が亡くなったのは、まだ私が幼い頃。
頼るあてもなく、父——貴族の血を引くというだけの名ばかりの存在にすがり、私は宮中に上がることになった。
けれど当然、華やかな女房のようにお后様方に仕えるわけではない。
私に与えられたのは、洗濯場の手伝いや、庭掃除、火の番などの裏方仕事ばかりだった。
絹の衣に身を包んだ女たちが行き交う御簾の奥、
その煌びやかな世界は、まるで別の世界の話のようだった。
そんな私も、もう十七歳。
本当は、恋の一つもしてみたい年頃なのに。
けれど――
「妾腹の子は、お呼びでない」
誰かにそう言われてしまう前に、自分で自分にそう言い聞かせる癖がついていた。
宮中で、雑務をこなす侍女のひとりだ。
母上が亡くなったのは、まだ私が幼い頃。
頼るあてもなく、父——貴族の血を引くというだけの名ばかりの存在にすがり、私は宮中に上がることになった。
けれど当然、華やかな女房のようにお后様方に仕えるわけではない。
私に与えられたのは、洗濯場の手伝いや、庭掃除、火の番などの裏方仕事ばかりだった。
絹の衣に身を包んだ女たちが行き交う御簾の奥、
その煌びやかな世界は、まるで別の世界の話のようだった。
そんな私も、もう十七歳。
本当は、恋の一つもしてみたい年頃なのに。
けれど――
「妾腹の子は、お呼びでない」
誰かにそう言われてしまう前に、自分で自分にそう言い聞かせる癖がついていた。