帝の唯一の女〜巫女は更衣となり、愛に囚われる〜

第1章 出会い ― 癒しの巫女

私は小さな村に生まれ、両親と穏やかに暮らしていた。

けれど、他の子にはない“力”を持っていた。

「美琴、また頼んます。」

腰を押さえたお爺ちゃんが、痛そうにやって来る。

「じっとしていてね。」

そっと手を当てると、不思議と痛みが和らぐのだという。

「ああ、やっぱり美琴は癒しの神だ。」

笑いながらそう言って、村の人たちは私を大事にしてくれた。

その力は、幼い頃から自然に身についていた。

熱を出した子どもの額に触れれば熱が下がり、転んだ子の膝を撫でれば血が止まる。

私にとっては当たり前のことだったけれど、村では特別なことだったらしい。

「美琴は、村の宝だ。」

私の家には、私が治した人達が野菜を持って来てくれる事が多かった。

でも両親は、「いっぱいあるから。」と言ってその野菜さえ、他の人に分け与えていた。

私の家は、一種の村の集まりのようなものになっていた。
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