黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

【エピローグ】凌暁と雪蘭の遺したもの

あれから幾世紀――。

霜華国と天啓の神殿で繰り広げられた
数々の戦乱、陰謀、そして奇跡。
だがその中で、
凌暁と雪蘭は確かにこの世に平和をもたらした。

二人は互いの手を取り合い、
五幻獣と共に神殿を再建し、
神殿を訪れる者に平穏と希望をもたらした。
人々はその名を敬い、
霜華国はかつてないほどの繁栄を享受した。

総領の君もまた、
父母の教えと幻獣たちの加護のもとで立派に成長し、
後の世代にその精神を受け継いだ。

しかし、時は流れる。

凌暁と雪蘭は静かにこの世を去った。
五幻獣の加護は残された者たちに伝わったものの、
時代が移り変わる中で、
幻獣への信仰は薄れ、
人々の心から少しずつ遠ざかっていった。

数百年の歳月を経ると、
世界は再び混沌に包まれ、長き戦争の時代が訪れた。
神殿もかつての輝きを失い、
霜華国の人々の多くは、
伝説として語られる二人の勇姿を知らぬ者も多くなった。

それでも、
風に舞う古の紙片や、聖なる光の残り香に、
かすかに残る二人の魂――。
「凌暁と雪蘭が、この世にかつて愛と平和をもたらした」という事実だけは、
時を超えて静かに息づいているのである。
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