黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

二日目 青龍の神事

夜明けとともに、
山頂を包む霧がゆっくりと晴れていった。
澄んだ空気の中、
神殿の水盤が朝日を反射して、
無数の光の粒が舞う。

この日、天啓では青龍の神事が執り行われる。
青龍。
風と水を司る幻獣――清き流れはすべての命の源であり、
その加護を得た国は、
豊穣と繁栄を約束されるという。



雪蘭は透き通るような水色の衣をまとい、
他国の正妃たちとともに大理石の回廊に並んだ。

青龍を象徴する巨大な水盤が中央に置かれ、
その上には銀の水鳥を象った灯籠が浮かべられている。
儀式が始まると、
彼女たちは一斉にその灯籠を水面へと流した。

淡い光が流れを描き、
風が柔らかく頬を撫でる。

雪蘭も他の正妃たちと同じように行う。
その瞬間――
雪蘭が浮かべた灯籠の周囲の水面がキラキラと輝いた。
けれど、それはほんの少しの間の出来事で
すぐに穏やかな水面へと戻った。
自分の勘違いだろうか。
それとも他の正妃たちの灯籠も
同じようになったのだろうか。
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