黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー
三日目 青龍の神事(二)
夜明け前の冷気が、
肌を刺すようだった。
この日の神事は、
国主たちが行う「水と風の誓い」。
天啓の最も高い場所にある“蒼流の滝”で、
国の代表が水を汲み、
風に向かって祈りを捧げる――
日の出から日没まで続く、
過酷な儀である。
凌暁は、青の礼装を纏って滝の前に立った。
吹き上げる水煙が頬を打つ。
氷のように冷たい滝壺に手を浸し、
国の繁栄と民の安寧を祈る。
“風と水が交わる時、龍は現れる”――
巫女が唱える言葉が、谷に反響した。
凌暁は剣を抜き、
滝の水面にその刃先をそっと触れさせる。
風が唸り、空が青く裂けるように光る。
彼は心の奥で、
“この戦乱の世を終わらせたい”と静かに誓った。
ただそれだけの祈り。
だが、その願いに滝の流れが一瞬、
柔らかく揺れた気がした。
この神事は数ある神事の中でも
最も過酷と言われる。
若く体力に自信のある凌暁でさえ、
何度も音を上げそうになった。
実際、
滝壺の水のあまりの冷たさに
意識が遠退いて失神してしまう者もいた。
誰が倒れようと、
それでも神事は続く。
気の遠くなるような時間が過ぎて
ようやく日没が訪れた。
この時点まで一度も離脱することなく
やり遂げた国主は
凌暁を含めて僅か5人であった。
肌を刺すようだった。
この日の神事は、
国主たちが行う「水と風の誓い」。
天啓の最も高い場所にある“蒼流の滝”で、
国の代表が水を汲み、
風に向かって祈りを捧げる――
日の出から日没まで続く、
過酷な儀である。
凌暁は、青の礼装を纏って滝の前に立った。
吹き上げる水煙が頬を打つ。
氷のように冷たい滝壺に手を浸し、
国の繁栄と民の安寧を祈る。
“風と水が交わる時、龍は現れる”――
巫女が唱える言葉が、谷に反響した。
凌暁は剣を抜き、
滝の水面にその刃先をそっと触れさせる。
風が唸り、空が青く裂けるように光る。
彼は心の奥で、
“この戦乱の世を終わらせたい”と静かに誓った。
ただそれだけの祈り。
だが、その願いに滝の流れが一瞬、
柔らかく揺れた気がした。
この神事は数ある神事の中でも
最も過酷と言われる。
若く体力に自信のある凌暁でさえ、
何度も音を上げそうになった。
実際、
滝壺の水のあまりの冷たさに
意識が遠退いて失神してしまう者もいた。
誰が倒れようと、
それでも神事は続く。
気の遠くなるような時間が過ぎて
ようやく日没が訪れた。
この時点まで一度も離脱することなく
やり遂げた国主は
凌暁を含めて僅か5人であった。