黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

六日目 白虎の神事・誓いと守護

東の空に白い光が差し始めた頃、
天啓の地は再び静寂に包まれていた。

今日から二日間は――白虎を祀る儀。
火の朱雀に続く“西方の守護”の象徴。
それは“剣の力”ではなく、
“心の誓い”を問う神事だった。

神殿の前庭には、
白絹をまとった国主たちが並び立つ。
各国から献上された守護の象徴――獣骨、剣、祈祷符――が祭壇に並べられている。

儀の始まりを告げる鐘の音。
白虎の神官が一歩前へ進み、声を響かせた。

「この地に集いし国主たちよ。白虎は、誓いと守護の神。そなたらが何を守り、何を斬るのか、心を見定めるであろう。」

凌暁は剣を抜かず、
ただ静かに両の掌を合わせた。
その姿は戦の将でありながら、
不思議なほど穏やかであった。

雪蘭は控えの間からその姿を見つめ、
胸が熱くなる。
(……あの方は、戦いを誇りにする人じゃない。誰かを守るために、刃を握っているんだ……)

祈りの最中、風が吹き抜ける。
砂塵の中で、凌暁の衣がはためく。
彼の目は遠く、過去を見ていた。
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