黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

霜華国への帰国、そして忍び寄る異変

天啓を出てからの帰り道は、
拍子抜けするほど静かだった。
険しい山道も、霊獣の影もなく、
ただ澄んだ空気が二人の周囲を満たしていた。

雪蘭は胸元の護符を大切そうに身につけていた。
胸が時折、じん…と重く響くのを感じたが、
道の疲れだろうと深く考えなかった。

凌暁は雪蘭の隣に座り、
時折思い出したかのようにふと手を伸ばしては、
袖越しに彼女の指へ触れる。
「確かめるように触れる」癖がついてしまったのだ。

雪蘭も気づく度に頰を染め、
そのたびに凌暁の目が優しく細められる。

そんな甘い旅路だった。
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