黎明の麒麟ー凌暁と雪蘭の伝説ー

再び天啓へ

やがて闇に包まれた夜が明けて、
山間の森林地帯に入った頃、
道は細く険しくなり、霧が濃く立ち込めた。

突然、雪蘭の胸元が熱く疼く――
蓮音が璃月に託した“より強い呪詛”が、
雪蘭を追跡するかのように反応していた。
護符に見せかけた紛い物は
祈祷師に命じて焚き上げさせたが、
それでもなお、
呪いの力は雪蘭に纏わりついている。

「っ……う……!」
「雪蘭!」
馬を止め、凌暁は雪蘭を抱き下ろす。
雪蘭は胸を押さえ、息が震えている。
「ごめんなさい……さっきから胸が……ざわついて……」
凌暁は彼女の手を取り、
自身の胸にそっと当てて囁く。
「大丈夫だ、雪蘭。私が傍にいる。蓮音の呪詛がどれほど強かろうと、私が守る。落ち着いて、ゆっくり呼吸しろ。」
その声と温度に、
雪蘭の呼吸はゆっくり安定していった。

しかし――
霧の奥から、低い獣の唸り声が響く。
「……っ、凌暁さま、あれは……!」
霧の中に浮かび上がったのは、
蓮音が呪詛で操る“影の獣”。
通常の獣ではなく、
霊力を蝕むために生み出された存在だった。

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