この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜

心のともしび





 泣いて 泣いて。

 走って 走って。

 何度も 転んで。


 こんな惨めな姿ってない。

 けどこれが、今の私に相応しい姿。


 ここがどこだかわからない。

 こんな姿を人に見られたくなくて、
 人目を避けて走るうちに、どこだか知らないところに来ていた。


 まわりは田圃だらけ。息が切れてまた転んだ。



 「痛っ!」



 何度目かの転倒で、足に鋭い痛みが走る。

 足元を見ると、道に落ちていたらしい大きな木の枯れ枝が、足に絡みついていた。

 前も足元もほとんど見てなかったから、おもいきり引っかかってしまっていた。


 身体を起こして足に触れると、ヌルリとした感触。
 右足の(すね)の皮膚が裂けていた。


 普段からの質素倹約で、着物も着丈・袖丈の短いものを着ていたから、剥き出しだった脛は見事なくらい赤い血で染められていた。

 手のひらを赤く染めるそれを見つめて、荒い息をつく中で笑いが漏れる。



 「……ふ、ふふ」



 ………こんなことをして。自分を傷つけ、痛めつけたとしても。


 まつの心の傷には、到底 及ばない。


 それほどの深い傷を、私がまつに負わせていたのだから。




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