この空のした。〜君たちは確かに生きていた〜

あいたい





 台所へ行くと、おいしそうな匂いが鼻をつく。
 食欲をそそられて、私のお腹が グゥと鳴った。


 (お昼を食べたきりだったものね)


 台所は土間と六畳の板間でできていて、板間の端には囲炉裏が切ってある。


 見ると その囲炉裏から少し離れたところに、兄さまが遅い夕飯をとっておられた。


 囲炉裏に吊るした鍋から味噌汁をよそっていたまつが、私に気づいて安堵で顔をほころばす。



 「ゆきさま!お帰りなさいませ!ああ、よかった!ご無事で戻られて!
 さあ、こちらに!今 お膳をご用意いたしますから!」



 そう笑顔で迎えてくれる。



 兄さまは知らん顔。
 それが悲しくて、また泣きそうになった。



 「まつ……」

 「さあさあ、そんなところに立っていないで。こちらにいらして下さいな?」



 まつはすべてわかっていて、兄さまとの仲をとりなすかのように私に近づき、優しく手をとってくれる。


 まつの温かい手に引かれ、兄さまの向かいに座った。



 
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