結星そらかさんのレビュー一覧
どんな過去があろうとも、不安、恐怖、苦しさがあろうとも、犯罪者であろうとも、その人を想う気持ち、愛する気持ち、自分が犠牲になっても、殺されてしまっても、愛する人を守りたいという気持ち、運命に翻弄されてしまっても、どこまでも愛し合う気持ちが美しく映りました。誰にも言えない孤独を抱えたふたりが運命に導かれるように出会ったこと、出会わなければ悲しい思いも苦しい思いもしなかったかもしれないふたりが、愛し合って、笑いあったこと、それは私が想像するよりも難しく、掻き乱されてしまう世界だったと思うけれど、力強い光を感じて。犯罪者、殺人犯でもいい、祝福されなくてもいい、ただ一緒にいたいと思えるほどに愛し合っていたふたりの結末は悲惨でしたが、どんな状況でも、真っ直ぐ愛して、真っ直ぐ生きたふたりの物語に生きる勇気をもらいました。物語の中で感じた生きること、愛することを忘れることはないと思います。
すきになった人は、
私が殺してしまった親友の兄でした。
後悔しながらモノクロの世界で生きるヒカリと、
ヒカリを憎み、復習するために近づいた藤堂は
絶対に惹かれあってはいけなかった。
私にも、誰かにも後悔はあって、いつ晴れるのかも、いつ虹がかかるのかも、わからないけれど、いつか笑える日が、許せる日が、来ると信じて歩き出せばいい、と思います。
「俺、ちゃんとここにいるから。大丈夫」
「すきです」
それと、同じように、ふたりは二度と会えなくても、交わることがなくても、いつか心の中で許せる日が、虹色に染る日がきてほしい、私もふたりも後悔だらけの日々にきっと偽りはなくて、ふたりの物語、藤堂の言葉、大切なふたりの間で葛藤しながらも残したちいさな"すき"は本物だったと、ふたりは確かに惹かれあっていたと思った途端、溢れた切なさと愛おしさは忘れられません。
「ばいばい、亮」
好きな人には、彼女がいました。
出会ったこと、抱きしめられて暖かかったこと、助けられたこと、一緒に過ごして、わらって、泣いたこと、苦しかったこと、諦められなかったこと、葛藤したこと、手を離すまでの2年間、ふたりで過ごした2年間は特別で、お互いにとって間違いなく特別な存在で、
壮絶で、感動的な純愛物語じゃないのに、結ばれてないのに、いつか「出会えてよかった」「好きになれてよかった」と離れ離れになったふたりが思えたら、ふたりの結末はハッピーエンドになって、
二度と会えなくても、二度と交わることがなくても、ずっとかけがえのない存在で、ふたりで過ごした日々は大切な思い出としてふたりの心に残り続けるのだと思います。
世界で一番愛してる
ずっと笑っていられますように
誰よりも幸せになってね
またね
愛し合っているのに、一緒にいられなかったふたりの幸せを泣きながらひたすらに願いました。
自分の色を解放して、色々な色を手にして、それらの色を足して無限の色を作っていく、これが恋で、これを教えてくれたのはチャラくて掴みどころのない"桐谷遥"だった。
恋は儚くて、恋人という関係は一番脆くて、いつか無くなって、別れて、離れてしまうもので、それでも相手がほしくて、誰にも取られたくなくて、一緒にいたくて、自分が相手の色に染ってしまうほどの愛おしさが文字の羅列から伝わってきて、胸が切なく鳴って。だけど、様々な色を持って、たまにメチャクチャな絵を描いて、ズル休みをして、わらって、泣いて、怒って、唇から伝わる想いを油絵のように重ねて、色味を足して、ふたりだけの色を作って過ごしていく姿が優しく映りました。
青の濃淡のグラデーション、オレンジと白が飛沫、鮮やかな景色が脳裏に浮かんで、恋の瑞々しさ、愛おしさを教えてくれる優しい物語でした。
あまりにも強くて、深くて、色鮮やかな"好き"だった。
生まれて初めての、どうにもならない"好き"だった。
一番大切な親友と同じ人に惹かれてしまったヒロインの苦い気持ち、罪悪感、それでも諦めきれないほどの脆く強い恋心が鮮明に描かれていて、胸を掴まれたけれど、読後は優しい世界と爽快感に包まれました。
『絵を描く、ということは、自分の心に深く刺さった美しいものを、それを見たときに湧き上がった感情を、誰かに伝えるために形にするということだと思う』
「好きなものを描いたの」
「これって、俺だよな?」
人をすきになる、それは、苦しくて、痛くて、温かくて、何枚もの絵を描いていくように、相手への気持ちや思い出を大切に積み重ねていくということ、明日はもっとすきになって、すきが重なっていくということ、だと、
胸が張り裂けそうなほど痛かったけれど、人をすきになるということを教えてくれる物語でした。
私たちの恋は、きっと──。
一番近くて遠い場所にある。
離婚した母を支えるため、バイトに明け暮れる生活を送っていた汐里が出会ったのは、一匹狼の晃。惹かれていくけれど、彼は父の再婚(不倫)相手の息子だとわかり──?
近づくと同時に募る気持ちと比例するように募る罪悪感、乗り越えなければいけない障害、葛藤を抱えている何も悪くないふたりの距離が切なくて何度も胸を掴まれました。
「俺たちが笑って一緒にいる未来を想像したことある?」
「許されないんだよな」
誰かを傷つけるとわかっていても自分の気持ちに抗えないということをこの物語で知ったからこそ、残るものより、失うものが多い世の中で、変わらないものより変わっていくもののほうが多い世の中で、絶対に忘れたくないもの、自分のことは後回しの私も絶対後回しにしたくないもの、離したくないものを見つけられたらな、と。
生きていく上で抱いてしまう感情を、醜い感情を受け入れることは難しいことで、一度知ってしまった暗闇、感情は忘れることなく、在り続けるのだと思います。だけど、重みを背負うために、真っ暗でひとりぼっちの海で生まれて、様々な葛藤を抱えて生きていて、その中で優しい世界と世界の温もり、最初で最後の恋を知っていく"彼"、彼、彼女から伝わってきたことは感情の愛おしさでした。
「心をいじめちゃダメだよ、弱い自分を、もっと大切にしてあげてほしい。」
葛藤だらけの自分、感情を「仕方ないな」って受け入れること、それは強がりではなく強さなのだと、これからも抱いた感情と共に生きていくのだと、彼らが紡いだ日々の中で知って、ページを捲るほどに苦しくて、痛くて、堪えきれないほどの涙が溢れてしまったけれど、ページを捲れば捲るほどに愛おしく、痛さも全部全部抱きしめたくなって、最後には光とちいさな勇気が灯りました。
傷だらけのヒロインを包むヒーローのぶっきらぼうな言葉の裏に隠された温もりの言葉が琴線に触れてきて、自分の明日に大切な人がいるということ、その人がいるだけで世界がキラキラするということ、誰かを想い想われるということ、それは本当に奇跡だと、ふたりの恋物語が教えてくれました。
「サユ、下ばっかり向くなよ」
「お前のことずっと見てるから」
「だからもう、自分がひとりだなんて思うな」
「ちゃんと生きてサユ。俺のぶんまで生きて。それで、いつかまた一緒にバイクに乗って海を見に行こう」
「約束だ」
「俺がいなくてもサユは生きるよ。俺が好きになったのは、そういう女だ」
苦しい日々の中で抱きしめ合い、心を通わせたふたりの結末は、バットエンドなのに、私の中ではハッピーエンドで、独特な世界観、切なくも温かい物語の余韻に浸り、かもしれない"でいいから、私もまた明日から一生懸命生きていきたいと思いました。
泣いた後には笑顔になって。
笑顔でたまには空を見上げて。
涙の数だけ、強くなっているんだよ。
.◌*
うわべだけの友達関係に、見て見ぬふりしてしまうイジメに、自分を理解してくれない両親にイライラして、苦しくなってしまうことがよくあり、思春期の難しい心境がリアルに描かれていて、あの頃の自分を思い出すきっかけになりました。
失わなければ本当に大切なもの気づけないし、失ってから気づいて、また泣いてしまうこともあるけれど、すこしの気づきで人は大きく変われると知って、うるさいと思っていたお母さんの想い、抱えた後悔とともに家族や友達やすきな人と向き合っていく姿、それぞれが変わっていく姿に胸がじんわり温まり、拭えきれないほどの涙を流していました。
生きていれば、苦しくて逃げたくなることがあるけれど、また明日からもがんばろうって、私の明日を鮮やかに色づけてくれた物語です。
「お前のその言葉、俺にはちゃんと聞こえたよ」
「お前はそうやって泣いていいんだよ。俺の前では無理すんな」
「俺も。お前が笑ってる顔見れて嬉しいよ?」
.◌*
私にも、誰かにも消したい過去、そして消せない過去があって、つらいから苦しいから何かのせいにして逃げたいときもあるけれど、それはもっと苦しいことなのだと思います。
明らかになる過去、それぞれの想い、点と点が繋がったとき、切なさとともに温かさが生まれて、自分の苦手な人も誰かの大切な人だからこそ、どんな理由であれ人を傷つけてはいけない、忘れかけていた大切なものが私の中に戻ってきて、登場人物の優しい言葉が、どんな出来事も人と人との繋がりも、出会いも、かならず意味があると、当たり前のようで気がつけなかったことを教えてくれました。
ーー明日見上げる"あおいそら"はきっと美しい。
「俺がいるから」
「百合、もう泣くな」
戦争中の世界、私は知らない世界、見たことのない世界だけど、リアルな描写に引き込まれて、百合目線で紡がれて、現代を生きる私の気持ちを代弁してくれる物語でした。
「愛する人たちを守るために、俺は死にに征くよ」
「生き恥ってなに?生きたいと思うのは、恥ずかしいことなんかじゃない!」
片道分の燃料と爆弾だけを積んで、死に征く覚悟をした特攻隊員の彰と真っ直ぐな百合との物語が心に突き刺さりました。
百合と彰のように、愛する人のそばにはいられない、愛する人と永遠に別れなければいけない時代、罪のない人の命が不本意に奪われる時代は二度ときてほしくない、と強く思います。
ここまで感情移入させられて、何度も読み返した物語はないです。ふたりの別れの苦しさ、温かさ、優しさを感じられる作品、この時代に生まれた人に読んでほしい作品、そしてずっと大切にした作品です。
ラ・カンパネラ
「葉由……この曲、弾ける?」
「そっか」
ポニーテール
「あれ?葉由?」
「これ、かわいいね」
きらきら星
「例えば……きらきら星は?」
「うん。繰り返しが多いから、いいと思うよ」
.◌*
「嘘はついちゃダメ」
「嘘はいけないこと」
その概念をひっくり返されました。この世界にはついてもいい嘘もあるのだと、優しく誰かを思いやる嘘もあるということをこの物語で知りました。
鮮やかな伏線回収は私の胸を苦しくもさせ、温かくもさせ、それ以上に幸せな気持ちにさせてくれて、彼女が途切れなくて、歌が上手で、ときに切ない顔をする大賀くんはとても優しく、温かい人で、人を傷つけない嘘をつける人で、大賀くんの、そして登場人物の幸せを願わずにはいられませんでした。
綺麗な描写、切なくも優しい描写が胸に響いて、脳裏には優しい光景が広がりました。
みんなが幸せになれますように。
「何も言わずに、我慢してたらいつか誰かが気づいてくれると思ってんのか」
「悲劇のヒロイン気取ってんじゃねえぞ」
茜と重なる部分のある私は青磁の言葉が苦しかったけれど、何度も読み返して、咀嚼していくうちに私を助けてくれる、一種の精神安定剤になりました。厳しい言葉と自由奔放な振る舞い、何かに囚われずに真っ直ぐ生きる彼の姿、不器用な優しさ、才能に私が救われ、勇気と温もりが残りました。
繊細に描かれる物語に自分の心を大切にするということを教えてもらった気がします。
「俺は、綺麗だと思ったものを、ほしいと思ったものを、自分の手に入れるために絵を描くんだ」
「この真っ暗な夜が明けたら、いちばんに茜に会いたいって」
ふたりの笑った顔が脳裏に浮かんで、涙が溢れて、思わず空を見上げたくなる、一番好きな小説です。
「俺は嫌じゃないよ。お前の声が聞けるなら」
「いくら嫌われても、俺はずっとお前に触れたかったよ」
「俺の前ではそうやって素直に泣けばいいんだよ……意地っ張り」
.◌*
コメディ風に進んでいく物語でしたが、終盤にかけて明らかになる真実と、優しさに溢れた伏線回収、それぞれの秘密、気持ちに触れたとき、温かい涙が零れ落ちました。
「……守り方なんて知らねぇよ。でも、お前に傷ついてほしくなかったんだよ」
「お前の傷つく顔見るくらいなら、嫌われた方がずっといい」
絶対君主の大魔王(ヒーロー)は、物を隠したり、雑巾を投げたり、意地悪な言動を繰り返して、嫌われてまですきな人には笑っていてほしいと思う、傷ついてほしくないと思う、素直になってほしいと思う。
どこまでも不器用に好きな人を守るヒーローの姿に、徐々に心惹かれていくヒロインの姿に心揺さぶられ読後は温かい何かが心に広がっていきました。