坂野真夢さんのレビュー一覧
自分を雨女と思っている人は、諦め上手な傾向にあると思います。
そう思うことで、自分を納得させることに慣れてしまっているような。
この話の主人公である美空もそう。
離婚経験がさらに彼女を頑なにし、小さな出会いも潰してしまう。
そんな彼女の前に現れた桂一はまさに“いい人”
人を信じないことに慣れてしまった美空の心を、ゆっくり優しく開いてくれ、読んでいてほのぼのとしました。
描写の丁寧な作者様らしく、空模様や紫陽花の美しさが随所で想像できました。
これからもゆっくりと幸せへの道を歩いていって欲しいなって思える優しいお話です。
半年前に別れた恋人のことが忘れきれずにいた橙子は、ある日自転車に乗った男性に目を奪われる。
彼に近づきたい。
そんな思いに正直に行動する橙子に、危険な出来事が降りかかる。
そして会社にも不穏な気配が……。
先の読めない物語でした。
丁寧な状況描写には数々の伏線が隠されていて、たくさん出てくる登場人物の誰を信じればいいのかと、ドキドキしながら読み進めていきました。
何度も危険な目に遭いながら、自分の意思に忠実にうごく主人公を凄いと思う反面、とても危なっかしく感じたり、元彼への態度が曖昧すぎる?と思ったりもしましたが、
ラストの方は一気に読んでしまいました。
とても面白かったです。
ミステリー好きの方にお勧めです。
菜穂は出版社に勤めるOL。
学生時代に因縁のあったカメラマン高瀬とは微妙な関係だ。
曖昧なまま時が過ぎる中、仕事先の社長が言い寄ってきて……
菜穂が余りに自分の気持ちを置いてきぼりにしていることにやきもきしながら読みました。
嫌な子だけど後輩のサトコちゃんの方が分かりやすいという意味ではすっきりするくらい。
でも実際、社会人になると相手の立場や関係を大事にするあまり、自分の気持ちを一番犠牲にしてしまうこともあるのかな、と考えさせられました。
私自身はお酒に強く、あそこまで記憶のないことには納得できずその点で☆4です。
個人的にはマサルくんが好きです。
以前より作者様の作品は読ませていただいていますが、この作品では描写が格段に上達したように思います。
ラストは甘い余韻が残ります。
最低で最悪な恋の結末をどうぞ楽しんでください。
しっかりモノの幼稚園児・桜ちゃんと、ヘタレな翻訳家の父という凸凹コンビ。
隣に越してきたそんな二人に、ただいま失業中で実家のそば屋手伝いに甘んじている郁美はついつい世話を焼いてしまう。
そしてそれはいつしか恋にまで発展して……。
とにかく登場人物が好感が持てます。
脇役ですが達也が一番好きでした。
桜ちゃんの一生懸命さ。田辺さんのヘタレながらも穏やかな愛情。
郁美のおおらかさが、それを大きく包み込んで、三人はきっと幸せな家庭を築けるんだろうなぁって思いました。
笑いと感動のバランスが最高です。
楽しく泣けるお話をありがとうございました。
弥生はイケメンの旦那とふたり暮らしのパート社員。
生活は普通。
いや、普通じゃない。
家政婦のように自分をこき使い、浮気をする夫。
文句ばかりを口にする姑の為の老人健康施設通い。
不満はおそらくある。
でも認めたら耐えられない。
だから彼女は無意識に自分は普通だと思い込んでいる。
そんな彼女の癒しは週に一度の夜の図書館。
そこで出会ったのび太くんに似ただ男性に、妄想をふくらませていくが……という話。
人間の危険回避能力を見たような気がしました。
不幸だと自覚したら潰れる。
これでいいのだと自分を納得させ続ける日々。
それがじわりじわりと変わっていきます。
思い切り幸せな未来が待ってる訳じゃない。
でも、変わろうとしたことこそが凄いと思います。
あまり読まないタイプの物語でとても面白かったです。
大学生の歩夢の家に、手紙が届いた。それは、半年前にいなくなった同居人・歩太に宛てられたものだったが、間違って読んでしまった歩夢は、その手紙の文字・文体に惹きつけられる。
そしてその手紙の差出人がやってきて……。
この手紙の主は誰なの?
という疑問と、独特の雰囲気をまとった文体に、すぐ夢中になりました。
主人公も、周りの人も、ものすごく人間臭く、正しさだけじゃない何かを抱えていて。
歩太の失踪をとうして、自分自身を見つけ、落ち込んだり、人を羨んだり、それでも自分らしくいようと願ったり。
必死に生きようとする姿に感動しました。
素敵な物語をありがとうございます。
結婚間近で浮気した元彼から、なんでか復縁を迫られるカナ。
女嫌いなのに、無駄にモテル孝太。
二人は利害が一致して、付き合っているふりをする。
しかし実際は、お泊りしても何にもないような動物のじゃれあいのような関係。
だけど、その関係が心地よすぎて、いつしか気持ちも変わってきて……。
カナちゃんの勘違いがものすごくおかしいです。
次から次へと続いていく壮大な勘違いに、
何が本当か分からなくなりそうでした。
孝太との掛け合いも凄く可愛くて、楽しく、ドキドキして読めました。
予想のつかないラブ・ストーリー。
おススメです。