颯希さんのレビュー一覧

★★★★★
2016/12/31 13:21
さみしがりや、ふたり

日常を放って、ヘンテコな日々に足を踏み入れた。手放しても惜しくない毎日を。休んでみた。学校に行かない理由なんてない。好きじゃない理由なんてない。 退屈で、愛せない、塗りつぶされた世界。 「自分で考えて、決めろ。拙くても、それが正解だ」 15コ上のぬくもり。近くにあった。そばにいた。頭をなでる手は色褪せていた景色を、いとも簡単に。 目の前を、自分を。変えた。染めた。多彩でいとおしく。こんな世界で、夢だって持てた。 柔らかい文章、優しい雰囲気、淡い世界観。それなのにどうしてこんなに力強く響いてくるんだろう。説得力があるんだろう。涙がずるずる引っ張り出されました。これだから人と人っていとしくて綺麗なんだ。毎回、作品を読む度にそう思います。 歪でも不器用でもいいよ。あなたがいる世界で、空の下できょうも、生きてゆこう。 素敵な作品ありがとうございました。ぜひ御一読を。

日常を放って、ヘンテコな日々に足を踏み入れた。手放しても惜しくない毎日を。休んでみた。学校に行かない理由なんてない。好きじゃない理由なんてない。
退屈で、愛せない、塗りつぶされた世界。

「自分で考えて、決めろ。拙くても、それが正解だ」

15コ上のぬくもり。近くにあった。そばにいた。頭をなでる手は色褪せていた景色を、いとも簡単に。
目の前を、自分を。変えた。染めた。多彩でいとおしく。こんな世界で、夢だって持てた。

柔らかい文章、優しい雰囲気、淡い世界観。それなのにどうしてこんなに力強く響いてくるんだろう。説得力があるんだろう。涙がずるずる引っ張り出されました。これだから人と人っていとしくて綺麗なんだ。毎回、作品を読む度にそう思います。

歪でも不器用でもいいよ。あなたがいる世界で、空の下できょうも、生きてゆこう。

素敵な作品ありがとうございました。ぜひ御一読を。

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★★★★★
2016/07/04 12:57
君の幸せな歌を

8年経って変わったこと、たくさん。 変わらなかったこと、君の声と、この想い。 今日も明日もその先も 言いたいことを言い合って、君の声と笑い合いながら、そうやって僕ら、生きていこう。 「冬和の声が澄んでいるってこと、あのとき気づけて良かった」 繰り返された数年越しの言葉に、ひどく懐かしさを覚えてじわりときてしまいました。高校時代から紡がれてきたふたりの物語を、まるでずっと眺めていたかのような。重ねた時をゆっくり懐古するような。そんなあたたかい気持ちになります。 時が流れてもずっと好きで、ずっと信じていられて、ずっと帰りを待てる。そんなふたりの関係が可愛くて素敵で、まさにおしどりカップル。作り出される空気がやっぱりふわふわと優しくて癒されました。人を想うっていいな、と心動かされます。 素敵な物語をありがとうございました。そして冬和くん月歌ちゃんおめでとう。ぜひ、御一読を。

8年経って変わったこと、たくさん。
変わらなかったこと、君の声と、この想い。

今日も明日もその先も 言いたいことを言い合って、君の声と笑い合いながら、そうやって僕ら、生きていこう。

「冬和の声が澄んでいるってこと、あのとき気づけて良かった」

繰り返された数年越しの言葉に、ひどく懐かしさを覚えてじわりときてしまいました。高校時代から紡がれてきたふたりの物語を、まるでずっと眺めていたかのような。重ねた時をゆっくり懐古するような。そんなあたたかい気持ちになります。
時が流れてもずっと好きで、ずっと信じていられて、ずっと帰りを待てる。そんなふたりの関係が可愛くて素敵で、まさにおしどりカップル。作り出される空気がやっぱりふわふわと優しくて癒されました。人を想うっていいな、と心動かされます。

素敵な物語をありがとうございました。そして冬和くん月歌ちゃんおめでとう。ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2016/06/14 01:21
嘘もまことも、この涙も

静かで 深くて 暗くて 深海のような、夜。 互いに背を向け合っておやすみの時間。 目が覚めたって朝は来ない。 それでいい。あなたは一生、知らなくていいのだ。 * たった三頁の物語の中に切なさと憎らしさと、抑えきれない愛しさが凝縮されていました。泣き喚いて訴えているわけではないのに確実に胸の奥に浸透してくる叫び。この短い世界でこんなにもふたりの物語を深く紡げる由仁さんの文章がほんとうに好きです。後書きに書かれていた「ひとつの愛の終着」という言葉に何度も頷いてしまいました。 どうかいつか、ふたりがそれぞれの幸せを捕まえて朝を迎える日がきますように。胸に響く素敵なお話ありがとうございました。ぜひ、御一読を。

静かで 深くて 暗くて
深海のような、夜。

互いに背を向け合っておやすみの時間。
目が覚めたって朝は来ない。

それでいい。あなたは一生、知らなくていいのだ。


*
たった三頁の物語の中に切なさと憎らしさと、抑えきれない愛しさが凝縮されていました。泣き喚いて訴えているわけではないのに確実に胸の奥に浸透してくる叫び。この短い世界でこんなにもふたりの物語を深く紡げる由仁さんの文章がほんとうに好きです。後書きに書かれていた「ひとつの愛の終着」という言葉に何度も頷いてしまいました。
どうかいつか、ふたりがそれぞれの幸せを捕まえて朝を迎える日がきますように。胸に響く素敵なお話ありがとうございました。ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2016/05/19 23:10
中崎町アンサンブル

現代の格好に身を包んで 紺色の町を歩く彼 確かに現実はそこに在るのに、どこか御伽の世界へ迷い込んだような。日本の歴史を刻む町、それなのに時の流れと共に現実感はすっかり消えた。まばたきのうちにすべての物語が動いてしまったような。 異国情緒を感じさせる空気の色、それでいて懐かしくもの哀しい情景。ちぐはぐで美しい世界でした。 「ここはさながらポラーノの広場さ」 彼と彼女の理想郷でのひとときは、古い写真のように色褪せたりはしない。もう一度造ろうなんて、思ったりはしないけれど。 彼は目を閉じて思い出す。 一歩踏み入れれば浸かれるような、哀愁と共に自分の過去が蘇ってくるような。それでも、最後は彼女の言葉に救われる。素晴らしい世界観でした。素敵な作品をありがとうございました。 ぜひ、御一読を。

現代の格好に身を包んで 紺色の町を歩く彼

確かに現実はそこに在るのに、どこか御伽の世界へ迷い込んだような。日本の歴史を刻む町、それなのに時の流れと共に現実感はすっかり消えた。まばたきのうちにすべての物語が動いてしまったような。
異国情緒を感じさせる空気の色、それでいて懐かしくもの哀しい情景。ちぐはぐで美しい世界でした。

「ここはさながらポラーノの広場さ」

彼と彼女の理想郷でのひとときは、古い写真のように色褪せたりはしない。もう一度造ろうなんて、思ったりはしないけれど。

彼は目を閉じて思い出す。

一歩踏み入れれば浸かれるような、哀愁と共に自分の過去が蘇ってくるような。それでも、最後は彼女の言葉に救われる。素晴らしい世界観でした。素敵な作品をありがとうございました。
ぜひ、御一読を。

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2016/05/17 01:41
とある犯罪者たちの雑談

薄暗い 刑務所の中で 繰り広げられる なんてことない雑談の記録 青年の独白 歪んだ口元から紡がれてゆく すべては 大切な人への愛ため 「だってボクがここにいるのは名誉なことですからね!」 そう言った青年の瞳は ひどく澄んでいたことでしょう だって愛しているのだから だってすべて 彼女のため なのだから * 視点も景色も感情も読み取れず、隔離された空間にいるかのような錯覚を覚えます。群像劇のようなストーリー展開、いつまでも無邪気な青年、何も語らない主人公。すべての演出にぞくりと身震いしました。 何かに引き寄せられるようにページをめくる手が止まりません。 青年にとって最高のハッピーエンド。メリーバットエンド。 濁りのない、青年の愛の話です。 捕まってみてください。ぜひ御一読を。

薄暗い 刑務所の中で 繰り広げられる
なんてことない雑談の記録
青年の独白
歪んだ口元から紡がれてゆく
すべては 大切な人への愛ため

「だってボクがここにいるのは名誉なことですからね!」

そう言った青年の瞳は ひどく澄んでいたことでしょう
だって愛しているのだから
だってすべて 彼女のため なのだから

*

視点も景色も感情も読み取れず、隔離された空間にいるかのような錯覚を覚えます。群像劇のようなストーリー展開、いつまでも無邪気な青年、何も語らない主人公。すべての演出にぞくりと身震いしました。
何かに引き寄せられるようにページをめくる手が止まりません。
青年にとって最高のハッピーエンド。メリーバットエンド。
濁りのない、青年の愛の話です。

捕まってみてください。ぜひ御一読を。

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2016/01/10 22:52
ご主人さまの冷酷彼氏

しっぽ触られんのはうざいし、ご主人さまを悲しませたらネコパンチ百裂拳するし、困らせたらほっぺた引っ掻くし、 人間だったら、彼氏だったら、もっと大事にするのになあ。 * 斬新な黒猫目線。それなのに違和感なくふんわり心になじんで、感情移入すらしてしまいました。ネコ特有の表現とか行動とか、いちいち可愛いし面白い。これだからかなさんは!好き!と思いながらつい声を出して笑ってしまいました。数十分、最初から最後までこの世界の中。 生き物が生き物を好きになるって、こういうこと。幸せだったり辛かったり甘かったり苦かったり。やっぱどうしても好きだったり。1匹と1人のおかげであかねのいいところ可愛いところがたくさん見れました。だから「好き」に人間も動物も関係ないんだって。そう思いました。 最後にひとつだけ。登場生物、もれなくみんな激可愛いので注意です。 素敵なお話ありがとうございました!ぜひ御一読を。

しっぽ触られんのはうざいし、ご主人さまを悲しませたらネコパンチ百裂拳するし、困らせたらほっぺた引っ掻くし、
人間だったら、彼氏だったら、もっと大事にするのになあ。

*
斬新な黒猫目線。それなのに違和感なくふんわり心になじんで、感情移入すらしてしまいました。ネコ特有の表現とか行動とか、いちいち可愛いし面白い。これだからかなさんは!好き!と思いながらつい声を出して笑ってしまいました。数十分、最初から最後までこの世界の中。

生き物が生き物を好きになるって、こういうこと。幸せだったり辛かったり甘かったり苦かったり。やっぱどうしても好きだったり。1匹と1人のおかげであかねのいいところ可愛いところがたくさん見れました。だから「好き」に人間も動物も関係ないんだって。そう思いました。
最後にひとつだけ。登場生物、もれなくみんな激可愛いので注意です。

素敵なお話ありがとうございました!ぜひ御一読を。

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2016/01/09 02:19
オレンジジュースとアイスコーヒー

こんなに透明で澄んでいて、心に響くものだった。 ゆっくり積もっていく思い出に自信がないし申し訳ない。柔らかくて優しくてかっこいい君に気付いてしまったから、余計に自分が不甲斐ない。そんな気持ちを抱えてから今更好きになったなんて。こんなに好かれていることも知らなかったなんて。 隠し続けることもできた気持ちをはっきり伝えられるのが月歌の良さ。それを頷きながらじっくり聞いて優しく包み込めるのが冬和の良さ。言葉足らずなところはお互いが補い合って。伝えよう。 ──好きなのは、君だよ。 * すれ違い思い悩む姿、決心する姿、伝え合う姿。すべてが生き生きと描かれて本当に素敵です。彼の歌声のように作者さまの文章も澄んでいて心にストンと落ちてくる。同じ景色が見えてきて涙が出そうになる。作品のすべてに脱帽です。 素敵なお話ありがとうございました。ぜひ御一読を。

こんなに透明で澄んでいて、心に響くものだった。

ゆっくり積もっていく思い出に自信がないし申し訳ない。柔らかくて優しくてかっこいい君に気付いてしまったから、余計に自分が不甲斐ない。そんな気持ちを抱えてから今更好きになったなんて。こんなに好かれていることも知らなかったなんて。

隠し続けることもできた気持ちをはっきり伝えられるのが月歌の良さ。それを頷きながらじっくり聞いて優しく包み込めるのが冬和の良さ。言葉足らずなところはお互いが補い合って。伝えよう。

──好きなのは、君だよ。

*
すれ違い思い悩む姿、決心する姿、伝え合う姿。すべてが生き生きと描かれて本当に素敵です。彼の歌声のように作者さまの文章も澄んでいて心にストンと落ちてくる。同じ景色が見えてきて涙が出そうになる。作品のすべてに脱帽です。
素敵なお話ありがとうございました。ぜひ御一読を。

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★★★★★
2016/01/08 12:39
ネタバレ
本日ヒーロー不在につき

颯爽と現れる王子様もヒーローも、すべては夢物語。

息をひそめていた刺客にまるで気が付かないまま。愛されヒロインはぺろりと食べられてしまうのです。
無愛想で口が悪くてモラル皆無で、キレ気味に告白してきた悪役に。
4年間も片想いだなんて
「俺にしとけば?」
押し倒してそんな台詞を吐くなんて

いったいどこの当て馬さんですか。



これぞ胸きゅん…!近くて近くて気が付かない。運命かは分からないけれど、ずっと傍にいたのです。ずっと傍で彼は彼女を見ていたのです。
ふたりの距離感もやりとりも絶妙で、思わずニヤけながらため息。大好きです。理想の当て馬、理想のヒロイン。こんなふたりを待ってました!
とんでもない悪役に流されて食べられちゃってください。さあ早く。

素敵なお話ありがとうございました!ぜひ御一読を!

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★★★★★
2015/06/07 14:49
フラスコ小世界

空想とは言い切れない世界のお話。 この世で君だけがこの海と空と太陽の本当の姿を知っている。この地面の意味も知っている。生きる意味も気付いてる。 君の目にしか映らないフラスコ小世界。 僕の目には儚く見上げる君しか映らないけれど。 世界の外の彼らの視線は分かるのに、君は、すぐ隣の僕の視線には気付かない。 待っているよ。 いつか世界が終わるまでに、君の瞳を奪える日を。 * 小説のための想像上の世界だ、と、言い切ることができない世界の姿に、はっと気付かされました。確かな世界などなくていつでも私たちは宙ぶらりんに生きている。 外を見つめる少女と隣を見続ける少年の、アンニュイで別世界のようなある日の話。 素敵なお話ありがとうございました。 ぜひ御一読を。

空想とは言い切れない世界のお話。


この世で君だけがこの海と空と太陽の本当の姿を知っている。この地面の意味も知っている。生きる意味も気付いてる。
君の目にしか映らないフラスコ小世界。
僕の目には儚く見上げる君しか映らないけれど。

世界の外の彼らの視線は分かるのに、君は、すぐ隣の僕の視線には気付かない。
待っているよ。
いつか世界が終わるまでに、君の瞳を奪える日を。


*

小説のための想像上の世界だ、と、言い切ることができない世界の姿に、はっと気付かされました。確かな世界などなくていつでも私たちは宙ぶらりんに生きている。
外を見つめる少女と隣を見続ける少年の、アンニュイで別世界のようなある日の話。
素敵なお話ありがとうございました。
ぜひ御一読を。

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★★★★★
2015/06/07 13:43
ブルースプリングの心臓

────好きな香りの3秒間 目を開くと、世界が変わった 春。決断の季節。変わりゆく季節。 これは、そんな青春の儚い一頁が見事に切り取られた作品。確かなあたたかい空気と、いつも隣にいた彼と、未来を始める人生の一瞬が、やさしく描かれているお話。 希望と不安と思春期と。 それぞれを抱えてはじまりに駆け出していくふたりの姿。胸をきゅーんとつかまれました。読破後は、じーんです。 いつか終わりがくるなんて、怖がっていても始まらない。おなじ未来に、これを機に、歩みだしてみようじゃないか。 かわいい高校生の青春ワンシーン。 素敵なお話ありがとうございました! ぜひ御一読を。

────好きな香りの3秒間
目を開くと、世界が変わった


春。決断の季節。変わりゆく季節。
これは、そんな青春の儚い一頁が見事に切り取られた作品。確かなあたたかい空気と、いつも隣にいた彼と、未来を始める人生の一瞬が、やさしく描かれているお話。

希望と不安と思春期と。
それぞれを抱えてはじまりに駆け出していくふたりの姿。胸をきゅーんとつかまれました。読破後は、じーんです。


いつか終わりがくるなんて、怖がっていても始まらない。おなじ未来に、これを機に、歩みだしてみようじゃないか。
かわいい高校生の青春ワンシーン。
素敵なお話ありがとうございました!

ぜひ御一読を。

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★★★★★
2014/07/25 17:53
ネタバレ
俺を嘘つきにしないでよ

これは必然、運命ってヤツ。
俺、知ってンだ。秘密の話。

今日これからの出来事も
君の笑い皺だらけの顔も
俺が君に抱くこの気持ち
それから

最期に見る君の笑顔、だって。


──さぁ、涙を拭いて


*

ヘラヘラ語る主人公の彼。全然真剣じゃないのに、最後の言葉からは彼の本当の想いが伝わってきました。
強い、けれど儚い、きっと永遠の真実。笑ってお別れ。愛が散りばめられていました。
ジンと胸に響く御話です。

ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2014/07/13 21:54
ネタバレ
カレイドスコープの季節

何度も 繰り返し覗く世界は鮮やかで、やきついて離れてくれなかった。

あの日のことをどんなに深いところまでも覚えているのに、青と白のコントラストは君の小麦色の肌を照らしキラキラと眩しい光が僕らを取り巻いているのに、今色のない瞳にうつるのは灰色グラデーションの情景と夢に観るモノクロの幻想だけ。

鮮やかな万華鏡の中で甘やかに笑っているあまりにも簡単に願いを叶えてしまった君は、僕にまだ終わらない物語を見せる。
無防備で無垢で明日を疑わなかったあの頃の思い出を、瞬くたび違う色で観せながら
僕に息をさせ続けるんだ。

*

一頁の文章で魅せられました。浮かび上がる情景があまりにも現実的で、夢を見ているようでした。
色のない世界でも万華鏡を覗き続ける限り彼はこの世で息をし続けるんだろうなと思います。彼女に生かされ続けるんだろうな、と。
素敵な御話ありがとうございました。

ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2014/07/13 21:20
ネタバレ
夕暮浪漫

液晶越しのニュースをひっくるめても平和な僕たちの世界に
平々凡々な、僕の、ちいさな世界に
色を落としたのは、顔も知らない女の子だった。

空を染めるグラデーション
赤く染まった後ろ背中

展望台から彼女は まっすぐに世界を見つめていた
何かが確かに、僕を動かしたんだ

無気力 無関心 無頓着
僕の世界は今 変わる。


*

この時期特有な心の揺れや哀愁が、空の描写を通して真っ直ぐに伝わってきました。
一枚の絵のように夕暮れの赤の情景が観えてくるような。感傷的で盲目的で、胸がじんわりあたたかくなる爽やかな御話でした。

ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2014/04/06 14:56
ネタバレ
春告鳥とクマとねこ

──ウグイスって、別名『春告鳥』っていうんだよ。


ほわり、ほわり と 言葉を紡ぐ クマさんとねこのもとにも やさしい風に乗って、運んでくるのです

春を告げる、その鳥は

*


まさに春のようにぽかぽかあたたかい文章と、ふたりのゆったりした会話にとても癒されました。春のにおいと陽気を感じさせる作品の雰囲気がすごく好きです。

なんだ犬飼くん、ミケちゃんに惚れてるんじゃん。と、思わずにやにやしてしまいました。ミケちゃんのペースにのまれてスローテンポな会話を交わすふたりが微笑ましいです。
ずっと見ていたくなる、可愛いふたりでした。
素敵な作品、ありがとうございました。

ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2014/04/06 14:26
ネタバレ
嘘つきラブレター

君がいない教室も 君がいない授業も 君がいない学園祭も
当たり前のように隣にいた君が、うそみたいにいなくなる毎日なんて
ねえ 不安なことばかりだよ

新しい明日の足音に君も 寂しいと思ってくれてればいいのに。


4月1日で意味付けした
ズルい告白で伝えるよ。

*


愛おしく思い出してしまうのは、口を開くと出てきてしまうのは、終わってしまった日々のこと。君がいない明日からのことなんて考えたくない。
この時期ならではの不安定な心情が、不安定な主人公の言葉で綴られていて、頷きながら読んでしまいました。小春ちゃん、よかったね。

切なさ、そして希望。
春にぴったりの一作です。
素敵な作品ありがとうございました!

ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2014/04/03 18:21
ネタバレ
AM 0:00

画用紙を舞う絵の具と空中を漂う音符だけが、曖昧なふたりの1日を知っているのだろう


──面倒くさがりな二人は、その関係に名前を与えることすら面倒なのだけど。


創造の世界はひとりきりだ。
他人の助けも誰からの理解も許されない。今日が世界の終末だとしても変わらない。創造者はひとり。
この世界は孤独なのだ。

だけどひとつだけ、この世界に許可なく入り込んで、色づけることのできる存在があるとしたならば、それは、


濃いめのコーヒー、絵の具のにおいと弾き慣れたギター、変わらない日常に
トナカイのケーキととっておきの唄で普段と違う意味を添えて。


*

独特なリズムの会話、巧みな文章、洗練された世界観、すべてで造り上げられた、ひとつのホワイトクリスマスのお話。
二人の距離感と言葉選び、そして作者さまの創られる世界観がたまらなく好きです。
素敵な作品ありがとうございました!

ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2014/03/30 15:46
ネタバレ
もう陥落寸前

秀才で変人な彼の頭の中は、凡人な私には分からない。

「覚悟していてください」

だけど颯爽と現れる姿も、デートだか餌付けだか分からないお誘いも、信じられない爆弾発言、も。

私が机に突っ伏すことになるには、十分すぎる材料なのである。


(陥落は、時間の問題。)


*

道晴くんの自由すぎる素直さ、紀子ちゃんの楽しげな悪ノリ、そして瑞穂ちゃんの困惑具合。すべていい味出しててかわいかったです。人生なにがきっかけになるか分かりませんね。
クスリと笑えて応援したくなる、新しい恋愛話。
続きが気になるふたりでした!

ぜひ御一読を。

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★★★★★
2013/12/31 01:56
ネタバレ
読めない本と透明な虫

泣いて泣いて泣きはらして。
愛しく美しい透明の先には。


「──"愛しい人を想って流す涙は、何よりも辛く て何よりも愛しい。"」


綺麗な綺麗な、現実とはかけ離れた恋愛小説に頬を濡らしたり。偶然と偶然が重なりあい、とんでもない奇跡が形成されたり。

青春にはつきものの失恋。よくある日常の1ページ。しかしそれがこの作品では、とても鮮やかに、そしてセピア色に滲んで見えました。
切り取られた非日常のように。


*


非常に高い文章力と、思わずぞくっとしてしまうような演出、どこか別世界のような日常的世界観。
実感してみてください。

忘れられない作品をありがとうございました。

ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2013/10/15 17:22
ネタバレ
宇宙旅行へ行きませんか

───よろこんで。


なんと素敵な 逃避行

妖精な貴方
禁忌の恋愛
白馬も爽快

大気圏突破のリスクだなんてそんなもの、二人でいれば 無敵でしょう?


柵をこわしてあの宙へ
その手をとれば一瞬で


 *

星屑が散りばめられた教室、無重力に宙に舞う白紙 椅子 机
目に浮かぶ素敵な二人の世界でした

心地よい無重力空間に誘い込まれたような
いつしか魅力にとりつかれ、そんな世界から帰れなくなるような
素敵な三頁でした

ぜひ、御一読を。

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★★★★★
2013/07/03 23:14
スエヒロガリの世界

とてもせまい四角い空間で、わたしたちは酸素をとりあうように生きていて、ウソつきを強いられて、大きらいになるくらい、また、形を歪めては息をはいて 息苦しい世界からはなれて 思いきり息をすいたかった きらいなことばかりだった だけど、「きっと」の明日に希望をもって、少しだけ世界と向き合ってみたら ひとりぼっちなんかじゃなくて、ばかなほどいとしいだなんて思えてしまって、カラカラの喉でまた笑えて、広がって これなら、海みたいにしょっぱい涙も、悪いものじゃないね わたしは、わたしで *   まるで過去を掘り起こされるような、それこそ、いつかの深海にしずめられたような。 驚くほどありふれた、豊かで、繊細で、リアルな、中学生の日常の話。 素敵な作品ありがとうございました。 世界観にとりつかれること間違いなし。 ぜひ、御一読を。

とてもせまい四角い空間で、わたしたちは酸素をとりあうように生きていて、ウソつきを強いられて、大きらいになるくらい、また、形を歪めては息をはいて

息苦しい世界からはなれて
思いきり息をすいたかった
きらいなことばかりだった


だけど、「きっと」の明日に希望をもって、少しだけ世界と向き合ってみたら
ひとりぼっちなんかじゃなくて、ばかなほどいとしいだなんて思えてしまって、カラカラの喉でまた笑えて、広がって

これなら、海みたいにしょっぱい涙も、悪いものじゃないね

わたしは、わたしで



*
 

まるで過去を掘り起こされるような、それこそ、いつかの深海にしずめられたような。
驚くほどありふれた、豊かで、繊細で、リアルな、中学生の日常の話。

素敵な作品ありがとうございました。


世界観にとりつかれること間違いなし。
ぜひ、御一読を。

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