聖凪砂さんのレビュー一覧
出会いは最悪。だから、恋になるはずなんてない。
始まり当初の展開からは、どこからどう見ても恋愛に発展するなんてことはないように思えました。
仕事上での徹底ぶり、ミスをした時の冷淡な対応。
私語さえもほとんどないという関係に、どこをどうなったらそう動くのだろうと思いながら、読んでいました。
だけど、その前半のギャップがあったからか、中盤から後半へと向けての流れは甘い展開へ読みながらドキドキハラハラとさせられました。前半の二人から急展開に見えるようでいて、そうではない。違和感もなく、スッと読めてすごく好きな作品でした。歯科医院での仕事でのやり取りも本格的で、読み応えもすごくありました。
一つだけ気になるのは、同期という女性医師。彼女の言葉がただの同期としてだけではない発言に私には思え、この人の存在が結局どうなのかと気になりました。
自分を育ててくれた祖父の余命宣告。
それは、自分が一人になってしまうかもしれないという孤独と共に、祖父の願いを叶えることもできない自分の不甲斐なさ。
誰にでも迫る身内の死ということを通して紡がれるストーリー。
根底にあるのは祖父への願い。だけど、それはきっかけでしかなく、その先に続いていく二人の想いはいじらしく、また彼の主人公への深い愛にドキドキさせられました。
ラブストーリーなのに、それだけではない深い温かいストーリーでした。
彼氏だと思っていた男性。その男性の突然の婚約宣言。
もしかして――…なんて思っていたのに、告げられたのは別の女性の名前。
その真実と、彼の思わせぶりな態度には読んでいて腹が立ちました。そして、恐らく悪気も全くない。それが余計にタチが悪いと思います。
そんな時に、なんとなく話を聞いてもらった上司。彼の優しさに温かい気持ちになりながらも、彼を好きになってはいけない理由ができてしまい――…
好きになってはいけないとわかっていながらも、それでも彼の優しさに触れるたびにどんどんと惹かれてしまう心。そんな心を否定しながらも、自分の中では気づいている気持ち。
複雑な心情が丁寧に描かれていて、とても切なかったです。
テレビで見ていてよく知っている存在。でも、アナウンサーという職業をそこまで知ってはいません。
だからか、現在のお話なのに、ちょっと知らない世界のお話を読んでいる気分になり、少し不思議な気分になりました。
現在のストーリーなのに、夢物語を読んでいるような…、だけど、実際はそうじゃない。話の中で起こることは現実に起き得そうなことが多く、アナウンサーの仕事の中のこともぼやかすわけでもなく、きちんと書かれていてすごく話に入り込めました。
読み応え満点の素敵な作品です。
憧れの人とあることがきっかけで親しくなっていく。だけど―――…
―――という、王道ラブストーリー。勘違いなどいろいろとありながらも、だけど、なぜか近づく二人の距離。
王道だけど、素敵なラブストーリーにすごく引きこまれました。
また、彼サイドのお話が、私的にはかなりツボに入っていて、すごくよかったです。
主人公サイドでの彼と、彼サイドでの彼とのギャップが面白くて、何度でも読み返したいと思える作品でした。
結婚は没落した家を救うため。 だから、結婚に期待はしていなかった。それが、まさかの想いを寄せられ――― 諦めていたからこそ、うれしいはずだけど、戸惑いのほうが大きい主人公の気持ちがよく表れていました。 短編ということもあったせいか、少し物足りなかった気がしました。
結婚は没落した家を救うため。
だから、結婚に期待はしていなかった。それが、まさかの想いを寄せられ―――
諦めていたからこそ、うれしいはずだけど、戸惑いのほうが大きい主人公の気持ちがよく表れていました。
短編ということもあったせいか、少し物足りなかった気がしました。
題名から感じたのは、主人公がハイステータスな男性と恋に落ちるということで、私の想像では彼は実際にはいないような感じなのかな?と思っていました。だけど、作品を読んでいるうちに、彼も人間らしい面がたくさんあり、ハイステータスな男性ではあるのですが、考えることも何もかも一般の男の人と何も変わらず、何より、主人公への想いも彼女からの一方的な想いではなく、彼の溺愛もあり、予想とは違うものの、すごくいい意味で予想とは違っていました。
読んで大満足の甘く、素敵なラブストーリーでした。
真っ直ぐに生きている主人公。だけど、そこに恋というものは存在していない。
恋をするよりもお金に価値を重く置く彼女は、比較的冷めている印象を受けました。だけど、そんな彼女の前に現れた男。
やたらと強引に愛を囁く彼に、彼女はうさん臭さ満載と同時に、なぜか乱されていき――…
それほど長くないページ数だったので、さらっと読み切れる作品と思っていたのですが、さすが作者さんです。
この短いページ数の中に、実は…ということも隠されており、短くても大満足のいく作品でした。
ただのストーリーではなく、少しロマンチックな展開もあり、乙女心をくすぐられました。
政略結婚というテーマが扱われることは多々あるものの、そこに至る人物の生い立ちが含まれるところまで描かれている作品はそれほど多くありません。そんな中、この作品では、政略結婚がテーマでありながら、そこにある人間性、また、その背景、いい面もあれば悪い面もあるというところがきちんと書かれており、とても読みごたえがありました。
はじめ、一途な主人公に対して、冷たいまでの彼に、ひどいな…と思っていたのですが、その理由や、彼は彼なりに考えての行動の数々に、とても深い作品だと感じました。
過去の栄光。
だけど、それは自分の才能を利用された。その結果、その才能を封じ込め、日陰の存在に身を投じていた主人公。
才能に惹かれ、目をかける副社長。
そんな副社長に見出されながらも、過去に囚われ、前に進めない主人公。
さりげなく手をさしのべる副社長の優しさだけではない、厳しさ。だけど、大事なところでは守ってくれる包容力。
短い中でのストーリーで、とても引きつけられる作品でした。
自分がどれだけドジなのかわかっている主人公。
そんな主人公は、自分がドジな分、周りにどれだけの迷惑をかけることも、うっとうしがられることも過去の経験から自覚中。そんな彼女は、ただ失敗をしないように意識しながら、頑張り中なわけだけど―――…
ドジな主人公のマイナスのイメージを逆手に取った作品で、読んでいて面白かったです。今まで、ドジっこの女の子の作品は多く読んできましたが、読んでいてとてもすがすがしく、また、周りのキャラもよく、副社長の彼のマイナスのイメージと彼女のマイナスのイメージが掛け合わされたことで、プラスに変換されるところが、読んでいて面白かったです。
さすが、作者さんの力量とも言え、文章もスッと入りこみ、読みやすかったです。
イベント会社に勤務の主人公は、イベント会社に勤めながらも、実はそういった派手なことが苦手。
イベント会社なだけに、やたらとイベントが多いこの会社で、ハロウィンイベントの仮装で出席した彼女は、偶然見ず知らずの人と出会う。
表に自分をさらけ出すことが苦手な主人公。仮装した自分だからこそ、いつもならできない男性との会話も受け入れた彼女。たったその日の出来事と思っていたのだけど、そこから発展するストーリー。
相手も仮装しているからこそ、どこの誰かもわからない。日常の生活と恋への発展。そして、その日出会った人は誰であったのかという、ちょっとした人探しのようなものも含まれていて、とても面白かったです。
人は恐らく恋をすると、これは運命だと思いながら恋をする人が多いのではないかと思います。
そんな女性の恋する気持ちの変化。運命だと思っていたからこそ、それが自分でも納得できないほどの理由だった時、そのショックさは図り切れないのだと思います。
たった一度の恋。でも、それを運命的な恋だと思っていたからこそ、すべての恋に慎重になり、自分の気持ちにセーブをかける。
臆病な心に、優しく入り込んでくる彼。
さりげない優しさに惹かれながらも、それでも信じきれない心。
恋に臆病になってしまった主人公が、惹かれながらも必死に否定しながらも、ゆっくりと進んでいくラブストーリーです。
彼氏がいる。その彼氏からのお願いは、まさかの赤の他人の、それも異性との同居生活。
それは、付き合っている彼氏からのお願いとしては、不可思議なもの。主人公が彼の自分への気持ちを疑う気持ちもよくわかりました。
そんな中、一緒に同居することとなったのは、会社社長の男性。彼女に彼氏がいることを知りながらも、彼は彼女への気持ちをあらわにしてきて―――…
『好きだ』という気持ちを伝えながらも、強引に押し切るわけではなく、引くところは引き、相手を包み込むような優しさと想いを伝えてくる。
その深い優しさと想いがとてもよく伝わってくる作品でした。
また、サンプリングマリッジというありえないイベントを使った題材が、すごく面白かったです。
幽閉されていた過去を持つ男。そんな彼は、偶然助けられる。
新しく生まれ変わり、騎士という役職を得た彼。
真っ直ぐな心根を持つ王女に次第に惹かれ、また、王女も彼に惹かれていく。
捨てたはずの過去。その過去が自分に近づき、そして王女との関係の柵ともなる。そんな過去の柵を一人ではなく二人で立ち向かう姿がとても面白かったです。
本当は深い想いを持っているのに、それが相手に伝わらない。
一見、いい加減な印象を受ける社長だけど、本当の姿は全く違い―――
対称的な二人の社長。前半部分では、つかみどころのないミステリアスな社長とどこまでも優しい懐の深い社長。
そんな対称的な二人に想いを寄せられながらも、次第にストーリーはどんどんと思いもよらない展開へと。ストーリーを読み進めていくうちに、対称的な二人の社長の想いの深さの違いが浮き彫りになっていきます。
伝わりにくい、不器用な想い。だけど、一途な想いに、読んでいてもどかしい気持ちになりました。
一途に甘い溺愛のストーリーでした。
偶然の再会は、そこから溺愛に発展し、だけど、今の自分の環境がそう簡単には許すこともできず…
ストーリーはすらっと進む感じで、話の流れや題材がすごくいいので、もっと長編として読みたかったかも…とも思ったりもしました。
中編だから、少し駆け足気味なところもあったので、そこが個人的には勿体なかった気がします。キャラも好きなので、この続きなども読めたらな…と思います。
幼馴染の暴君。そんな彼から逃れていた主人公。自分の仕事に生きがいも持ち、前向きに生活をしていた彼女だけど、ある日、そんな暴君と再会してしまう。
強引で俺様な彼に、振り回される主人公。読んでいると、そう見えるのに、実は蓋を開けてしまえば、振り回されていたのは彼のほうで。
横暴な態度ながらも、実はその裏では一途な想いを持ち続けていた彼。
行動と想いの深さのアンバランスさが読んでいてとても面白かったです。
長すぎる付き合い。付き合い当初は、付き合う先への未来を想像したり、これからの甘い付き合いのことを見据えたりして、楽しかったかもしれない。だけど、いざそれを通り越した先に、延々と続くこのままの付き合いを考えると――…
そんな不安の中での、ある引き金。それが、二人の今の関係から一つの問題を投げかける。
波乱万丈な展開が待っているわけではない。でも、だからこそ誰にでも起こり得そうなリアルな展開。
リアルすぎるからこそ、二人はどのような結論を出すのだろうと、ドキドキしました。
自分の経験値を上げるために、女性と軽い付き合いをしているというモテ男に声をかける主人公。
それは、自分の中での決意と望みのためのことだった。だから、何も望んでなどいなかったはずだった。そんな想いはすぐさま崩れ去る。
女性と軽い付き合いをしているのに、実は誠実だったり、優しかったりと、知れば知るほど惹かれていく。そんな心の変化に必死に蓋をしようと、自分で自分に言い聞かせるところは、切なく、読んでいるこっちからももしかしたら…なんて思わせる展開も、否定したりと、不器用な恋模様が切なかったです。
また、高雅も、女性と軽い付き合いをしているはずなのに、中身はとても誠実で純粋なところが読んでいてキュンとさせられました。