聖凪砂さんのレビュー一覧
昔の彼を知っているから――…。昔の自分を知られているから――…
高校の時の同級生であった二人。そんな二人は、ある日、再会する。それは、昔の彼を知っている寿にとっては、同一人物とは思えないほどの変貌ぶりで――…
過去の都築と一致しない部分に戸惑ったり、かと思えば、ふと見える過去の彼と重なる部分。そのことに苦手だったはずなのにホッとしたりと自分でもよくわからない感情。近づきそうで近づかない二人の距離。そして、都築自身が抱える重いもの。
ただの恋愛というだけではなく、その背景にある問題も巻き込んだ、とても高度なラブストーリーでした。すごく素敵で、そして、読み応えのすごくある作品でした。
こんな状況にはきっとなる人はほとんどない。だからこそ、その悲惨さもわかる。
すごく最悪な状況に落とされて、残されてしまった主人公。そんな主人公に、さりげなく救いの手を伸ばす課長。だけど、そこにはただ優しいだけではなく、仕事面の厳しさもあり――…
隠されていた課長の切ない想いが最後に明かされ、それと同時に、課長の優しさや誠実さがあるからこそ、元婚約者の軽さというか…、なんというか薄さが際立って見えました。
最後までハラハラの展開でしたが、切ないながらも楽しく読ませていただきました。
ミスパーフェクトというぐらいだから、しょっぱなからの主人公を見て、クールな女性だと思いました。ただ、実はーー…というのも想像していました。だけど、まさかこれほど予想を裏切られるほどのパワフル感満載だとは。
切なく、不器用なラブストーリーのはずなのに、なぜか笑える場面がところどころあり、それはとても読みやすく、面白かったです。
終始楽しく読める作品でした。
はじめは、少しでも自分と触れ合える関係になれたら…
たった一つだけの願いで、それは、相手には好きな人がいることがわかっているから。だから、大丈夫だと思っていても、人の心はそれほど単純ではなくて、どんどんと貪欲になっていく。
一番になりたくて…、でも、二番目でも自分は幸せだと言い聞かせて。でも、ふとした瞬間に彼の一挙手一投足に傷つき、自分の想いだけではなく、相手の気持ちも考えて自分の想いを抑えようとする、その葛藤がとても切なかったです。
一途に想い続けるのも苦しくて、そして、関係を変えても苦しくて――…
すごく切ないラブストーリーでした。
恋に不器用なその癖を『スキサケ』という症候群にしてしまうとは、とても面白いお話でした。ちょっと主人公の症状が激しかったですが、この症候群は恋を始めたばかりの戸惑いで起こる人も結構いるのでは?
それを大人になってからも引きづっている主人公。そんな彼女に治療と称して近づく課長。ただのお互いの距離が近づくというだけのストーリーじゃなく、『スキサケ』を通して自分の弱さや相手に対しての自分の行動の先にも触れた深い作品でした。
読み終えた後は、これぞオフィスラブだと思えるほどにリアリティがあり、よく練りこまれた作品でした。
恋愛重視でありながらも、きちんとオフィスでの仕事内容も書かれており、すごく読みごたえがありました。あとがきで作者さんがこの仕事をされていたということもあるかもしれませんが、デザイナーの仕事がどういうものかを知ることができ、自分が思っていたデザイナーの仕事とは全く違う視点を持つことができました。それも、とても新鮮に映り、ラブストーリーのはずが、仕事面での話にも読みごたえがあり、ストーリーにぐっと引きこまれました。
また、最後にわかった不破の想いに、すごくドキドキさせられました。
短編の中で、これだけの切なさと心情の流れを丁寧に書かれた作品はとても素晴らしいと思いました。シンプルな流れのように見えて、きちんと起承転結があり、ストーリーにも一貫性がありました。また、甘い展開だけではなく、会社内での二人の仕事の位置関係など、一線を引いての関係にとても大人だなと思いました。
こうしたストーリーの表現から、とても綺麗で大人っぽい作品のように思えました。
とても素敵な作品で、私は大好きです。
ホテルの社長という肩書に、ただの一般人というカテゴリーだと話は見えてくる。だけど、このストーリーはそれだけではなく、その先のお互いの人間性が浮き彫りになっていて、本当の意味での想いというのが伝わってきました。
背景もキャラ設定もとてもきちんとされているからこその作品だと思います。
とても素敵な作品で、それでなお、とても深い作品だと思いました。人は地位や肩書だけじゃない。本当の人間らしさの中の強さがどんなものかを教えられる作品でした。
曖昧な関係、心情。だけど、そこから繋がるのは幸せの意味を投げかける本当は溺愛の社長。
恋に破れ、それを救ってくれた社長。銀河鉄道を通して語りかけられる『幸い』を軸に展開していくストーリーはとても純粋で、しっとりとしていて大人の雰囲気満載の素晴らしい作品でした。
身近で、そしてすごくリアルなストーリーでした。
だからこそ、ストーリーにすごく入り込んでしまい、この先どうなるのだろうとハラハラの連続。
長い友達関係だからこそ、踏み切れない気持ち。気づかないように蓋をしてしまう気持ちも、ただ文章として書かれているわけではなく、その気持ちの内面が丁寧に描かれていて、感情移入してしまいました。
二人の過去の想いも描かれていて、それがより一層ストーリー上の二人の想いに深みを与えて、読めば読むほど味がでる素敵な作品でした。
別に興味がなかったというのなら、どこにでもあるストーリー。だけど、顔は好みで好き。そうなるとどんどんと惹かれていく…という展開になるのだけど、このストーリーはそういう展開にはなりません。それが意外で、それでいて読んでいて面白かったです。
観賞用は観賞用としての線引きがしっかりとされていて、だからこそ社長のほうがなぜか明確な感情を意識していない状態でもやけになっている様子が読んでいてすごく面白かったです。ただ、社内の問題についてのことが、少しサラッと書かれているのがちょっと残念。もう少し、詳しく書かれていたら…というのが個人的な意見です。ちょっと読んでいて、最後どうなったのか気になったもので。
でも、とても楽しく最後まで読めました。
幸せな家庭環境から一転し、そんな中、自分の力で前向きに頑張ってきた主人公。そんな主人公は、ある日常務と遭遇してしまう。それから始まるのは、彼女にとっても、そして彼にとっても予想外の展開で――…
初めから地位の差がある二人。過去、自分が少しでもその立場にあったからこそ、その差をもろに感じ取ってしまっているのではないかと思いました。
常に前向きに突き進み、自分で自問自答しながらも、正直に真っ直ぐに突き進んでいく主人公がとてもかわいらしかったです。そして、そんな彼女に惹かれていく気持ちに戸惑っている彼の姿もギャップがあり、すごく楽しかったです。
設定は面白いし、いろいろな陰謀などもあり、きっとこれをもっと長編にし、深く掘り下げて書いたらもっと素敵な作品ができたのではないと思いました。
ところどころにまかれた伏線が、少し回収不良なところがあったので、そこが勿体なかったです。
ストーリーは読みやすく、主人公の心の機微が丁寧に描かれていてよかったです。
異世界へのタイムスリップ?恋。狙われる。
ファンタジーの王道をこれでもかと詰め込まれた作品です。個人的にはすごく好きな設定で、読んでいてとても楽しかったです。
ただ、物の怪の正体が意外に早くからわかってしまったのが、少し残念。物の怪の正体をもう少し引き延ばせていたら、ちょっとミステリー的な要素も含まれてストーリーに深みが持てたのではないと思いました。
始まりは政略結婚。愛のない、利害関係だけの関係。
だけど、始まりはそうでも、そこから少しずつ距離と縮め関係を作っていく過程が、とても丁寧に描かれていました。
政略結婚から…という設定はとてもたくさんある設定なのだけど、主人公が前向きに真っ直ぐな性格なのと、仕事を通しての恋の駆け引きに事件にとすごく読み応えのある作品でした。
おそらく現実には起こりうることを難しいながらもストーリーの中に入れた作品。現実にはあることなのだけど、それをこういったラブストーリーに入れてあることで、より一層のリアル感が出て、尚且つとても大人のラブストーリーに感じました。
主軸にいる人物たちが、年齢的にも完全な大人なのでしっとりとした展開が続くのと同時に、その背景にあるものが複雑だったりと、いろいろなしがらみにとらえられ、身動きできない感じ。
それが読んでいてもどかしかったです。
一見、ストーリーはふんわりしている純愛と思うものの、彼の性格がかなりひねくれているために、偏愛ともとれます。
私には少しひねくれすぎているために、彼の性格の良さがあまりわからなくてストーリーに入り込むことがなかなかできなかったのが残念。この作者さんが書かれる文章表現はとても上手なだけに、だからこそ、そのひねくれ部分がわかりやすかったと同時に、個人的には受け入れがたかったです。
もう少し、個人的な願望としては彼の優しさが見える場面が欲しかったな…と。
不器用な彼ですが、その不器用さもかなり極められている感じが見受けられました。だからこそ、主人公の一途さも際立っていました。
もう少し、彼の優しさが見えたらよかったな…と、思いました。
さすがのストーリーでした。
この筆者の文章の組み立て方はすごく綺麗だし、キャラクターもすごく魅力的です。特別、これといった個性的なキャラというわけではないのに、ストーリーの中で見せる言動がすごく大人でかっこいい。
主人公も、そんな彼を一途に想い、悩みながらも、そんな彼女に見せる優しさや行動と彼女の想いの中で、どんどんと彼の魅力が引き出されていきます。
少しこじらせ気味の恋愛模様。さりげない想いが、ストーリーの中に見え隠れしていて、それがすごくよかったです。
とても素敵な作品でした。
一応の決着はついてしまった恋。だけど、それにすがるようにもう一度チャレンジするつもりでいたものの、一度決着をつけてしまった想いを相手に押し付けるには躊躇される。そんな心情の奥深くを丁寧に書かれている作品でした。
すごく読んでいて納得もできるし、勢いからの宣言をしながらも、その裏での不安な気持ちは、まさに好きだからこそ悩むことであって、すごく納得しました。そして、だからこそ、そんな主人公の不安な気持ちに追い打ちをかけるような先生に、ちょっと意地悪だと思いました。
師だからこそ、そう簡単には答えを出せない先生の葛藤もわかるのですが、もう少し恋に前向きでいてほしかったな…と。
1人の自分の時間が大好きな人はたくさんいると思う。だけど、それをうまい具合に調整して、みんな恋愛をしているのだと思う。だけど、それをうまくできない二人は、不器用とともに、真面目すぎるのではないかと――。
だから、考えすぎたり、いろいろなことに落ち込んだり、人の言動に振り回されたり。
そんな彼女に、自分も不器用ながらに主人公に手を差し伸べる課長のクールだけどさりげない優しさと強さがとても魅力的でした。そんな彼にだから、今までの自分を覆すほどに気持ちを持っていかれたのではないかと。素敵な二人のだけど不器用さが見えるラブストーリーでした。